吉田豪さんの「聞き出す力」を読んだ。


 最近読んだ本。
吉田豪さんの新刊「聞き出す力」。


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 吉田さんといえば、プロインタビュアーとして情熱大陸にも登場したお方です。実は2年前の大晦日にオンエアされた「情熱大陸」を、僕は今でもたまに見直すほどです。吉田さんのインタビュー技術を映像でじっくりと分析できる貴重な回でした。

 自分もインタビューを生業としている人間ですが、同業者のインタビューテクニックって、実のところはよくわからないんですよ。というのも、僕らが目にする原稿というのは、密室で行われたインタビューを終えて、文字を起こして、編集加工がされたものなわけです。だからかりにものすごく面白いインタビュー原稿でも、その質問を、どんな流れで、どんな間で、どんなトーンで、聞いて引き出しているのかっていうのは、映像で見てみないとわからないんです。そういう意味で、あの情熱大陸は発見がたくさんあったんです。

・・・そんなことはさておき、この本は「週刊漫画ゴラク」の連載をまとめた一冊です。インタビュー術を基本テクニック、心構え、そして応用力を具体的なエピソードをまじえながら、紹介しております。

 インタビュー中に、そのひとつの質問で対象者がどう変化するのか。そんな描写やエピソードが豊富です。最初の潮田玲子のインタビュー話で、どさくさに紛れて浜崎あゆみの酷いエピソードとかさりげなく出てきたりして、めっちゃ笑います。技術本と銘打ってますが、いろんなジャンルの方々が登場する読み物として読んでも普通に面白いと思います。

 技術的な部分で面白いなと思ったのは「心を開かれすぎず、適度に突き放すという距離感」を大事にしているというところ。

 この距離感はね、かなり難しいんですよ。
一般的なインタビュー術に関して言えば、うまくいくかどうかは相手の懐に入れるかどうかが大きなポイントです。相手が心を開いてくれればいったん成功。これは、玄関先で世間話して終わるんじゃなくて、「もしよければ中に上がってくださいよ」と相手に部屋に招き入れてもらえるようなもので、心を開いてもらえたら面白い話を聞き出せる確率は高くなります。だから、まずはそこがインタビューの成功するか否かのポイントになります。

 でも「心を開かれ過ぎてはいけない」というのが、この本での吉田さんの提言。「私はあなたの味方ですよ」と言いつつも、「でも完全な味方ではありません」と、適度に突き放すというこの距離感を大事にする。信用され過ぎて、「あんたは口が堅いから」とシャレにならないオフレコ話を聞かされたりするから・・・・とその理由を語ってますが、確かにインタビューが盛り上がったし、深い話やここでしか聞かない話をたくさん聞けても、そのほとんどを原稿には書けません、では意味がないんですよね・笑。ただそれをわかっても、インタビュー中に判断してその線を引くのは、とても難しいです。この距離感、バランスの取り方のうまさが、彼のインタビュアーとしての腕なのでしょうな。


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 巻末には、あと「聞く力」で大ベストセラーとなった阿川佐和子さんとの対談も収録されてます。お互いのインタビュースタイルの違いとして、O倉キャスターにインタビューした際の、カツラ話への切り込み方を挙げてますが、O倉さんって表記、全然匿名になってないから!!!

 ちなみに僕がテレビを見ていて、「質問がうまいなー」と思うのは、カンブリア宮殿の村上龍さんの聞き方ですね。入念に資料を読み込んで、社長に対して本質的な質問だけで切り込んでいく、あのアプローチも好きですね。よく練られた質問だなぁ、と毎回感心します。

 そういえば今年。
フットボールサミットの取材でファイフロの木村朱美さんとスキフロの阿井莉沙さんをそれぞれ別々にインタビューしたのですが、終わってから2人ともに「インタビューってどうやったら上手くできるんですか?」と、逆質問されました。

 実用的なものも多少は伝授しました。例えば、カメラが回る前に何でもいいから少し雑談してワンラリーをしておくと、選手もしゃべりやすくなるんじゃない?とか、最初は少しぐらい大げさにリアクションしたほうが、話している方もノッてくる・・とかね。ただこれらはあくまでテクニックで、「一番大事なのは、相手に興味を持って聞く姿勢なんだ!」・・・と、そんなことを偉そうにアドバイスした記憶があります・・・よし、俺は「インタビューアドバイザー」の肩書きを名乗ろうかしら・笑。


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