等々力取材(天皇杯愛媛戦)〜違和感の正体、のようなもの。

 等々力で天皇杯3回戦は、J2の愛媛FC戦。

伊予柑太と一平くんも来ていました。
アウェイ側の一平くんグッズ売り場、人が多過ぎです。

青い一平くん人形もありました。
 試合は0-1で敗戦。残念ながら天皇杯が終わってしまいました。本当に残念です。
中二日で横浜Fマリノス戦を控えていることから、風間監督はスタメンを総替え。しかし呼吸が噛み合わない前線の攻撃陣、ゲーム勘の不安をのぞかせた後ろの守備陣といったところで、チームとして評価すると、どうにも不安定でした。そして前半にカウンターで喫した失点を最後まで巻き返せず。1点が遠かったですね。
 見ていて猛烈な違和感を感じたのが、やはり攻撃陣の停滞ぶり。特に前半は、それほどプレッシャーを受けているわけではないはずなのに、すぐにボールを下げてやり直しをする選択の連続。ボールを失わないことは大事ですが、これはただ単に責任から逃げているだけです。バイタルエリア手前までボールは運べても、そこで相手の守備にひっかかってしまい、ボックスに入っていく崩しはほとんどありませんでした。なんとも残念な前半の45分でした。
 試合後、必死に攻撃にアクセントをつけようと孤軍奮闘していた金久保選手に、前半のバイタルエリア付近での違和感をピッチでどう感じていたのか聞いてみました。
 常に冷静な分析をした上でコメントをしてくれる彼は、「あくまで自分の感覚ですが」と前置きしながらも「ゴール前で、『もう一回動いて欲しい』という場面で(味方が)止まっていたり、『ここでスピードアップすればいける!』と感じたタイミングでそうなってなくて・・・」と、コンビネーションのときのイメージのズレを口にしていました。
 金久保選手は中断明けからスタメンの一角を担っていた選手ですから、つまり、普段であればイメージがリンクしていたはずのプレーが、このときはリンクできなかった。それに加えて、単純な技術的なミスも多かったのも事実です。「見えていなくてミスになるのならわかるのだけど、見えていてミスになっていたので・・・」と、とても歯がゆそうに話してくれました。きっと、このへんがこの日のピッチに展開されたサッカーに感じた違和感の正体、のようなものだったのかもしれません。
 最後まで崩し切れなかった、後半の相手の人数をかけた密集守備についても、彼は「仕方がない」では済ませようとしませんでした。「あれだけ引かれると奇麗に崩すのは確かに難しいと思いますが、それでもケンゴさん(中村憲剛)やヨシトさん(大久保嘉人)なら崩せていたと思ってます。みんなでそのレベルになっていけないと」と、やはりあくまでチームの上に追いつく気概を口にしていました。
うーん、しかし本当に残念。天皇杯が終わってしまいました。
色々思うことはありますが、ここからどう巻き返していくのか。しっかりと観察したいと思います。
ゲコリのうた/SPACE SHOWER MUSIC

