少し時間が経ってしまいましたが、天皇杯鳥栖戦について。
残念ながら、伊藤宏樹選手の最後を飾ることができませんでした。
負けは負けですし、鳥栖が徹底してきた戦い方を3試合やって一度も打ち破れなかったのは、実力と受け止めるしかありません。来年に向けたチームとしての宿題をもらったと思い、来年も練習に励んでもらうと願います。
試合前後のことを振り返りましょうか。
まず触れなくてはいけないのは、直前に続出した離脱者のこと。
それまでの2週間のトレーニングは比較的順調でした。主力で離脱していたのも小宮山選手ぐらいですかね。FC東京との練習試合で負傷した田中裕介選手も戻ってきていました。
ところが試合二日前の紅白戦でアクシデント発生。
レナト、登里選手、小林選手、實藤選手と・・・このタイミングで主力選手が次々と練習から離脱。ベティコーチを入れても紅白戦の人数が足りなくなり、急遽10対10で行う異常事態に。練習後の風間監督も「ボーリングのピンのように倒れてしまった」と困惑しておりました。
そして試合当日。
試合前のウォーミングアップ中に大島僚太選手が負傷を訴えて出場が不可能に。急遽アランが先発することに。ここまでの負のスパイラルには、さすがに動揺しました。
というのも、試合前日のトレーニングでは、ガッチリと構えて粘り強く守る鳥栖の守備をどう攻略すべきか、風間監督がハーフコートの戦術練習でこのポイントを指導していました。スペースがないほど人が密集している陣形を崩す為に、中盤の選手がボールを持ったときに、どんなイメージを共有すべきなのか。パスを出すときの角度の付け方、前線の選手が連動して飛び出していくタイミングの掴み方などを確認していました。レナトの縦の突破はなくなりますが、中盤の二列目は森谷賢太郎選手、中村憲剛選手、大島僚太選手という技巧派の選手が並んでいて、この3人によるパスワークで鳥栖の守備陣をこじ開けていくのか。これはこれでなかなか面白そうな感触だったのです。
ところが、ここにきてまたスタイルの違うアランが右で先発となったわけですから、この悪循環はさすがに厳しいな・・・と覚悟しました。
実際、前半は非常に悪かったですね。
半分近く選手が入れ替わったことで、味方との呼吸を確かめるような入り方になりましたし、さらにベアスタの芝の状態と天皇杯ボールとのフィーリングも、思った以上のストレスになっていたようでパススピードが落ちてしまい、人数をかけて勢い良く奪いに来る鳥栖の出足にも掴まってしまいます。後ろが余裕を持ってゲームを作ることが出来なければ、中盤や前の選手も良い形でボールが入りません。大久保選手といえども、センターバックとボランチに囲まれている状態でボールをもらっては、容易にはキープできません。
もっとも、良くないときは良くないなりに出来るサッカーをしなければならないのですが、スタメンの半分が入れ替わる緊急事態では打開策もなかなか見いだせず。ピッチ上の意思統一も十分にできていなかったようです。それでも守無失点でしのぎながらも、流れを待つべく後半に。
後半はそれなりに立て直してリズムを掴んだと思うのですが、それでも決定打が出せません。流れを変えようにも、途中交替のカードで使いたい森谷選手、アランは先発組、小林選手は離脱中という台所事情ですから、矢島選手を投入するのが精一杯でした。憲剛選手をボランチ、山本選手を右サイドに転換して、少しずつチャンスを掴み始めるものの、結局、ゴールネットは揺らせず。
これがリーグ戦ならば、90分を通じてスコアレスドローです。アウェイで勝ち点1の獲得ということでそれほど悪くない結果だったのですが、ノックアウト方式のカップ戦ですから、120分の戦いに。失点後はジェシを前線に上げるパワープレーを選択しますが、逆にカウンターを浴びて2失点目。これで勝負ありでした。
思えば、今シーズンのスタートは、柏レイソルにカウンターを浴びて沈んで始まったシーズンでした。そしてシーズン最終戦となった天皇杯・鳥栖戦も、相手のカウンター2発に沈みました。カウンターで始まり、カウンターで終わるという結果で2013年は幕を閉じました。
試合後のミックスゾーンに現れた伊藤宏樹選手選手。
涙で目が赤くなっていました。少しだけ話しましたが、聞くとプロ1年目のとき、初めてのアウェイがこのスタジアムだったそうです。13年の間に、当時J2だった両クラブは随分と成長しましたし、プロ生活13年の集大成もこの場所になったことも、もしかしたら、何かの縁だったのかもしれません。コンディションは良くなかったはずなのですが、ノボリの故障により急遽出番が回ってきて、延長戦前半終了までプレーしました。「最後はもう身体がボロボロでしたよ」とポツリ。本当にお疲れ様でした。
<おまけ>
取材後、一通りの作業を終えてからトボトボと鳥栖駅に。そこから電車で博多駅に。夜は博多在住で、ナリキン!の漫画家・鈴木大四郎先生とゴハンを食べました。「温かいものが食べたいっす」という僕のリクエストに応えて、フグ鍋屋を予約してくれました。美味しかったー。
カバーイラストを描いてくれた僕の著書「将棋でサッカーが面白くなる本」と一緒に記念撮影する鈴木先生。
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