今年初の麻生取材。

連日、麻生グラウンドに足を運んでいます。

チームとしての全体練習が始まるのは来週からなので、現在は一部の選手のみの合同トレーニングという位置づけです。だから来ているのも若手や新加入選手だけなのかと思っていたのですが、ベテランも普通にいました。
 風間監督も来ていますし、ミニゲームができるぐらいの人数が集まっているので、軽めではありますが練習メニューを組んで指示を出しています。見学している側としては、なんだかすでにシーズンが始まったかのような錯覚になります。
 中には憲剛選手のように、グラウンドの端でマイペースにコンディション調整している選手もいます。自主トレ期間ですですから、そこは完全に自由なんですけど、なんだか別メニューで調整しているように見えてしまって、ちょっと気の毒です。本人も少しだけ気にしておりました・笑。
 ボールメニューでは新加入選手に「止める、蹴る」のボール扱いを風間監督がレクチャーする場面も。トラップしたときのボールの置き方を実演しながら、「この半歩(ズラしてトラップするだけ)で違うし、世界が変わるんだぞ」などなど、フロンターレの就任当初によくあった光景ですね。ちょっと懐かしいです。
 さて。
明日は、ニッパツでマリノスのアンバサダーで将棋親善大使である波戸康広さんの引退試合。将棋つながりで、僕の本でも対談でお世話になっている波戸さんです。試合前には日本将棋連盟からの「将棋親善大使」委嘱式も行われますよ。
現役のプロ棋士も多数駆けつけるのですが、その顔ぶれが谷川浩司日本将棋連盟会長、森内俊之竜王・名人、深浦康市九段、野月浩貴七段、阿久津主税七段、広瀬章人七段、西尾明六段、佐藤和俊五段、藤田綾女流初段ですからね。将棋ファンが「マジか!」と驚くメンツです。
イベントなどの詳しい情報はこちら
中村俊輔選手、中澤佑二選手など現役Jリーガーはもちろん、フロンターレファンにはお馴染みの岡山一成選手の出場も決まったみたいです。チケットもあるようですし、時間がある方はぜひ足を運んでみてください。

「将棋でサッカーが面白くなる本」のこんな素敵な書評をいただきました。
将棋でサッカーが面白くなる本を読んだらプロレスも面白くなりました
まさか将棋とプロレスとは・・・!おかげで、僕もプロレスと田口選手に興味を持ってしまいました。こういう風にいろんな競技の輪が広がっていくと嬉しいですね。
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入門書ではありますが、読み物として面白く読めるようにも書いている本です。気になっている方は、一度ぜひ読んでみてください。どうぞお願いします。... 記事を読む

本日はフロンターレ事務所で取材。

 本日は、川崎フロンターレの麻生グラウンド・・・ではなく、事務所にお邪魔しました。

 とある企画の取材で、この3人による座談会を行ったのです。

 わかる人はわかると思いますが、川崎フロンターレのプロモーション部の歴史を知り尽くしている3人です。これまでのプロモーション企画のプロセスやイベントの舞台裏を伊藤宏樹選手とともにたっぷりと語り尽くしてもらいました。
 例えば、等々力最終戦で流した伊藤宏樹選手の引退VTR。このときに流れた曲は、平井堅さんの『僕は君に恋をする』でした。
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 まさにドンピシャの選曲でしたが、この曲にたどり着くまでは、すごく大変だったそうです。
選曲するのは天野部長で、いつものように自宅のお風呂に入りながら、ケータイを眺めながら選曲のアイディアを探していたところ(自宅のお風呂でケータイ片手に企画を練るのが天野部長の日課なのです)、あーでもない、こーでもないと悩んでいたら、のめり込み過ぎてお風呂で5時間も経っていたのだとか・笑。しかもその途中、あまりに喉が渇いてしまい、シャワーをひねって出てきた水を飲んでいたそうです・・・いや、夢中になり過ぎでしょっ!! 面白いなー。
 伊藤宏樹選手といえば、ファン感のステージ。
去年はブルーハーツを熱唱したわけですが、会場にはなんとクロマニョンズ(元ブルーハーツ)のマーシーが来場していて、誰もが驚きました。そのときの知られざる経緯なんかも3人がたっぷり明かしてくれています。
 いやはや、これまでメディアに出ていないエピソードをたっぷり聞かせてもらいました。もし、ここに同じぐらい歴史を知る憲剛選手が加わっていたら、さらに凄いことになっていたでしょうな。
おそらくこれが最初で最後。このトリオでの座談会はもう実現しないでしょう。貴重な場をセッティングしてくれたスタッフの方々に、本当に感謝です。それに応える為にも、良い原稿にしなければ!
掲載される媒体は時期が来たら発表しますので、どうぞお楽しみに。
この座談会にあたって、あらためて天野部長の本を読みましたけど、やっぱりこの本は面白いです。未読の方がいたら、ぜひ。
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中村憲剛選手の解説を「解説」してみました。