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等々力取材〜ヤヒロ・スコアでセレッソに勝つ。

 先週は、ブログの更新もお盆休みを取らせてもらいました。
今週からまた再開ということで。等々力のセレッソ戦から。

(※野球のスコアボードではありません)。
 風間監督が筑波大の指揮をしていた頃、対戦相手に関係なく5-4や4-3と大味なスコアで打ち合うことが多かったので、大学サッカー関係者からは「ヤヒロ・スコア」と呼ばれていたそうですけど、そういう意味では、久々のヤヒロ・スコアでしたねぇ、えぇ。
 勝ち方や失点数はどうあれ、まずは勝ったことは評価したいです。なにせ、セレッソがJ1復帰した2010年から、等々力でセレッソに勝ってませんでしたからね。等々力でのセレッソ戦の勝ちが、かなり久しぶりです。
 にしても、ヒヤヒヤだったにも確かです。
見ている方も疲れたので、やってる選手もさぞかし疲れたと思い、試合後のミックスゾーンを通っていく田中裕介選手に声をかけてみました。彼はロスタイムに投入されたので、ほとんどプレーはしていないのですが、5-4というシチュエーションで逃げ切りを求められてピッチに入る選手心理は、一体どんなものなのか。単純に聞いてみたかったのです。
 彼はホッとした表情で、「いやー、プレッシャーはありましたよ。大宮のときの3-4の試合がよぎってたし」と笑っていました。
・・・3-4で負けた大宮戦と聞いて、てっきり今季3月のリーグ戦だと思って聞いていたのですが、後でよく考えたら、たぶん2年前の天皇杯のことを言っていたんでしょうね。前半終えて3-0から後半だけでひっくり返された試合です。確かに、あの試合に似ていたかも・・・そういう意味で、5点目を取って突き放したのはチームの成長ということで(←無理矢理)。
 試合の流れに関して言うと、開始5分にいきなり失点。浦和戦から立ち上がりに失点しているのは、反省材料ですね。
 ただこれは3バックシステムを導入してまだ間もないというのも原因の一つだと思います。相手(のシステム)による噛み合わせによる齟齬をどう噛み合わせていくのか。前節の浦和とセレッソでは布陣が違いますし、チームの経験値もやはり足りないですから、どうしても立ち上がりは探りながらやる部分が出てしまいます。
 失点場面は、まさにそこを突かれた印象です。
左サイドからのゴール前に入って来たクロスを、逆サイドから走り込んで来た南野選手の決められてしまい失点。「自分は、少し前目のポジションだったこともあるんですけど、マークを捨ててはいけなかったですね。あそこは自分がついて行かなくてはいかなかった」とこの場面を反省していたのは、左ウィングバックの登里選手でした。
 浦和の1トップ2シャドーであれば3バックを含めた後ろのマーキングはかなりハッキリしますが、セレッソの[4-2-3-1]に対しては、サイドからゴールに入って来る選手に対して、誰が掴むのか、あるいは受け渡すのか。その連係がやや曖昧でした。
 ただそれを除けば、前半はいつものペースに持ち込めました。
いつものサッカーを展開したので、特に紹介しません・笑。程よい距離感でパスが回り、面白いように得点を重ねていきました。締めはロスタイムに憲剛選手がスライディングシュート。前半だけで4-1。
 攻撃時は、森谷選手のポジショニングがアクセントになっていて、面白いですね。金久保選手が出場していたとき、トップ下に現れてFWとのクッション役となることで前線とのリンクマンになっていたのですが、今のシステムでは右ウィングバックの森谷選手がそういう役割をしています。ポジションに捉われず、神出鬼没な動きでパスワークの潤滑油になっています。全体のバランスを取るのではなく、あえてわざと密集する一人がいることで、局面が打開できていたりするから、サッカーは面白いです。
 前半で気になったのは、むしろセレッソの守備。
先月の対戦に比べると、プレスにいくときの連動性が薄れているような印象を受けました。前回はもっとチーム全体がコンパクトだったはずですが、前と後ろで少し分断されているような距離感でした。試合中、監督がしきりにラインを上げるように指示していたので、後ろがラインを下げ過ぎていたのでしょうか。これではフロンターレのパスワークを捉まえられません。
 うまくいかないがゆえに選手の守り方の意識にも迷いが出たのか、憲剛選手のスライディングゴールがそうですけど、レナト選手とのワンツーに、人につくでもなく、かといって場所を埋めるでもなく、どっちともつかずで、あっさりと中央を割られていました。未勝利が続くとこういった負のスパイラルが続くのかもしれません。
 さて、問題の後半について。
負けるなら3点差も4点差も関係ないですから、相手は捨て身に近い戦法で来ました。システム的には[3-5-2]だそうですが、前線に3、4人が張り付いているほどの前傾姿勢だったようにも見えました。同点や1点差のスコアだったら、絶対にやらないであろうギャンブルを仕掛けてきました。
 もっとも、こういうスタイルは長くとは続きません。
うまくいなせば、15分もすればゲームはだいたい落ち着きます。実際、立ち上がりはわりといいリズムでいなしていたんですよね。しかしワンパンチを食らってしまい失点。先制点同様、サイドからの突破と逆サイドへのクロスの形です。対人に強い小宮山選手が振り切られたこと、森谷選手もしっかりとマークについていき、中に絞ってクロス対応したものの、先に触られてしまいました。
 まだ2点差あるとはいえ、これで勢いはセレッソに。後半のフロンターレは受け身になってしまいました。稲本選手を入れて4バックに戻しますが、うまくいきません。小林選手が久しぶりのワンタッチゴーラーぶりを発揮して5点目をあげてくれたから勝てたものの、いやぁ、前半とはうって変わって本当に苦しい後半でした。
 試合後、實藤選手に劣勢が長く続いた理由を聞いてみました。彼が述べていたのは、相手が前線に人数をかけてきたことで、相手に引っ張られてしまい、味方同士の距離感が遠くなってしまったことでした。
「DFラインにとっては距離感が生命線なんですが、後半は相手が前線に人数を残していた分、そこの対応を意識しなくてはいけなくなるので、味方の距離感が遠くなってしまったんです。自分を含めて、チャレンジに行っている選手に対する、自分を含めたカバーリングが遅くなってしまった。ただそこは意識の問題なので、すぐに直るところだと思っています。あまり引きずらずに個人個人で改善していきたいです」

