ビッグスワンでの新潟戦は0-3で完敗。
ビッグスワンになると途端に勝てませんね。等々力では新潟相手に良い内容のサッカーが出来るのに、ビッグスワンだとなぜか防戦一方になってしまう。
漫画「聖闘士星矢」の冥王ハーデス編で、ハーデス城の結界により、黄金聖闘士のムウ、アイオリア、ミロの3人が実力の10分の1も出せないまま、ラダマンティスに倒されるという場面があるんですけど、ビッグスワンでのフロンターレの選手のプレーを見ていると、なんだかそんな感じです。
そんな冗談はさておき。
この試合、フロンターレは二つの大きなプレッシャーと戦っていました。
一つはアルビレックス新潟がかけてくるプレッシャー。
2トップと中盤の4人が連動し、ボールホルダーを挟み込む形で距離を詰めていくプレッシャーの圧力は、想定通りとはいえ、やはりやっかいでした。ボールハントの中心にいるレオ・シルバの存在もそうですが、新潟のプレスは、例えばサイドの球際のところで最後にしっかり足を出してくるんですよね。これでタッチラインを割ったり、ワンテンポの遅れを生んだり、と思うようにかいくぐれませんでした。
これ以外にも新潟の守備意識の高さは際立っていました。
目を引いたのが後半、右サイドでの攻撃の際、相手の守備を引きつけようとしてジェシが自陣からオーバーラップしていった場面です。この動きに対して、相手のFWであるラファエル・シルバが猛然と攻め上がるジェシを追いかけて自陣深くまでマークについていったんですよね。人に付き切ることで、簡単には相手に数的優位を作らせないということ、なによりブラジル人のFWがあそこまで守備をしに帰るのか、とその守備意識の高さに舌を巻いたもんです。
もちろん、新潟のプレッシャーに屈したことを相手の問題で済ませてはいけません。自分たちの問題として、目を向けることのほうが大事だからです。
例えば、この日のダブルボランチ。チームのリズムを奏でるボランチの組み合わせは、アジア大会帰りの大島選手と、本職であるボランチのポジションで少しずつ存在感を見せてきた谷口選手になりました。ただ良くなかったです。今週に組んだばかりのダブルボランチに「完璧」を求めるのは酷なのですが、チームは優勝争いをしているのですから、それでも、やってもらわないと困ります。
気になったのは、お互いの役割分担が少し曖昧だったように見えたことです。例えば相棒がパウリーニョのときの谷口選手は、攻撃に積極性を出す意識が高いです。ただ大島選手と組んだときは、その役割を任せていて、谷口選手が少し全体のバランスを取る役割に徹していた印象です。これはこれで機能すれば良いのですが、この試合ではタクトを振る役割の大島選手に冴えがありませでした。ならばもっと谷口選手がゲームを作る仕事をしなければならなかったと思います。
そして大島選手。輝きがありませんでした。アジア大会で出続けていたため、試合勘は問題ありませんが、まだフロンターレでのプレー感覚が完全には戻っていないのでしょう。やはり一ヶ月のチーム離脱は、彼にプレーに少なくないズレを与えています。
例えば、普段であれば、プレスをかけてこうようとする相手と駆け引きで、パスを散らしながらボールを受け直す作業を続けていくのですが、この日は、相手のプレスに掴まらないパスが精一杯になってました。フリーになっても、出したボールにミスパスが目立ちました。新潟のプレスが激しいことを指し引いても、プレーを選択するときの余裕がなくなっているんです。これでは彼の良さは出ないですし、前線の攻撃陣にいい形でボールが入るわけがありません。正直、前半だけで交代させられてもおかしくなかった出来だと思いましたが、風間監督は後半に憲剛選手と組ませてピッチに立たせました。チームの浮沈を握っているポジションですから、彼の奮起に期待します。
そしてこの試合、フロンターレが戦っていた、もう一つのプレッシャー。それは優勝争いのプレッシャーです。
新潟戦は、このカードで唯一の7時キックオフのナイトゲームでした。選手も首位・浦和の勝利を知っている状態でキックオフを迎えたと思います。暫定で勝ち点差8ポイントが付いていました。引き分けではなく、勝って5まで縮めなくてはいけないというのは、少なからず選手のプレッシャーになっていたのでしょう。勝つ事でプレッシャーをかけたい立場のはずが、開始時間の関係で逆にプレッシャーを受けて臨む試合になっているわけです。