 シーズンオフの恒例になりつつあるBS1での中村憲剛選手によるプレミアリーグ解説。今回の担当試合は、マンチェスター・ユナイテッド対スウォンジー戦。香川選手が先発出場する試合となりました。

 面白かったですね。
まずその語りが、試合後のミックスゾーンや練習後の麻生でサッカーを振り返っている口調とほとんど同じで、そこになんだかニマニマしてしまいました。
 憲剛選手の解説を「解説」させてもらうと・笑、両チームのスタイルをしっかり踏まえながら、ピッチ上で起きた現象から戦術的な狙いを推測しつつ、その戦術を遂行する選手個人の判断や対応にも触れる、という流れですよね。もちろん、ゴール前の局面では技術的な解説もしっかりとしていました。例えば、後半に香川選手がゴール前での切り返しから相手GKを外してシュートを打ちながらも、戻ってきたDFにギリギリでブロックされてしまった場面のスローリプレイでは、「ここですね」と、そのDFがどの瞬間に視界に入ってきたのかまで丁寧に触れていました。こういった言葉がよどみなく出て来るので、聞いていて心地よいのです。
 これだけも解説者としてはすでに十分合格なのですが、それでいてスウォンジーの後ろの組み立てに触れて、「(守備ブロックの)間に入る味方にパスを入れられるセンターバックと、そこで受けられるサイドハーフがいると相手は面倒くさいんですよ」とか、現役選手らしいプレー中の選手の心理状態を代弁するコメントをしっかり差し込んでくるのもよかったと思いますね。「やってる選手ってそう感じるんだ」と色々と勉強になります。
・・・というか、普通に名解説者じゃないですか・笑。
 あと面白かったのが、ちょいちょい「風間語」を出していたこと。スウォンジーがボールポゼッションの高いチームスタイルですので、ボールの動かし方と受け方に触れながら、「(味方が)隠れないんですよ」と言ったり、香川選手の相手の背後を突いたプレーを「背中を取る」と当たり前のように使用していたので、そこでまたニタニタしてしまいました。
 とまぁ、こんな感じで解説を堪能させてもらいました。
記者の間でも中村憲剛選手はメディア受けが良い選手として知られているのですが、その感覚は、読者の方になかなか伝わらない部分があります。でも普段の取材でもあんな感じでわかりやくサッカーを説明してくれるので、そりゃ、記者はみんなコメントを聞きたくなりますよね。それがよくわかる解説ぶりだったのではないでしょうか。
 ちなみに僕の「将棋でサッカーが面白くなる本」
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 中村憲剛選手と渡辺明二冠の対談では「解説業」に関する話題も出ていたんです。残念ながら、ページ数の関係でカットしてしまいましたが、せっかくなのでここで紹介してみたいと思います(※本を持っている方に説明しておくと、ウィニングイレブンの話題でサッカーの陣形と将棋の戦法の共通点に関して触れてるくだりでこの話題になりました)。