 試合後、レナトがフォルランとユニフォーム交換してました…いきさつが気になったので、ミックスゾーンでレナトにフォルランのことを聞いたら、「素晴らしい選手で、ワールドカップでMVPを取った選手なので、リスペクトしている。試合後に話をしていたら、じゃあシャツを交換しようかという流れになった。シャツを交換したことで彼も自分のことを覚えてくれたことでしょう・笑」とのことでした。レナト、意外と抜け目ないですねぇ。
 どうやら、フォルランがJリーグでユニフォーム交換したのは初めてだったようで、フォルランの上半身裸姿を生で見たセレッソサポーターも感激だったようです。レナトには「フォルランを脱がした男」の肩書きをあげたいぐらいです。
 カンゼンさんからフォルラン特集のフッチボールサミットの献本をいただきました。
フットボールサミット第24回 美しく危険な男フォルラン/カンゼン

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 この本を読んでいると、あらためてビッグネームが来たんだなぁ、と実感します。特に「来日の真相」というフォルラン獲得の移籍交渉エピソードが面白いですね。ビッグネーム獲得の為に、水面下でどう動いているか。情報戦の駆け引きなどもとても面白いです。なおセレッソの獲得候補リストには、ロナウジーニョ、カカ、フォルランの3人がいて、もし本田圭佑が昨年の夏にミランに移籍していたら(実際は冬)、カカを獲得できていた可能性もあったという記述もありました。あくまで、可能性ですが。
 なおミックスゾーンで横を通り過ぎるとき、フォルランに会釈したら、眼を合わせて会釈してくれて、ちょっとテンションあがりました。
・・・ふぇー。休み明けということで、たくさん書いて疲れたので、このへんで。
J.LEAGUE ENTERPRISE 2014 セレッソ大阪 コンフィットTシャツ No.1…/J.LEAGUE ENTERPRISE

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日立台取材〜ネルシーニョ ロジック。


 エルゴラの見出しが「ネルシーニョ マジック」だったんですけど、個人的にはマジックというよりもロジックでねじ伏せられた敗戦という感想です。言うなれば、「ネルシーニョ ロジック」。魔法というよりも論理的な対策に屈しました。
 柏との対戦では、「ここがこうなって、こっちがこうなるので・・・」と、いつも以上に両チームのシステムの齟齬がポイントになります。なんだかパズルを見ているというか、脳内が将棋の戦法対策を考えているときの感覚になります。
 その噛み合わせのズレをどっちが生かせるかは、当然ながらボールを持っているほうになります。風間監督はよく「ボールを持っている側に意志がある(だから、相手のシステムを壊せる)」という言い方をするのですが、この試合では柏にうまくボールを持たれたことで、すっかりこちらの布陣が振り回れてしまったと言えます。
 敗因は色々あると思うのですが、ここではその「相手に振り回された」という部分だけ指摘したいと思います。
 