そして先制点を奪われる展開になり、そして後半になってもうまくいかない時間帯が続くと、チーム全体がとてもナーバスになっているのが感じられました。そして自滅のような形で失点を重ねてしまいました。本当に強いチーム、優勝するチームは、そんなプレッシャーをも跳ね返していくものです。リーグ戦は残り7試合。優勝争いというプレッシャーを克服するための強い意志をしっかりと見せて欲しいと思います。
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日本代表に選出された小林悠選手の原稿を書きました。
川崎F・小林悠が“エース”と呼ばれる日――。日本代表FWの才能を開花させた大久保・ジュニーニョの存在感
「ジュニは『俺を見ておけ』っていうタイプで、嘉人さんは『俺がやるから付いてこい』というタイプですね。ジュニはお父さんで、嘉人さんはお兄さんという感じです」
ジュニーニョと大久保嘉人という、偉大な2人のストライカーが小林選手に与えた影響について書いてます。シンガポールでのブラジル戦は、ジュニーニョもテレビで観戦しているかもしれませんね。... 記事を読む
Posts in the 川崎フロンターレ category:
等々力取材仙台戦〜負けない体験を積み重ねるということ。
試合前に両クラブのマスコットが握手。
両手を差し出すふろん太に対して、片手で応じるベガッ太さん、さすがです。
試合は1-1のドロー。
負け試合を土壇場で追いついての引き分け。勝ち切れませんでした。試合後のミックスゾーンは、なんとも言えない雰囲気が漂ってました。まず内容的に褒められたゲームではなかったこと。そして戦前は勝たないといけない試合だと位置づけていたので、勝ち点1では結果に満足できません。やはり勝ち点3が必要でした。
ベンチ入り後、負けなし記録継続となった新井選手がミックスを通る時、「持ってるね」と、一応声をかけましたが、「勝たないとダメっす」と厳しい表情。当然だと思います。
救いだったのは、首位・浦和が負けたことで、結果的に勝ち点差が5に縮まったということですね。もし浦和にお付き合いして敗戦していたら、本当にダメージが大きかったと思います。その意味で、大きい勝ち点1になったと言えます。勝ち点差5ならば、去年のサンフレッチェ広島がラスト2試合でひっくり返しました。残り8試合、まだまだわかりません。
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試合内容はというと、立ち上がりは悪くなかったと思います。
高い位置からボールを奪いに来た相手をうまくいなしながら、サイドのギャップを早めに突いて、相手のゴールを攻め立てていました。ただそこから時間が進むにつれて、相手のプレスの網に引っかかったわけでもなく、何でもないミスパスで相手にボールを渡してしまい、ややリズムがおかしくなりました。
仙台の守備対応については、高い位置で奪いにいけず、自陣で引かされた展開になると無理せずにガッチリと構えます。ただパス出しの生命線である憲剛選手にはボランチの富田選手が、谷口選手には赤嶺選手がほぼマンマークでついたのも特徴ですかね。ボランチのリャン選手は、マークが外された味方のカバーしつつ、パウリーニョの上がりや下がって来た大久保選手を観るような感じでした。パウリーニョには自由にボールを持たせるような狙いも見て取りました。押し込まれたときは人数を割いて自陣でブロックを築きつつ、パスの出所となる選手にはマンマークにつく対応のため、大宮のようにパス交換では簡単に外せず、少しやっかいだったのは確かだったと思います。
そんな中で生まれた前半の決定機。
パウリーニョのアーリークロスに、レナトが飛び込んだ場面、記者席からはクロスの弾道とそこにピッタリと合わせたレナトのタイミングがバッチリで、「これは入った」と思ったのですが、ボールはポストに弾かれました。そしてそのまま倒れ込むレナト。ボールはデッドしていないので、当然プレーオンです。
失点場面は、その流れで生まれたのが悔やまれますね。
フロンターレとしては、レナトがいないことで、やや左サイドの対応が曖昧になったところもありました。そこを起点にされて、折り返しにウイルソン。ブロックに行ったジェシの外側から巻いてニアサイドに飛んだため、GK西部選手の死角になっていて反応が遅れました。あれはノーチャンスです。
後半は[4-4-2]にシステム変更しながらビハインドを打開。