渡辺「うまい選手は選択肢がいくつもあるんですよね。そういうのはサッカーの中継で解説を聞いていてもわかります
中村「僕もたまに解説することがあるんですよ
渡辺「えっ!そうなんですか?
中村「シーズンオフですけど、プレミアリーグの解説を。修行ですね。サッカーにそこまで詳しくない人に向けて解説するという作業は簡単ではないですから
渡辺「将棋の解説の場合は、下の方のレベルに合わせてますね。(僕を見て)いしかわさんとかは強い人だと思いますが、そうではなくて、ルールは知ってますよね、ぐらいで話します。サッカーはお茶の間でルールに詳しくないお母さんとかも見ていると思うので、どこをどう話すか難しいと思います
中村「解説することでそこで何か発見とか刺激を受けることはありますか。解説して終わりなのか、自分のものになる何かがあるのか?
渡辺「例えば羽生さんだと、もう何十局も対戦していますから、そこであらためて何かがあるわけでもないですね。ただあまり見ていない人や指していない人の将棋のときはありますね
中村「それを自分の中に蓄積されたりはされるんですか?
渡辺「その人と対局するときのデータとしては有利になるかもしれませんね

 こんな感じで話してくれてました。
ちなみに渡辺明2冠は、マンチェスターユナイテッドのファンであることを公言しています。このブログでも何度か紹介していますが、去年の王将就任時の副賞としてリクエストしたアイテムが、マンチェスターユナイテッドのユニフォームですからね。しかも第62期王将のネーム入り。
王将就位式。
・・・こんな記事も
羽生について語るときに渡辺の語ること|いささか私的すぎる取材後記
マンチェスター・ユナイテッドのエンブレムが左胸に入ったウィンドブレーカーを羽織って、渡辺明は改札口に現れた。
渡辺さんならきっと憲剛選手のこの解説試合を観てくれるはず!…と思ったけど、昨日と今日は羽生さんとのまさにその王将戦の真っ最中でしたね。さすがに録画してはいないかな。
 本の中では、将棋の「桂馬」の動かし方や働きを、この試合に先発出場した香川真司選手の動きになぞられて紹介していますよ。

将棋初心者のサッカーファンに向けて書いてますし、中村憲剛選手と渡辺明二冠との対談も面白いと評判です。ぜひ読んでみてください。
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新体制発表会取材&今季の陣容を読み解く。

昨日は川崎フロンターレの新体制発表会の取材に。

 
 今年はミューザ川崎で開催されました。いつもながらの豪華な発表会。新加入選手と風間監督がサンバの踊りに乗って入場してきたのはさすがに驚きましたが。それで緊張もほぐれたのかと思いきや、今年の選手挨拶はやや真面目でしたね。それだけにニコ生解説で、会場にも登場した新井章太選手がやたらと目立っていたような・・・笑。
記者控え室や会場内では、顔を合わせた記者仲間やクラブスタッフさんと新年の挨拶。会場内では「本読みましたよー」と声をかけてくれるサポーターの方もいて感謝です。みなさん、3時間の長丁場、お疲れさまでした。