 柏の基本システムは[3-4-2-1]ですが、ビルドアップ時は3バック+ボランチの大谷選手が落ちた4枚でじっくり組み立てて来ます。こちらは2トップですから、前線から奪おうにもハメコめません。そこにサイドハーフがチェイスに加勢しようとすると、待ってましたと言わんばかりに空いたサイドの局面を使われてしまいます。なので、どうしてもサイドの選手は我慢してリトリートして構えるようになります。
 「サイドで相手に(ウィングバック)に高い位置を取られていて、自分が降りて対応しなくてはいけなくなって・・・自陣に下がっている分、ボールを奪ってから前に出ていく距離がいつもより長くなってしまった」と、話していたのは金久保選手。
 この「距離がいつもより長くなってしまった」というのは、高い位置を取る相手のウィングバックとの駆け引きで、サイドの自陣深くまで引っ張られていたので、ボールを奪ってから前線の2トップのサポートにいこうにも、その距離が遠くなってしまった、ということです。
 フロンターレが良い攻撃ができている場面というのは、大久保選手と小林選手の2トップにボールが入った時、サイドの森谷選手と金久保選手が中央のエリアに顔を出して近くで絡んでいるときなんですよね。しかしこの日は、2人がサイドの守備で引っ張られてしまい、攻撃に出て行くときのそのサポートがなかなかできませんでした。 相手は3バックで構えてますから、孤立気味の2トップに入るボールにも思い切ってチャレンジできます。何度かゴール前でファウルはもらえましたが、得点には結びつきませんでした。
 自分たちがサイドを広く攻めることでに、フロンターレの選手間の距離を横に広げてしまえばいい、という考えです。実際に攻撃の選手間の距離が分断されてしまい、「自分たちの距離」でサッカーが出来ませんでした。
 このフロンターレの選手間の距離を分断させる狙いは、ポゼッション時だけではなく、ボールを奪ってからの攻撃の切り替えでも徹底されてました。とにかく素早く逆サイドに大きく展開する。ここからも必然的に、フロンターレの布陣はその対応で横に広げられてしまいます。サイドの攻防でいうと、2シャドーにはサイドバックが対応するので、上がって来るウィングバックにはサイドハーフが自陣に戻ってケアする形になります。すっかり、こちらポジションが振り回れてしまいました。
 それでも前半は悪いなりに憲剛選手のゴラッソで同点に追いつき、後半早々には大久保選手のポスト直撃のミドル弾などもありましたから、勝つチャンスがなかった試合とは思いません。ただこちらの弱点を「これでもか!」と的確に突いて来るネルーシーニョの策略はさすがだなぁ、と。ホント、あの手の打ち方は将棋の戦法対策を見ているようでした・笑。
「でも自分たちがボールを持つ時間帯が増えていれば、そんな展開にはならなかったですから。次に対戦するレッズもそういう形で来ると思うので、これを教訓にしてやらないといけない」と金久保選手。
 ネルシーニョ監督から、夏休みの宿題を出された形の川崎フロンターレ。今週、どう立て直すのか。しっかり観察したいと思います。
川崎フロンターレが伝えるサッカーから学ぶ運動のきほん/ベースボールマガジン社

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川崎フロンターレと本を読もう。

今年の「川崎フロンターレと本を読もう!」の小冊子が出てました。

今年の表紙は、中村憲剛選手、小林悠選手、谷口彰悟選手の3人です。
 他にも、武田信平社長、安藤駿介選手、可児壮隆選手のオススメ本が紹介されておりました。小林選手と武田社長は、読書にまつわるインタビューも掲載されています。それぞれオススメポイントは、この小冊子を読んでもらうとして、推薦本をざっと紹介しておきますね。
※登場順です
<小林悠選手>
陽気なギャングが地球を回す (祥伝社文庫)/祥伝社

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<武田信平社長>
国をつくるという仕事/英治出版

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※インタビュー中には、他にもいくつかの本を紹介しています
Jリーグ再建計画 (日経プレミアシリーズ)/日本経済新聞出版社

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そら、そうよ ~勝つ理由、負ける理由/宝島社

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池上彰の教養のススメ 東京工業大学リベラルアーツセンター篇/日経BP社

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<中村憲剛選手>
獣の奏者 1闘蛇編 (講談社文庫)/講談社

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獣の奏者 2王獣編 (講談社文庫)/講談社

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<谷口彰悟選手>
白鵬のメンタル 人生が10倍大きくなる「流れ」の構造 (講談社プラスアルファ新書)/講談社

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<可児壮隆選手>
半落ち (講談社文庫)/講談社

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<安藤駿介選手>
準備する力 夢を実現する逆算のマネジメント<文庫改訂版> (角川文庫)/KADOKAWA/角川書店
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 選手は小説か、自己啓発本を多く読んでいるみたいですね。可児選手のチョイスがちょっと渋い気がします。安藤選手、フロンターレの先輩・川島選手の本とは・・・ベタやなぁ・笑。
8月31日までフロンターレ帯コメント大賞も募集しているので、これらの本を読んでドシドシ応募してみてください。... 記事を読む

