ここでしか読めない中村憲剛のミドルシュート論を書いてみた。







 どうも、いしかわごうです。

 今日も引き続き、ガンバ戦です。
5つのゴールが生まれたゲームでしたが、試合の流れ・・・というか、等々力の空気を変えたのは、やはり1-1で迎えた前半ロスタイムに炸裂した中村憲剛のミドルシュートだったと思います。力強く振り抜いた地をはう弾道が、ポストに当たってゴールネットを揺らしました。ゴラッソでしたねぇ。ケンゴラッソでした。


(※10月の月間ベストゴールにノミネートされております)

「自分からすればシュートコースになっていたし、(自分に)打たせても良いみたいな雰囲気になってた。いつもならパスを探すけど、DFと東口選手がかぶったことでコースが見えたので、あれは即決でした。あれで盛り上がったし、後半も入りやすくなった。その後、追いつかれてしまったことで、あのゴールもかすんでしまったけど(苦笑)」

 ミドルシュートに関していうと、構成を担当させてもらった彼の自著「サッカー脳を育む」で、そのポイントに「決断力」を挙げています。

 味方へのパスコースなど、他のプレーの選択肢がある場面でも、「ここはシュートしかない」と決断できている瞬間は、ほぼ入ると。サッカーをプレーする上で選択肢を増やすことは大事ですが、ミドルシュートに関しては、技術的なポイントだけではなく、いかに選択肢を無くした集中状態に持って行くかがカギだというわけです。詳しくは本を読んでみてください。

 調べていて興味深いと思ったのが、彼がミドルシュート、ロングシュート、直接フリーキックを決めた時間帯は、驚くほどロスタイムが多いんですよ。

 去年アウェイの柏戦で決めたスーパーミドルは前半ロスタイムでしたし、一昨年の鹿島戦でのフリーキックも前半ロスタイム、3年前の大宮戦で決めたスーパーボレーシュートも前半ロスタイムでした。ガンバ戦の後半ロスタイムにさよならフリーキックを決めたり、ヴェルディ戦でも試合終了間際にミドルシュートを叩き込んでます。

「中村憲剛あるある」なのかもしれませんが、「残り時間がないから、打つしかない」という状況が、彼の言う「決断力」を後押ししている要因になっているのかもしれません。

 ただ裏を返すと、中村憲剛選手はそういう状況にならない限り、それほど積極的にミドルシュートを打つタイプではありません。それにはちゃんと理由があります。最近、チームでミドルシュートが増えていることに関する話を聞くと、こんな見解を明かしてくれました。

「(ミドルを)打ってくれたほうが相手にとって楽なときもあるんだよね。ミドルを打たれるよりも、しつこく攻められたほうが嫌だなというときもある。ミドルを打ってプレーが終わることで、相手を楽にするかもしれないから」

 このへんの駆け引きは、少しレベルが高いですね。
「シュートで終われ」とは、サッカーでよく言われる言葉です。例えミドルシュートが枠を外れても、プレーが途切れることで悪いボールの奪われ方からカウンターを受けてしまうリスクが減り、自陣に戻って一回守備をセットできるメリットがあるからです。

 ただこれは守備側もしかりで、ボールをずっと保持されてしつこく崩されるよりも、遠目からシュートを打たせてプレーが切れることで、守備側もリスタートできることで楽になることもあるというわけです。Jリーグでも、遠目からのミドルシュートが入ることは、あまりありません。なので、守備側はコースを切りながらあえて打たせてしまうこともよくあるそうです。

 中村憲剛選手は、ミドルシュートを打たせたい相手守備陣の心理をわかっているから、ミドルを打てる状況でも、よりゴールを決める確率を高めるために、シュートではなくあえてパスを選択していることもある、というわけです。試合の流れであり、ミドルを打たないことで、相手の守備陣を楽にしないという駆け引きをしているという話です。

こぼれ話としては、守っているときに、相手にあえてミドルシュートを打たせたら、それが入ってしまった苦い経験もあるそうです。

「昔、バレーに打たれたんだよね、スーパーシュートを。タニ(谷口博之)と一緒に守ってて『打たせてもいいや』と思ったら、すげぇの決められた(笑)。9年前かな」

探してみたら、映像がありました。(※Jリーグの公式映像です)

 2006年のヴァンフォーレ甲府戦ですね。中村憲剛と谷口博之のダブルボランチによる対応ですが、バレーにすんごいの決められてます。これが、打たせて良いと思って打たせたら入ったミドルシュートの例だそうです。ちゃんと覚えているのがさすがですが。

 ちなみに今回のガンバ戦でのミドルシュートも「打たせて良い雰囲気になっていた」と言ってました。ガンバ守備陣としては、まさか入るとは思わずに打たせてしまったミドルシュートだったのかもしれません。

 思いのほか、中村憲剛のミドルシュート論を掘り下げて書いてしまいました。それなりに読み応えあったと思います。

ちなみにこれは以前書いた、山本真希のミドルシュート論です。こちらもマサキの感覚が出ていて、興味深いです。

ではでは。今日はこのへんで。

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最後まで読んでいただき、ありがとうございました。





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