 せっかくなので、今季のチーム陣容の感想でも。
この時期はどうしても新加入選手ばかりに目がいきがちですが、今季のフロンターレで特筆すべきは、むしろ契約満了選手以外で移籍していった選手が非常に少ないことだと思っています。
 期限付き移籍していた選手を除くと、ケガによる長期離脱で出場機会が得られなかった薗田選手が札幌に移籍、第3GKの高木駿選手がジェフに期限付き移籍したぐらいですからね。レナトもジェシも残留しました。日本人選手の主力はもちろん、準レギュラークラスがこれだけ流出しないのもなかなか珍しいです。
 もちろんこれは狙いがあってのことで、今年の風間監督のチーム作りとしては、計算できる現有戦力を中心にしながら、新加入選手を上積みしていく・・・というイメージなのでしょう。
 そしてこれは去年の反省を踏まえての考えだと思います。
残念ながら去年はシーズン序盤に低迷したわけですが、その原因として、新しく入った選手の適正ポジションや組み合わせを試していて、それがチームとしてうまく機能しなかった、という趣旨のことを風間監督は言っていました。だからなのか、去年の解散式後の囲み取材では今オフの補強についてこう話していたんです。
「もちろん方針はあるけど、実際に呼んでみないとウチはわからないからね。真希(山本選手)みたいなこともあるし、パトリックのようなこともある」
 前者がフィットして機能したタイプで、後者がうまくフイットし切れなかったタイプです。昨年加入した選手で言えば、大久保嘉人選手は完全に当たったタイプですね。ただこのチームにおいて「呼んでみないとわからない」というのは風間監督の言う通りでもあります。それを「ギャンブル」と表現するとかなり乱暴な言い方になってしまいますが、選手を多く補強すればするほど、彼らの見極めやチームの熟成にそれだけの期間を擁する可能性が高まるのは確かとも言えるかもしれません。特に今年はACLもありますし、ワールドカップで2ヶ月間中断しますから、例年以上に変則的かつ過密スケジュールです。去年の過ちを繰り返さない為にも、選手の出入りを最小限にとどめたのではないかと思ってます。
 ただいくらチームが選手を引き止めても、選手が移籍するのがサッカー界の常です。それでも、みながこれだけ揃いも揃って残留を果たしたわけです。
 そういえば、新加入組のデカモリシこと森島選手は、オファーを受けたときに、相談した大久保選手から「来いよ。すごく雰囲気良いよ」と言われたと明かしていました。選手達もこのサッカーにそれだけの自信や愛着を持っている証拠なのかもしれません。いやホント、選手がこれだけ”出て行かない現象”ってのは珍しいと思いますよ、はい。
 来週からは若手の自主トレも麻生で始まります。
今年は宮崎キャンプの取材も行きますし、チームがどういう準備をするのか。楽しみにしたいと思います。... 記事を読む

中村さんと伊藤さん。

 週末は新体制発表会なので、ブログでも川崎フロンターレの話題を。
とはいってもネタもないので、最近、フットボールチャンネルで掲載してもらったフロンターレ関係の原稿を紹介しておきます。
中村憲剛の知られざるシーズンオフの活動
昨年末に川崎市内の児童養護施設を訪れたときのレポートです。短いものですが、こういう活動を継続していくのは素晴らしいと思います。メディアとしても、積極的に発信して広く知ってもらいたいですし。
 読書家の憲剛選手らしく、絵本と本をプレゼントしていました。憲剛選手自身は大人になってからたくさん本を読み始めたようで、小さい頃からもっと本を読んでおけばよかったと少し後悔しているのだとか。
 そういえば、僕も小さい頃は漫画ばっかり読んでて全然読書しなかったですね。両親からは、「本を読まないから国語の成績がよくないんだよ」とよく怒られてましたわ。
 そんな僕がライター業で生計をたてて、本も出版してしまうのだから、世の中わからないですね(って、何の話だよ)。
 年末にはこの原稿も。
「必要だから使っただけ」。引退の伊藤に風間監督がこれ以上ない賛辞
昨年限りで現役引退を発表した伊藤宏樹選手の記事です。鳥栖戦のミックスゾーンでのこと、その翌々日の解散式でのエピソードなどをまとめました。大久保選手が得点王に輝いたこともそうですが、風間監督の「ベテラン」に対するスタンスがよくわかるコメントだと思います。
 決勝まで勝ち上がって有終の美を飾ってもらい、ガッツリとした原稿にしたかったんですけど、残念。やっぱりシーズンの終わりが天皇杯というのは、なかなか難しいですね。
なお解散式の後、将棋好きの伊藤選手に「将棋でサッカーが面白くなる本」を渡したところ、思いのほか喜んでくれました。宏樹選手が伝導師になってくれれば、フロンターレサポーターの将棋ファンもかなり増えるんじゃないかしら。
 これもブログでは紹介していなかったですね。
中村憲剛、復活したきっかけは彼にとって一番のサポーターからの一言
 もともとはナビスコカップで優勝したときのために用意しておいた原稿でもありました。残念ながら準決勝で負けてしまったので、リーグ最終節である横浜F・マリノス戦前のタイミングで掲載することに。憲剛選手が奥様に関するエピソードを明かしてくれるのは珍しいと思いますし、多くの反響をいただきました。
・・・とまぁ、憲剛選手と伊藤選手の記事を紹介したわけですが、フロンターレにおける中村憲剛選手と伊藤宏樹選手の関係は、スラムダンクで言うと、湘北におけるゴリと木暮くんに似ていると思いました。ゴリを支える木暮くんがいてこその湘北だったと思いますし、木暮くんタイプの伊藤選手がいてこその憲剛選手だったのかもしれませんね。
ちなみにゴリの名前は赤木剛憲。憲剛選手と文字が逆です・笑。
とまぁ、スラムダンクネタがよくわからない人もいるかもしれませんが、この漫画は絶対に鵜読むべきです。ぜったいにぃぃいいーーー!
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ベアスタ取材〜今季の全日程が終了。