ノボリdayだった鳥栖戦。

 難敵・鳥栖に1-0で勝利。
決勝点を決めたのは、背番号23番の23歳・ノボリこと、登里享平選手でした。

「23」の数字が並んでおります。しかも23日の試合で、23000人以上が入って満員だったベアスタ・・・なんだか出来過ぎですね。
 前半の試合運びに関しては、ここ3試合で一番良かったように感じました。
面白かったのは中盤の関係です。
 ここ2試合、フロンターレは金久保選手、憲剛選手、大島選手、森谷選手と、いわゆる技巧派タイプの4人で中盤を構成しています。
 後ろと中盤でボールを動かす時、従来の配給元である憲剛選手と大島選手に加えて、今は両サイドの2人が中央に絞って数的優位の状況を作るんです。特に金久保選手はかなりポジションレスで、左サイドハーフでありながら、トップ下に構えたり、右サイドでのボール回しにも頻繁に顔を出しています。さらに大久保嘉人選手もタイミングよく中盤に下がってプレーに関与する。
 中央に選手が密集していてボールを動かすフロンターレの前に、さすがの鳥栖もボールの奪いどころが定められないようでした。時間とともに暑さもあってバテててしまったのか、前半の途中で高い位置から奪いにいくのをやめたほどでした。首位の浦和レッズがビルドアップのときに、前線に5枚が張り付き、中盤を空洞化させた5-0-5のようなシステムになることがありますが、フロンターレはその逆でなんだか面白かったです。
 そんな前半でしたが、スコアは0-0。
悪くはない内容とはいえ、得点を奪えませんでした。あえて指摘するならば、攻撃エリアが中央に偏り過ぎてしまう問題点もあったと思います。決定的な崩しは少なかったですし、サイドを効果的に使える場面も少なかった。
 そこで後半10分に、風間監督は金久保選手を下げて左サイドの槍・レナトを投入。これでサイドを使う意識と、そこでの推進力がグッと向上します。
 そうして生まれたのが、左サイドからノボリのゴールです。
一度目は中央への折り返しを弾かれてますが、そのこぼれをしつこく左サイドでボールを動かして、再び左サイドを突破。相手のGK林選手は、さきほどの折り返しの残像があったのでしょう。おそらく中の対応を意識していて、まさかニアをシュートで抜いて来るとは予測していなかったのかもしれません。
 残りはまだ30分近くありましたが、よく耐えました。
案の定、鳥栖はピッチを大きく使って、ロングボール中心で攻撃を組み立ててきました。ロングボール攻撃を跳ね返すことも大事ですが、それに伴う問題点として、ロングボールでチーム全体が間延びさせられると、ボールを回収して攻撃に移る際、選手同士の距離感が遠くなってしまい、リズムを出せないという問題点があります。戦前にも予想していたポイントでしたが、後半はやはりこの展開に持ち込まれました。
 ただこの暑さの連戦でしたし、チームとして割り切っていたように思いました。ひたすら跳ね返して、カウンター中心でOK。クローザーとして投入されたパウリーニョが退場になりながらも、よく踏ん張ったと思います。
 決勝点をあげたのがノボリというのも不思議な感じです。
というのも、昨年のベアスタの4-5で負けた試合で、彼は豊田陽平選手に頭上からヘディングゴールを叩き込まれています。ロングボールを駆使して、空中戦を仕掛けてくる相手に小柄なサイドバックのノボリはどうしても競り合いで分が悪いです。だからこそ、あの失点を悔しがっていました。
 でも、サッカーは身長の高さでやるスポーツではありません。
空中戦を仕掛けて来るサッカーに対して、ノボリのような小柄な選手が地上戦で決勝点を決めてヒーローになる・・・なんとも痛快な勝利でした。
 再開後のアウェイ3連戦を3連勝でスタート。
特に苦手・鳥栖をアウェイで下した事実は自信という意味でも大きいです。とかく否定されがちな「自分たちのサッカー」ですが、風間フロンターレにはリーグを勝ち続けていけるだけの「自分たちのサッカー」を展開して欲しいと思います。簡単ではないですけどね。
ノボリのロングインタビューが掲載されている今月の「サッカークリニック」
Soccer clinic (サッカークリニック) 2014年 08月号 [雑誌]/ベースボール・マガジン社