小宮山選手が左サイドバックに入れるまでの時間帯は谷口選手をそこに配置し、森谷選手もいたことで、ボールの出しどころを分散します。憲剛選手もボランチに下りたことで自由にボールを触れるようになりました。ハーフコートマッチが続きましたが、コレといった決定打が出せず。守る仙台もそこは割り切っていたと思います。ケガ明けの小林選手が不調だったこと、レナトが負傷交代してしまったこと、途中から入った森谷選手と小宮山選手もケガ明けでしたから、100%ではなかったと思います。アタッキングサードの窮屈さを最後まで解消できず。選手がイライラしているのが伝わってきました。
終盤はジェシが前線にあがっていき、森島選手も投入。前節大宮戦とは逆に、「高さで解決しなさい」という風間監督からのメッセージです。もう、なりふり構ってられません。そして後半44分に憲剛選手のクロスに、森島選手の競り合い。記者席からは、ゴールキーパーの手をすり抜けて、ゴールネットにボールが吸い込まれていく軌道がハッキリと見えてすごく奇麗でした。そして地鳴りのような歓声が響く等々力。いやはや、凄かった。試合後の森島選手にゴールシーンを振り返ってもらっても、「無我夢中だったんで」との言葉を繰り返すのみでした。今シーズン、ずっと悩み続けていたデカモリシ、チームを救う一発でした。
勝たないといけない試合だったのは間違いないです。ただ去年の等々力での湘南戦や鳥栖戦のような負けパターンにならず、こういう展開でしぶとく追いついたのも事実です。こういう負けない体験を積み重ねるのも大事です。ポジティブな勝ち点1にしようと思います。
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森谷賢太郎選手をピックアップ!
本日はベガルタ仙台戦です。
二日前の25日、ロングインタビューをした森谷賢太郎選手のピックアッププレイヤーを川崎フロンターレのオフィシャルHPで掲載してもらいました。
「タマシイレボリューション」
(タイトルは、あえて賛否が出るように狙って付けました・笑。)
思えば、移籍して来た森谷選手のプレーに強い変化を感じたのが去年6月の中断明けで迎えたナビスコカップ準々決勝ベガルタ仙台戦でした。第2戦となったアウェイのユアスタでは、彼は移籍後初ゴールも記録しています。あの前後で、森谷選手の中で何かが変わったように見えました。
ある日の練習後、ふとした機会にそこを聞いてみると、「自分に足りないのは球際。そこを意識するようにしました」と語っていました。気にはなっていましたが、彼のことを雑誌などの記事で扱う機会もなかったですから、それほど深いところまで聞くこともありませんでした。
そして今回のピックアッププレイヤー。
どういうテーマにするか悩みましたが、思い切って去年のあの時期のことを中心に聞いてみることにしました。森谷選手が胸の内に抱えていたのは、「これでダメなら、今年でサッカーを辞めようと思っていた」との思いでした。を読んでもらえれば、と。
この原稿提出後に、ケガで2週間ほど戦線離脱してしまった森谷選手でしたが、現在は全体練習に復帰をしています。今日の仙台戦もメンバー入りするかと思います。期待ですね。
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NACK5取材〜高さで解決しないサイドの崩し方。
サッカーダイジェストに原稿を書きました。
本日発売のサカダイことサッカーダイジェスト。表紙は日本代表ですが、川崎フロンターレの大特集も組まれております。
僕は小林悠選手と大島僚太選手のクローズアップ記事、風間監督&全選手の小ネタエピソード集を執筆させてもらいました。
小林悠選手と大島僚太選手の記事に関しては、最近は露出の多い2人なので、せっかく書くなら巷の紹介記事では語られていない切り口にしようと思いました。小林選手は、得点力向上の背景を大久保嘉人選手との関係性から分析した内容に。大島選手は、縦パスを繰り出せるようになって以降の現在は、横パスを選択肢に組み込んだことの変化について書いています。
そしてもうひとつ。
フロンターレタイムズでは、風間監督&全選手の最近の小ネタを見開きで紹介しています。ピッチ外の話題中心ですが、これはこれで面白いと思います。実際の取材はかなり大変で、ブラジル人選手以外は、帰り際の選手にマンツーマンで「何か最近起きたタイムリーなネタをちょうだい」と、無茶ぶりして全員から聞き出しました・笑。
ちなみに谷口選手は金髪ネタを聞いたのですが、原稿を提出した後に黒髪に戻してしまったというのが悔やまれます。今日の練習後、谷口選手に、「サカダイの金髪ネタ、あのまま載っちゃったよー」と伝えたら、「そうでしたねー、すみません」と、めっちゃさわやかな笑顔で言われました。さわやか過ぎたので、許す!
