等々力仙台戦取材。なぜ縦ではなく、横を選択したのか。大久保嘉人の得点シーンで、あえて田坂祐介の判断と動きに注目してみた。

どうも、いしかわごうです。

　最終節・ベガルタ仙台戦は1-0で勝利。

ヨシメーターは「156」になりました。

　まず触れたいのが、1-0というスコアについて。

　川崎フロンターレがウノゼロで勝ち切るのは珍しいです。どのぐらい珍しいかというと、リーグ戦での1-0勝利を調べてみたら、5月10日のファーストステージの第11節・アウェイ名古屋戦以来でした。「新井章太選手がデビュー２戦目でプロ初勝利をあげた試合」といえば覚えている方も多いかもしれません。実に半年ぶりです。まぁ、先制点を取ったら、そのリードを守りきるのではなくて、２点目を奪いに行くというスタンスでサッカーをしているチームですからね。

　等々力で今年初のウノゼロに、「最終節で１−０なんてウチらしくないよね」と苦笑いしていたのが試合後の中村憲剛選手。変な言い方をすれば、シーズン集大成を見せる試合で、今シーズンを象徴しない試合をしたわけです。

　でも、彼個人としても「この勝ち方が来季につながる部分」だと前向きに捉えていたような印象です。というのも、その後に「勝ち切るという経験の積み重ねは大事だから」と強調していたからです。

「こういうサッカーだったり、自分たちのスタイルは相手にも認識されているし、対策も立てられている。でもウチはそれを上回ることを追求していくチーム。だから、あとは本当に勝ち切る力の部分。上位陣との差はそこだと思っているから。例えば、今日のように守る時間は守る。そういうメリハリを、ピッチの中にいる選手がつけていかないといけないと思っている」

　もしかしたら、今年のフロンターレに足りなかったモノを、この試合で来年のチームの引き出しに入れることができたかもしれません。今シーズンを象徴しない試合を見せた意味は、来年につながっていくと思いたいですね。

　さて。
試合内容に関して言えば、やや膠着していた前半と比べると、後半に巻き返した印象です。中でも後半の頭から入った田坂祐介選手の仕事ぶりが際立ちました。

具体的に言うと、幅を使ったサイドからの仕掛けと、相手から強いプレッシャーを受けていたダブルボランチに対するサポート、そしてバイタルエリアで受けて前を向く意識などの３点です。前半のチームに物足りなかった要素を一人で改善してくれました。このへんの仕事をスンナリできる賢さはさすがです。サッカーをよくわかってますね。

　そして最大の見せ場がこの日の得点場面です。田坂選手がドリブルで運んで、パスに受けたエウシーニョ、そして大久保嘉人選手がズドン。３年連続得点王を決定付けた一撃です。

　ただあそこの場面を巻き戻すと、ボールを運んでいた田坂選手に対して、前にいた大久保嘉人選手はまず両手を出して「よこせ！」と田坂選手にパスを要求してます。田坂選手は縦パスを出せていたと思いますが、大久保選手に出さずに横のエウシーニョを使っています。

　なぜなのか。
縦ではなく、横を選択したのか。このときの判断について田坂選手本人に聞いてみると、こう話してしてくれました。

「ちょっと嘉人さんが（相手を）背負ってしまうかなと思ったんですよ。エウソンに出して・・・そこからエウソンが何するかはわからないですけど、たぶん嘉人さんに出すと思ってたし、そこで自分が前に出て行くというのもありましたから。結果としてヨシトさんが前を向いてシュートを決めてくれました」

　横を使ったことが、大久保選手が相手ディフェンダーのマークを外させてるジャブになっていたわけですね。そしてこの大久保選手のシュート場面の際、田坂選手の動きを見ていると、エウシーニョとのワンツーや、シュートのこぼれ球に詰められるように、しっかりとゴールに向かって動き出す準備をしていたのもわかりますね。

　大久保嘉人の得点シーンで、あえて田坂祐介の判断と動きに注目してみました・笑。

３年連続得点王を獲得した大久保嘉人選手に関しては、原稿の依頼を受けているので、そちらで全て書きます。少し先の掲載になりますが、ロングインタビューもするので良いものを書きたいと思ってます。

　試合後、「３年連続得点王だよ？そんな記事を書けるチャンスはなかなかないよ？」と冗談めかしてこちらに話していた中村憲剛選手。「でもそういう選手がいるチームが優勝できないのは悔しい。チームとしてのタイトルを彼に取らしたいよ」とも漏らしてました。