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表紙の名前の漢字が思いっきり間違っていましたが・・・。
またにわかにフロンターレのやろうとしているサッカーが注目を浴びつつあると思うので・・・・そんな方は、風間監督の本を読むと理解しやすいです。
革命前夜 すべての人をサッカーの天才にする/カンゼン

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日本サッカーを救う「超戦術」 (ベースボール・マガジン社新書)/ベースボール・マガジン社

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「 1対21 」 のサッカー原論 「 個人力 」 を引き出す発想と技術/二見書房

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風間塾 サッカーを進化させる「非常識」論/朝日新聞出版

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清水戦〜慌てず、焦れず、たじろがず。

 先週末は、日本平ことIAIスタジアム取材。

 2-0で勝利。良い試合だったと思います。
前半は飛ばし気味で頑張って来た清水にペースを握られた感じはありましたが、慌てずに対応していました。そして0-0のまま後半になると、怒濤の攻撃で加点。見事な崩しで2点のリードを奪うと、そのままボールを保持しながらゲームをクローズ。試合巧者を感じさせる勝ち方でした。
 ポイントになっていたのは、中央でのリズムです。
この試合、清水の守備の狙いは明確でした。前線の大前選手とノヴァコヴィッチは、パスワークの心臓部を担う憲剛選手と大島選手のダブルボランチがボールを持つと、かなり神経質にプレッシャーをかけてきました。
 ただそれでもダブルボランチは慌てません。
狭いなと思ったら、無理にキープはせず、あっさりとバックパスして戻してやり直します。センターバックの谷口選手はボランチにボールを付けるのがうまいですから、普通であればボールを受けてさばくスペースは消されているように見えても、もらい直しをしようとする憲剛選手に躊躇なくボールを入れます。前半からセンターバックとボランチは何度も何度もパス交換の作業をしていました。ここでじれないのが、チームの強みです。これ自体はあまり意味のないパス交換に見えますが、前線の二人は、アプローチに行ったらすぐに外されてしまうことの繰り返しになるため、スタミナが削られるだけではなく、精神的にもしんくどくなります。「守備で相手の足を止めた」とは試合後の憲剛選手の言葉。これが後半に物凄く利いてきました。
 その「焦れなさ」は、1点目の崩しにも現れていました。
というか、右サイドの崩し、しつこ過ぎるでしょ・笑。憲剛選手、森谷選手、金久保選手、小宮山選手の4人だけで20本ぐらいパス交換を繰り返しながら、スイッチを入れるタイミングをうかがっていました。そして最後は、憲剛選手が小宮山選手の抜け出した瞬間を見逃さずにパス。ファーサイドに詰めていた小林選手が頭で決めました。
 ちなみにこの2分ぐらいボールを回していた場面、中で構えていた小林選手はどう感じていたかと聞くと、「その間、何度も動き直していましたよ(笑)。まだか、まだかと思っていて、ようやく思い通りのボールがきました」と笑っていました。味方もちょっとじれかけていたみたいです。
 1点目のクロスをあげた小宮山選手は、2点目の起点になった斜めに入れたクサビのパスも見事でした。スペースではなく、走り出していた森谷選手の足元に、速くて強いボールをビシッと届けました。受け手の森谷選手が言うには、雨のピッチでボールが走っていたので、それほど難しいパスではなかったそうですが、あのトラップも見事でした。なんにせよ、中央だけではなく、外からこういう攻略ができるようになると、さらに崩しのバリエーションが増えていけると思います。
 無失点で終えた守備陣の頑張りも光りました。
特に實藤選手と谷口選手のセンターバックコンビはとても集中していました。實藤選手はジェシの欠場によって巡って来た先発でしたが、自分の持ち味を出してくれていたと思います。ジェシは押し込まれた展開になるとゴール前で相手を跳ね返せる力強さに頼もさがあります。スピードに秀でた實藤選手がいると、最終ラインラインを高く保ちながら、コンパクトな陣形で戦えるのが良いですね。良い距離感でのサッカーがしやすいですし、自分たちでボールを持てる展開になると、谷口選手のビルドアップの持ち味も出ます。ジェシが戻って来たときにどうするのか。そこは注目になりそうですね。
一方、清水はリーグ戦6試合勝ちがないそうで、試合後はブーイングも起きてました。

