横浜FM戦レビュー:ミルクがこぼれても、注ぎ直せばいいじゃない。







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等々力競技場での横浜F・マリノス戦は3-2で勝利。

「こぼれたミルクは元に戻らない」

 イビチャ・オシム氏が使っていた言葉です。
ことわざでいう「覆水盆に返らず」。フロンターレはロスタイムにミルクをぶちまけてしまいましたが、そこで泣きわめくのではなく、最後の力を振り絞ってストライカーがミルクを注ぎ直す・・・そんな感じでした。小林悠様様、でしたな。

 この試合を語る上で外せないのが、9分もの長さになったロスタイムです。
試合後半、GK新井章太選手がハイボール対応で負傷してしまい、治療時間を要してしまったのです。新井選手は一度プレーを続けるも、結局、脳震盪(の疑い)で続行不可能になりました。

 そこで出番が巡ってきたのは、第3GKといえる高木駿選手。
彼にとっては、川崎フロンターレでの初出場。ピッチに入り、ゴールマウスに向かう時に小林悠選手と中村憲剛選手が駆け寄って檄を飛ばします。

「お前はしっかり準備してきたんだから大丈夫だ!」

 高木選手は、そんな言葉を言ってもらったそうです。
ロスタイムに2失点してしまいましたが、ハイボールの処理は落ち着いており、自慢の正確なパントキックでエウシーニョのカウンターにつなげるなど、自分の持ち味は十分に出していたと思います。

 試合後、小林悠選手に高木選手のプレーぶりについて聞いてみました。

「(高木に)不安はなかったです。章太もそうだけど、安藤も含めて本当にうまくなっている。新吉さんがGKだけ2部練習したり、アイツらは頑張っていたので信じてました」

 と、小林選手は高木駿選手だけではなく、今シーズンのGK陣に対する強い信頼を口にしていました。
普段、麻生の練習まではなかなか見学できない人がほとんどだと思います。午前練習を終えて、選手の取材を終えて帰るときはだいたい午後3時ぐらいなんですけど、グラウンドではGK陣だけが午後練習している光景も珍しくありません。

 今シーズンのゴールキーパー争いは、ソンリョンが絶対的とも言える正GKの序列です。
2番手の新井章太選手だけではなく、3番手を争う高木駿選手と安藤駿介選手は、いつ試合で出番があるのかはまったくわかりません。今週の練習でアピールしたから先発できる、というポジションではありません。

 でもそんな先の見えない状態でも、自分を高め続けることができるか。そんな姿勢が控えGKには求められるわけです。とんでもない忍耐力が必要ですが、その姿勢をフィールドプレイヤーであるチームメートたちもちゃんと見てきているのです。それだけに、最後の最後に高木駿選手が報われて本当に良かったと思います。

憲剛選手はよく「総力戦」と言います。でも今年に関しては、第2GKだけではなく、普通に考えたら出番がないはずの第3&第4GKである高木駿選手も安藤駿介選手にもチャンスが巡ってきて、しかも彼らが勝利に貢献しました。本当にチーム全員で戦っているシーズンになっているのだと感じますね。

・・・とまぁ、長々と書いてしまいました。
ピッチでの勝負のポイントになった部分は、いつものようにごうnoteで公開してます。今回のレビューでは、ほぼ完璧にコントロールできていた90分間の勝因ポイントを分析しつつ、9分のロスタイムに露呈したチームが向き合うべき「ゲームの終わらせ方」という課題についても触れております。
 
「距離感が遠いというのは感じていました」(小林悠)。劇的すぎた決勝弾で忘れがちな「小林悠のワントップは機能したのかどうか問題」を検証してみる。/リーグ2nd第13節・横浜F・マリノス戦:3-2
ラインナップはこちらです。

1.「最初に一回抜かれてしまったので、そこでボールを持つ前に距離を寄せようと思いました」。両サイドアタッカーをうまく封じ込んだ車屋紳太郎と田坂祐介の臨機応変な対応力と、巧妙だった川崎フロンターレ守備陣による3バックと4バックの使い分け。

2.「距離感が遠いというのは感じていました」(小林悠)。劇的すぎた決勝弾で忘れがちな「小林悠のワントップは機能したのかどうか問題」を検証してみる。

3.なぜ三好康児はあれだけ前を向いて仕掛けられたのか?

4.ミスをして自分を落ち着かせる!?J1デビュー戦となったGK高木駿の、普通じゃないメンタリティーとは?

5.2nd第7節のヴァンフォーレ甲府戦以来、完封試合なし。チームが向き合わなくてはいけない「ゲームの終わらせ方」という課題。

 以上、5つのポイント。冒頭の文章も含めると全部で約8000文字です。劇的な勝利ではありましたが、ピッチ上の因果関係を冷静に分析しております。読み応えはあると思いますので、よろしくどうぞ。

あと高木駿選手が活躍した姿は、能田先生の「サッカーの憂鬱」に収録されている「第3ゴールキーパー」のエピソードを思い出しますね。Kindle版でぜひ。





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