少し時間が経ってしまいましたが、天皇杯鳥栖戦について。

 残念ながら、伊藤宏樹選手の最後を飾ることができませんでした。
負けは負けですし、鳥栖が徹底してきた戦い方を3試合やって一度も打ち破れなかったのは、実力と受け止めるしかありません。来年に向けたチームとしての宿題をもらったと思い、来年も練習に励んでもらうと願います。
 試合前後のことを振り返りましょうか。
まず触れなくてはいけないのは、直前に続出した離脱者のこと。
 それまでの2週間のトレーニングは比較的順調でした。主力で離脱していたのも小宮山選手ぐらいですかね。FC東京との練習試合で負傷した田中裕介選手も戻ってきていました。
 ところが試合二日前の紅白戦でアクシデント発生。
レナト、登里選手、小林選手、實藤選手と・・・このタイミングで主力選手が次々と練習から離脱。ベティコーチを入れても紅白戦の人数が足りなくなり、急遽10対10で行う異常事態に。練習後の風間監督も「ボーリングのピンのように倒れてしまった」と困惑しておりました。
 そして試合当日。
試合前のウォーミングアップ中に大島僚太選手が負傷を訴えて出場が不可能に。急遽アランが先発することに。ここまでの負のスパイラルには、さすがに動揺しました。
 というのも、試合前日のトレーニングでは、ガッチリと構えて粘り強く守る鳥栖の守備をどう攻略すべきか、風間監督がハーフコートの戦術練習でこのポイントを指導していました。スペースがないほど人が密集している陣形を崩す為に、中盤の選手がボールを持ったときに、どんなイメージを共有すべきなのか。パスを出すときの角度の付け方、前線の選手が連動して飛び出していくタイミングの掴み方などを確認していました。レナトの縦の突破はなくなりますが、中盤の二列目は森谷賢太郎選手、中村憲剛選手、大島僚太選手という技巧派の選手が並んでいて、この3人によるパスワークで鳥栖の守備陣をこじ開けていくのか。これはこれでなかなか面白そうな感触だったのです。
 ところが、ここにきてまたスタイルの違うアランが右で先発となったわけですから、この悪循環はさすがに厳しいな・・・と覚悟しました。
 実際、前半は非常に悪かったですね。
半分近く選手が入れ替わったことで、味方との呼吸を確かめるような入り方になりましたし、さらにベアスタの芝の状態と天皇杯ボールとのフィーリングも、思った以上のストレスになっていたようでパススピードが落ちてしまい、人数をかけて勢い良く奪いに来る鳥栖の出足にも掴まってしまいます。後ろが余裕を持ってゲームを作ることが出来なければ、中盤や前の選手も良い形でボールが入りません。大久保選手といえども、センターバックとボランチに囲まれている状態でボールをもらっては、容易にはキープできません。
 もっとも、良くないときは良くないなりに出来るサッカーをしなければならないのですが、スタメンの半分が入れ替わる緊急事態では打開策もなかなか見いだせず。ピッチ上の意思統一も十分にできていなかったようです。それでも守無失点でしのぎながらも、流れを待つべく後半に。
 後半はそれなりに立て直してリズムを掴んだと思うのですが、それでも決定打が出せません。流れを変えようにも、途中交替のカードで使いたい森谷選手、アランは先発組、小林選手は離脱中という台所事情ですから、矢島選手を投入するのが精一杯でした。憲剛選手をボランチ、山本選手を右サイドに転換して、少しずつチャンスを掴み始めるものの、結局、ゴールネットは揺らせず。
 これがリーグ戦ならば、90分を通じてスコアレスドローです。アウェイで勝ち点1の獲得ということでそれほど悪くない結果だったのですが、ノックアウト方式のカップ戦ですから、120分の戦いに。失点後はジェシを前線に上げるパワープレーを選択しますが、逆にカウンターを浴びて2失点目。これで勝負ありでした。
 思えば、今シーズンのスタートは、柏レイソルにカウンターを浴びて沈んで始まったシーズンでした。そしてシーズン最終戦となった天皇杯・鳥栖戦も、相手のカウンター2発に沈みました。カウンターで始まり、カウンターで終わるという結果で2013年は幕を閉じました。