サポーターにファンサービスをしていたパルちゃん。
慌てず、焦れず、たじろがずでアウェイ2連勝となりました。
 帰りは静岡遠征の定番、さわやかに。

夜11時近かったので、めっさ混んでた。おそるべし、さわやか。
ちなみにこのブログで触れた、ボランチとセンターバックのパス交換の重要性に興味がある人は、この2冊がおすすめです。
増補改訂版 なぜボランチはムダなパスを出すのか? ~1本のパスからサッカーの“3手先”が見えて…/ガイドワークス

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遠藤保仁選手のバックパスの重要性を丁寧に解説しています。
サッカー戦術サミット 一流フットボーラ―がリアルに語る「個」の戦術論/カンゼン

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こちらの本は、山口智選手が、センターバックがボランチにつけるパスの重要性を語っています。... 記事を読む

セレッソ戦〜後半から、いつもの試合になりました。

 セレッソ大阪戦は2-1で逆転勝ち。
前半は選手同士の距離感も悪く、パスワークにもテンポがなく、攻守両面でセレッソ大阪にやられたい放題。
 後ろでのビルドアップのときにセレッソのプレッシングをはがせないのと、中盤と前線もマークを外し切れていない状態でパスを受けようとするので、あっさりと囲まれてしまいます。前半に関しては「誰か1人が・・・」という原因で現象ではなく、チーム全体の問題だったかと思います。0-2、0-3になってもおかしくないほどまるでいいところなしでしたが、0-1でハーフタイムに持ち込めたのが大きかったと思います。
 その距離感とテンポ、なにより選手個々の意識を風間監督が改善したようで、後半はいつものサッカーになりました。逆に天皇杯に主力が出ていた(しかも120分)セレッソは、飛ばし過ぎた前半の代償もあり、ガクンと動きが落ちてきました。今度は一転してフロンターレが主導権を握る展開に。
 後半から入り、決勝点を挙げた金久保選手のプレーも良かったですね。ゴール自体は「スルーしたらボールが戻って来たから、蹴ってみたら入った」みたいな形でしたが、その前のゴール前のパス回しが嫌らしかったですね・笑。直前まで金久保選手は中盤の底で構えていたのだけど、憲剛選手と入れ替わるようにして前に出て行ったタイミングで、ボールが出て来てあのゴールを決めました。良い判断だったと思います。
 風間監督のもとで行っているこのサッカー、なかでもスタメン組が共有し、奏でているプレーのリズムに入っていくのは相当大変だと思います。ただ金久保選手は、今季加入の中で(谷口選手はのぞいて)チームのテンポに入ってやれる選手になっています。これだけでもハードルが高いのですが、本人は「それはフロンターレでやる以上、最低限のこと」と認識していて、その上で自分の武器がないといけない、と言い切っています。
ゴールという結果を出した金久保選手、今後のスタメン争いが楽しみです。
 全然関係ないですけど、昨日のピッチには、ジュン(金久保順)とホタル(山口蛍)がピッチにいた試合だったんですね。あとソウタ兄ちゃん(中澤聡太)もベンチにいました・・・・だから何?って言われても困りますけど、言ってみました。
 試合後は柿谷選手の退団セレモニー。
4年前、南アフリカワールドカップ直後の大宮アルディージャ戦の後、川島永嗣選手とチョン・テセ選手を送り出したセレモニーを思い出しますね。
・・・にしても、柿谷選手とフロンターレのアン・ビョンジュン選手、似てますなぁ。
セレッソといえば・・・ワールドカップ期間中に、クルピ監督の「伸ばす力」を読んだので紹介しておきます。

 ざっくりいうと、香川真司、柿谷曜一朗、清武弘嗣など歴代のセレッソの若手とどう育てて来たのかを語っている内容です。
 柿谷選手をネイマールと重ねて語っていたのが印象的だったかな。
ただブラジルではネイマールのことを「天才」と呼ばないこと。ブラジルで「天才」はペレだけで、ロナウドもロナウジーニョもネイマールも「クラッキ」と呼ぶこと。だから日本のメディアが、まだ10代だった彼を「ジーニアス」と呼んでいたことを厳しく批判してました。一理ありますな。
 他には、クルピ監督の生い立ちやキャリア、日本代表選手に関する評価も語っています。
大久保嘉人選手についても触れていました。いわく、「30歳を過ぎたが、まだまだ伸びる選手」で、キャラクターとしては「明るくて楽しい男で、少し癖はあるが、人間性はとても良い」とのこと。「少し癖はあるが、人間性はとても良い」って、褒めてはくれてますね・笑。
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