他の選手も意外なエピソード満載だと思うので、興味ある方はぜひ読んでみてください。
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等々力取材(天皇杯愛媛戦)〜違和感の正体、のようなもの。
等々力で天皇杯3回戦は、J2の愛媛FC戦。
伊予柑太と一平くんも来ていました。
アウェイ側の一平くんグッズ売り場、人が多過ぎです。
青い一平くん人形もありました。
試合は0-1で敗戦。残念ながら天皇杯が終わってしまいました。本当に残念です。
中二日で横浜Fマリノス戦を控えていることから、風間監督はスタメンを総替え。しかし呼吸が噛み合わない前線の攻撃陣、ゲーム勘の不安をのぞかせた後ろの守備陣といったところで、チームとして評価すると、どうにも不安定でした。そして前半にカウンターで喫した失点を最後まで巻き返せず。1点が遠かったですね。
見ていて猛烈な違和感を感じたのが、やはり攻撃陣の停滞ぶり。特に前半は、それほどプレッシャーを受けているわけではないはずなのに、すぐにボールを下げてやり直しをする選択の連続。ボールを失わないことは大事ですが、これはただ単に責任から逃げているだけです。バイタルエリア手前までボールは運べても、そこで相手の守備にひっかかってしまい、ボックスに入っていく崩しはほとんどありませんでした。なんとも残念な前半の45分でした。
試合後、必死に攻撃にアクセントをつけようと孤軍奮闘していた金久保選手に、前半のバイタルエリア付近での違和感をピッチでどう感じていたのか聞いてみました。
常に冷静な分析をした上でコメントをしてくれる彼は、「あくまで自分の感覚ですが」と前置きしながらも、「ゴール前で、『もう一回動いて欲しい』という場面で(味方が)止まっていたり、『ここでスピードアップすればいける!』と感じたタイミングでそうなってなくて・・・」と、コンビネーションのときのイメージのズレを口にしていました。
金久保選手は中断明けからスタメンの一角を担っていた選手ですから、つまり、普段であればイメージがリンクしていたはずのプレーが、このときはリンクできなかった。それに加えて、単純な技術的なミスも多かったのも事実です。「見えていなくてミスになるのならわかるのだけど、見えていてミスになっていたので・・・」と、とても歯がゆそうに話してくれました。きっと、このへんがこの日のピッチに展開されたサッカーに感じた違和感の正体、のようなものだったのかもしれません。
最後まで崩し切れなかった、後半の相手の人数をかけた密集守備についても、彼は「仕方がない」では済ませようとしませんでした。「あれだけ引かれると奇麗に崩すのは確かに難しいと思いますが、それでもケンゴさん(中村憲剛)やヨシトさん(大久保嘉人)なら崩せていたと思ってます。みんなでそのレベルになっていけないと」と、やはりあくまでチームの上に追いつく気概を口にしていました。
うーん、しかし本当に残念。天皇杯が終わってしまいました。
色々思うことはありますが、ここからどう巻き返していくのか。しっかりと観察したいと思います。
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等々力取材〜ヤヒロ・スコアでセレッソに勝つ。
先週は、ブログの更新もお盆休みを取らせてもらいました。
今週からまた再開ということで。等々力のセレッソ戦から。
(※野球のスコアボードではありません)。
風間監督が筑波大の指揮をしていた頃、対戦相手に関係なく5-4や4-3と大味なスコアで打ち合うことが多かったので、大学サッカー関係者からは「ヤヒロ・スコア」と呼ばれていたそうですけど、そういう意味では、久々のヤヒロ・スコアでしたねぇ、えぇ。
勝ち方や失点数はどうあれ、まずは勝ったことは評価したいです。なにせ、セレッソがJ1復帰した2010年から、等々力でセレッソに勝ってませんでしたからね。等々力でのセレッソ戦の勝ちが、かなり久しぶりです。