 試合後のミックスゾーンに現れた伊藤宏樹選手選手。
涙で目が赤くなっていました。少しだけ話しましたが、聞くとプロ1年目のとき、初めてのアウェイがこのスタジアムだったそうです。13年の間に、当時J2だった両クラブは随分と成長しましたし、プロ生活13年の集大成もこの場所になったことも、もしかしたら、何かの縁だったのかもしれません。コンディションは良くなかったはずなのですが、ノボリの故障により急遽出番が回ってきて、延長戦前半終了までプレーしました。「最後はもう身体がボロボロでしたよ」とポツリ。本当にお疲れ様でした。
<おまけ>
 取材後、一通りの作業を終えてからトボトボと鳥栖駅に。そこから電車で博多駅に。夜は博多在住で、ナリキン!の漫画家・鈴木大四郎先生とゴハンを食べました。「温かいものが食べたいっす」という僕のリクエストに応えて、フグ鍋屋を予約してくれました。美味しかったー。
カバーイラストを描いてくれた僕の著書「将棋でサッカーが面白くなる本」と一緒に記念撮影する鈴木先生。

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ACL出場権獲得しました。

 Jリーグも終わり、川崎フロンターレはリーグ戦3位という結果でフィニッシュ。
優勝には届きませんでしたが、開幕戦終了時の順位は最下位でしたし、序盤に続いたあの低迷期を思えば、あれからよく巻き返したものです。シーズン前に掲げていたACL出場権獲得という目標もしっかりと達成しました。
 チームとしての進化を果たしながら、それが結果にもあらわれたのは選手にとっても大きな自信になると思います。トラップした際のボールの置き場所、パスのスピード、味方が顔を出す動き、そのときの距離感・・・こういった技術がグループとしてうまく噛み合うことで、風間監督が掲げているボールを失わないサッカーが体現できています。
 シーズン序盤はそこが噛み合わず、さらに結果もついてこなかった為に周囲の雑音もかなり聞こえてきましたが、日々のトレーニングを取材している限り、僕自身はそれほど心配をしていませんでした。もちろん、強化部がどれだけチームの低迷を我慢できるかはわかりませんでしたし、そういう意味では、サポーターを含めて、みなが我慢したことで手に入れた結果だったかもしれませんね。そこそこのものならば、お手軽に、インスタントに作り上げることが出来るかもしれませんが、本当に良いものを作り上げるのには、ある程度のコストと時間がかかる・・・そういう風にできているのかもしれません。これはサッカーチームに限った話ではないですが。
 観ていて感じるのが、前線と中盤だけではなく、後ろのボールの動かし方も巧くなっていることですね。マリノス戦では、後ろがボールをうまく動かすことで、プレッシングをかけ続けてきた前線の選手を守備で消耗させるような働きもしていました。
 あとはエリア内の崩し方。これも非常に多彩になってきています。最終節の決勝点は憲剛選手のボール奪取から始まったカウンターでしたが、あの流れるようなパスワーク・・・・全て動き出している味方の「足元」につけているんですよね。それであのスピードですから。なによりあのパスワークで、相手の守備陣を完全に振り回しました。
 大久保選手があの位置からカットインしてシュートするのは得意の形です。それに素早く反応していたのが大島選手。「ニアに飛ぶと感じたし、ヨシトさんのシュートはキャッチできないと思った」とのことでした。素晴らしい嗅覚ですね。相手の守備陣は大島選手だけに集中してしまい、走り込んでいたレナトはほとんどフリーでゴールネットを揺らすことができました。
 さらにこの場面をよく見ていると、ファーサイド側には田中裕介選手がちゃんと詰めていました。自陣で憲剛選手がボールを奪取した場面ではまだ最終ラインにいたのに、あの場面ではすでにゴール前まで駆け上がっていたというね・・・たいしたもんです。
 そして守備陣の奮闘。実は11月に入ってから、清水、山形(天皇杯)、浦和、大分、横浜FMの5試合で失点は浦和戦の1失点だけ。得点王・大久保嘉人選手、アタッカー・レナト、中村憲剛選手がいるので攻撃陣が注目されますが、後ろの安定も3位に浮上した要因ですよね。特にジェシと井川祐輔選手が戻ってきてからは、ここもストロングポイントになってきました。
 まだ天皇杯が残っていますから、2013年の風間フロンターレはもう少し観ることができます。楽しみですね。
・・・実は来週20日にこんな本が出ます。

 いしかわごうの初著作です。
「将棋でサッカーが面白くなる本」(朝日新聞出版)。詳細は近日中にまた掲載しますが、中村憲剛選手と渡辺明二冠とのスペシャル対談もありますよー。よろしくお願いします。... 記事を読む

伊藤宏樹とパオロ・マルディーニ。

 こんばんは。
 12月に入り別れの時期がやってきましたね。
川崎フロンターレも今季の契約満了選手を発表しています。昨日は、伊藤宏樹選手が今季限りで現役を引退することを発表しました。
 2001年から川崎フロンターレ一筋でプレー。
J2リーグで戦い、等々力の観客もまだ3000人ぐらいしかいなかった時代を肌で知っている最古参のプレイヤーです。「あのときの目標は、J2優勝と等々力を満員にすることだったからね」と、当時を懐かしんでおりました。いわゆる「どん底」を体験しながら、J2優勝、J1昇格、ACL出場、J1優勝争いなど、クラブが急激に成長し続けた時期も経験しています。
 ただしタイトル獲得はいまだありません。カップ戦とリーグ戦、あわせると準優勝が5回・・・金メダルは一度もありません。銀メダル5枚なら金メダル1枚という、おもちゃのカンヅメのエンゼル的な扱いをして欲しいぐらいですね、えぇ。
 プレイヤーとしては、常に冷戦沈着で、クレバーかつクリーンな守備をするディフェンダーでした。親友でもある憲剛選手は「日本で一番綺麗にボールを取るディフェンダーだといまだに思っている」と言っていました。
パオロ・マルディーニ好きを公言しているように、ファウルをせずにボールを奪う技術に長けている優雅なディフェンダーでしたね。なお昨日、石崎監督(プロ1年目の監督)に報告の電話したときは、「そういう守備の基礎を教えたのは全部ワシだと言っておけ」と言われたそうですが・笑。
 
 将来的には地元のJ2クラブである愛媛FCでプレーするというプランも昔は持っていたようで、「フロンターレみたいに愛媛を盛り上げようかな、とも思っていました」と明かしてくれました。ただ彼は、フロンターレの選手としてスパイクを脱ぐ決断をしました。そこらへんの美学も、ACミラン一筋を貫いたパオロ・マルディーニの影響も少なからずあったと話してくれました。
あまり本音を言わず、どちらかというとはぐらかすタイプでしたが・笑、それでもあの空気は取材していて楽しかったですね。
・・とまぁ、かき出すと切りがないので、このへんでやめておきます。まだ天皇杯もありますからね。
「天皇杯の優勝カップをケンゴから奪い取って掲げるイメージはできている」とのことでした。
天皇杯の決勝は1月1日です。1+1=2になります。最後に天皇杯を掲げる背番号2番の姿が見たいですね。
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