にしても、ヒヤヒヤだったにも確かです。
見ている方も疲れたので、やってる選手もさぞかし疲れたと思い、試合後のミックスゾーンを通っていく田中裕介選手に声をかけてみました。彼はロスタイムに投入されたので、ほとんどプレーはしていないのですが、5-4というシチュエーションで逃げ切りを求められてピッチに入る選手心理は、一体どんなものなのか。単純に聞いてみたかったのです。
彼はホッとした表情で、「いやー、プレッシャーはありましたよ。大宮のときの3-4の試合がよぎってたし」と笑っていました。
・・・3-4で負けた大宮戦と聞いて、てっきり今季3月のリーグ戦だと思って聞いていたのですが、後でよく考えたら、たぶん2年前の天皇杯のことを言っていたんでしょうね。前半終えて3-0から後半だけでひっくり返された試合です。確かに、あの試合に似ていたかも・・・そういう意味で、5点目を取って突き放したのはチームの成長ということで(←無理矢理)。
試合の流れに関して言うと、開始5分にいきなり失点。浦和戦から立ち上がりに失点しているのは、反省材料ですね。
ただこれは3バックシステムを導入してまだ間もないというのも原因の一つだと思います。相手(のシステム)による噛み合わせによる齟齬をどう噛み合わせていくのか。前節の浦和とセレッソでは布陣が違いますし、チームの経験値もやはり足りないですから、どうしても立ち上がりは探りながらやる部分が出てしまいます。
失点場面は、まさにそこを突かれた印象です。
左サイドからのゴール前に入って来たクロスを、逆サイドから走り込んで来た南野選手の決められてしまい失点。「自分は、少し前目のポジションだったこともあるんですけど、マークを捨ててはいけなかったですね。あそこは自分がついて行かなくてはいかなかった」とこの場面を反省していたのは、左ウィングバックの登里選手でした。
浦和の1トップ2シャドーであれば3バックを含めた後ろのマーキングはかなりハッキリしますが、セレッソの[4-2-3-1]に対しては、サイドからゴールに入って来る選手に対して、誰が掴むのか、あるいは受け渡すのか。その連係がやや曖昧でした。
ただそれを除けば、前半はいつものペースに持ち込めました。
いつものサッカーを展開したので、特に紹介しません・笑。程よい距離感でパスが回り、面白いように得点を重ねていきました。締めはロスタイムに憲剛選手がスライディングシュート。前半だけで4-1。
攻撃時は、森谷選手のポジショニングがアクセントになっていて、面白いですね。金久保選手が出場していたとき、トップ下に現れてFWとのクッション役となることで前線とのリンクマンになっていたのですが、今のシステムでは右ウィングバックの森谷選手がそういう役割をしています。ポジションに捉われず、神出鬼没な動きでパスワークの潤滑油になっています。全体のバランスを取るのではなく、あえてわざと密集する一人がいることで、局面が打開できていたりするから、サッカーは面白いです。
前半で気になったのは、むしろセレッソの守備。
先月の対戦に比べると、プレスにいくときの連動性が薄れているような印象を受けました。前回はもっとチーム全体がコンパクトだったはずですが、前と後ろで少し分断されているような距離感でした。試合中、監督がしきりにラインを上げるように指示していたので、後ろがラインを下げ過ぎていたのでしょうか。これではフロンターレのパスワークを捉まえられません。
うまくいかないがゆえに選手の守り方の意識にも迷いが出たのか、憲剛選手のスライディングゴールがそうですけど、レナト選手とのワンツーに、人につくでもなく、かといって場所を埋めるでもなく、どっちともつかずで、あっさりと中央を割られていました。未勝利が続くとこういった負のスパイラルが続くのかもしれません。
さて、問題の後半について。
負けるなら3点差も4点差も関係ないですから、相手は捨て身に近い戦法で来ました。システム的には[3-5-2]だそうですが、前線に3、4人が張り付いているほどの前傾姿勢だったようにも見えました。同点や1点差のスコアだったら、絶対にやらないであろうギャンブルを仕掛けてきました。
もっとも、こういうスタイルは長くとは続きません。
うまくいなせば、15分もすればゲームはだいたい落ち着きます。実際、立ち上がりはわりといいリズムでいなしていたんですよね。しかしワンパンチを食らってしまい失点。先制点同様、サイドからの突破と逆サイドへのクロスの形です。対人に強い小宮山選手が振り切られたこと、森谷選手もしっかりとマークについていき、中に絞ってクロス対応したものの、先に触られてしまいました。
まだ2点差あるとはいえ、これで勢いはセレッソに。後半のフロンターレは受け身になってしまいました。稲本選手を入れて4バックに戻しますが、うまくいきません。小林選手が久しぶりのワンタッチゴーラーぶりを発揮して5点目をあげてくれたから勝てたものの、いやぁ、前半とはうって変わって本当に苦しい後半でした。
試合後、實藤選手に劣勢が長く続いた理由を聞いてみました。彼が述べていたのは、相手が前線に人数をかけてきたことで、相手に引っ張られてしまい、味方同士の距離感が遠くなってしまったことでした。
「DFラインにとっては距離感が生命線なんですが、後半は相手が前線に人数を残していた分、そこの対応を意識しなくてはいけなくなるので、味方の距離感が遠くなってしまったんです。自分を含めて、チャレンジに行っている選手に対する、自分を含めたカバーリングが遅くなってしまった。ただそこは意識の問題なので、すぐに直るところだと思っています。あまり引きずらずに個人個人で改善していきたいです」
試合後、レナトがフォルランとユニフォーム交換してました…いきさつが気になったので、ミックスゾーンでレナトにフォルランのことを聞いたら、「素晴らしい選手で、ワールドカップでMVPを取った選手なので、リスペクトしている。試合後に話をしていたら、じゃあシャツを交換しようかという流れになった。シャツを交換したことで彼も自分のことを覚えてくれたことでしょう・笑」とのことでした。レナト、意外と抜け目ないですねぇ。
どうやら、フォルランがJリーグでユニフォーム交換したのは初めてだったようで、フォルランの上半身裸姿を生で見たセレッソサポーターも感激だったようです。レナトには「フォルランを脱がした男」の肩書きをあげたいぐらいです。
カンゼンさんからフォルラン特集のフッチボールサミットの献本をいただきました。
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この本を読んでいると、あらためてビッグネームが来たんだなぁ、と実感します。特に「来日の真相」というフォルラン獲得の移籍交渉エピソードが面白いですね。ビッグネーム獲得の為に、水面下でどう動いているか。情報戦の駆け引きなどもとても面白いです。なおセレッソの獲得候補リストには、ロナウジーニョ、カカ、フォルランの3人がいて、もし本田圭佑が昨年の夏にミランに移籍していたら(実際は冬)、カカを獲得できていた可能性もあったという記述もありました。あくまで、可能性ですが。
なおミックスゾーンで横を通り過ぎるとき、フォルランに会釈したら、眼を合わせて会釈してくれて、ちょっとテンションあがりました。
・・・ふぇー。休み明けということで、たくさん書いて疲れたので、このへんで。
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日立台取材〜ネルシーニョ ロジック。
エルゴラの見出しが「ネルシーニョ マジック」だったんですけど、個人的にはマジックというよりもロジックでねじ伏せられた敗戦という感想です。言うなれば、「ネルシーニョ ロジック」。魔法というよりも論理的な対策に屈しました。
柏との対戦では、「ここがこうなって、こっちがこうなるので・・・」と、いつも以上に両チームのシステムの齟齬がポイントになります。なんだかパズルを見ているというか、脳内が将棋の戦法対策を考えているときの感覚になります。
その噛み合わせのズレをどっちが生かせるかは、当然ながらボールを持っているほうになります。風間監督はよく「ボールを持っている側に意志がある(だから、相手のシステムを壊せる)」という言い方をするのですが、この試合では柏にうまくボールを持たれたことで、すっかりこちらの布陣が振り回れてしまったと言えます。
敗因は色々あると思うのですが、ここではその「相手に振り回された」という部分だけ指摘したいと思います。
柏の基本システムは[3-4-2-1]ですが、ビルドアップ時は3バック+ボランチの大谷選手が落ちた4枚でじっくり組み立てて来ます。こちらは2トップですから、前線から奪おうにもハメコめません。そこにサイドハーフがチェイスに加勢しようとすると、待ってましたと言わんばかりに空いたサイドの局面を使われてしまいます。なので、どうしてもサイドの選手は我慢してリトリートして構えるようになります。
「サイドで相手に(ウィングバック)に高い位置を取られていて、自分が降りて対応しなくてはいけなくなって・・・自陣に下がっている分、ボールを奪ってから前に出ていく距離がいつもより長くなってしまった」と、話していたのは金久保選手。
この「距離がいつもより長くなってしまった」というのは、高い位置を取る相手のウィングバックとの駆け引きで、サイドの自陣深くまで引っ張られていたので、ボールを奪ってから前線の2トップのサポートにいこうにも、その距離が遠くなってしまった、ということです。
フロンターレが良い攻撃ができている場面というのは、大久保選手と小林選手の2トップにボールが入った時、サイドの森谷選手と金久保選手が中央のエリアに顔を出して近くで絡んでいるときなんですよね。しかしこの日は、2人がサイドの守備で引っ張られてしまい、攻撃に出て行くときのそのサポートがなかなかできませんでした。 相手は3バックで構えてますから、孤立気味の2トップに入るボールにも思い切ってチャレンジできます。何度かゴール前でファウルはもらえましたが、得点には結びつきませんでした。
自分たちがサイドを広く攻めることでに、フロンターレの選手間の距離を横に広げてしまえばいい、という考えです。実際に攻撃の選手間の距離が分断されてしまい、「自分たちの距離」でサッカーが出来ませんでした。
このフロンターレの選手間の距離を分断させる狙いは、ポゼッション時だけではなく、ボールを奪ってからの攻撃の切り替えでも徹底されてました。とにかく素早く逆サイドに大きく展開する。ここからも必然的に、フロンターレの布陣はその対応で横に広げられてしまいます。サイドの攻防でいうと、2シャドーにはサイドバックが対応するので、上がって来るウィングバックにはサイドハーフが自陣に戻ってケアする形になります。すっかり、こちらポジションが振り回れてしまいました。
それでも前半は悪いなりに憲剛選手のゴラッソで同点に追いつき、後半早々には大久保選手のポスト直撃のミドル弾などもありましたから、勝つチャンスがなかった試合とは思いません。ただこちらの弱点を「これでもか!」と的確に突いて来るネルーシーニョの策略はさすがだなぁ、と。ホント、あの手の打ち方は将棋の戦法対策を見ているようでした・笑。
「でも自分たちがボールを持つ時間帯が増えていれば、そんな展開にはならなかったですから。次に対戦するレッズもそういう形で来ると思うので、これを教訓にしてやらないといけない」と金久保選手。
ネルシーニョ監督から、夏休みの宿題を出された形の川崎フロンターレ。今週、どう立て直すのか。しっかり観察したいと思います。
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