本日は麻生取材。
神奈川大学との練習試合でした。
30分×4本を行い、スコアは12-1。ゲームレポートは明日発売のエルゴラにビシッと書いておきましたんで、それを読んでくださいってことで。あの選手のちょっとしたトピック付きですよ。
当たり前ですけど、30分×4本の試合は見ていて長かった・笑。
単純に30分×4本=120分というのもありますし、さらに毎回10分のインターバルが加わるので、4本目が終わるまで150分ぐらいかかりますからね。まぁ、4本だったので、GKが4人全員出場できていましたが。トータル松本選手の実戦でのプレーもひさびさに見ることができました。
あとちょっと面白いなーと思ったのが、サッカーでの「30分」という時間の区切りですね。
実は今日の1本目のスコアは、0-0だったんですよ。
試合が始まると、神奈川大は最終ラインをかなり高く設定し、チーム全体をコンパクトにして前からガンガンにプレッシャーをかけてきました。特にダブルボランチにボールが入った瞬間は、かなり激しくアプローチされたため、中盤からなかなかスムーズにビルドアップができません。ならばと、フロンターレの最終ラインは、高く設定している相手DFラインの背後にロングボールを狙っていったんです。
もちろん、このロングボールは「ジャブ」です。
一回のロングボールで崩せなくても、これをジャブの打ち続けることで、ハイプレッシャーをかけてくる前線をいなし、高めにラインを設定しているDF陣をゆさぶっていこう、という狙いです(実際には、このロングフィードだけで2度ほど決定機を作っていて、それを決めていれば・・・という場面もありましたが)。
そして時間の経過とともに相手の足が徐々に鈍りだし、チーム全体も間延びしてきそうな気配が漂いだして、「さぁ、これから」というときに、1本目が終了してしまったんです・・・あらら。そうか、30分ゲームか。そら仕方がない。
裏を返せば、神奈川大は「30分ゲーム」を踏まえたうえで、1本目はあれだけ飛ばしてきたんでしょうね。そして、まんまと逃げ切られてしまった感じです。事実、2本目になると、神奈川大はガクッと運動量が落ち、2本目だけで5-0の大差がつきましたから。
そう思うと、サッカーをプレーする上で45分という時間は絶妙だなーなんて思ったわけです。サッカーという競技を、45分の前後半で考えた人、アンタはエライ・笑。
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Posts from 11月 10, 2011
[書評]異端者たちのセンターサークル
どうも。
サッカー本ソムリエ・いしかわごうです。
今回紹介する本は、こちらです。
「異端者たちのセンターサークル」
日ごろからお世話になっているライター・海江田さんの著書です。ヴェルディの選手育成に関わった指導者にフォーカスして描いたノンフィクション。帯に書いてある「なぜヴェルディから多くのプロサッカー選手が生まれたのか?」という疑問の回答を求めて、ヴェルディの育成組織の原泉を辿っております。
物語の中心となっているのは、「読売クラブ」でプレー経験のある個性的な指導者たちです。
「ヴェルディ」ではなく、あくまで「読売クラブ」。Jリーグが開幕する前の日本リーグ時代、サッカーファンにとって「ヨミウリ」という言葉は、たまらない響きを持っていましたから。
まだ日本サッカーがアマチュア全盛の時代、よみうりランドの練習グラウンドで貫かれていたのが、徹底的な実力主義でした。そのトップチームでも別格の存在だったジョージ与那城とラモス瑠偉。彼らのプレーを目を皿のようにして見つめ、グラウンドで試行錯誤し、お互いに競いあっていたユース時代の戸塚哲也や都並敏史のエピソードなどなど。
育成システムがどうこうとかいう小難しい話ではなく、トップ選手と気軽に1対1を挑める日常であったり、選手に指導するときのちょっとした工夫のエピソードに、異端と言われた「ヨミウリらしさ」を感じます。
例えば、まだ28歳の小見幸隆(現:柏レイソル強化本部・統括ディレクター)がジュニアユースに守備を教えるときの話。
「センターバックやボランチにボスを作る。そいつにコントールさせて、味方を動かすことを覚えさせた。味方を苦労させて自分は楽をしろとこっそり耳打ちしてね。それができるようになったら自分で奪いに行くことも覚えろと」
特に、この「味方を苦労させて自分は楽をしろとこっそり耳打ちをする」っていうあたりが上手い指導ですよね。こういうのに僕は思わずニヤリとしてしまいます。
日本サッカー協会のガイドラインの活用の仕方も面白かった。
「日本サッカー協会の戦術用語にファーストディフェンスというのがありますよね。一回目の守備って、要するに取られたらすぐ追えってことでしょ。横文字に言い換えて大人は満足かもしれないけど、子供にはピンとこないんですよ。そういったことも含め、協会の作成するガイドラインは参考書として役立ちました。教科書ではなく、参考書ね。こっちはその反対をやったり、上をいけばいいのだから」
サッカー協会のガイドラインを教科書ではなく、参考書として活用をする。だって「その反対をやったり、上をいけばいいのだから」。ねぇ?ヨミウリが「異端」と言われた理由がだんだんわかってくるでしょ?・笑。
もちろん、問題点も指摘しています。
例えば、過去日本が4度出場したワールドカップのピッチに、ランドで育ったヴェルディの生え抜き選手は1人も立っていない(森本貴幸は南アフリカに選出されましたが、出場機会がなかった)。
その「なぜその育成のアドバンテージをトップの強化につなげらないのか」という疑問には、ガンバ大阪ユースの礎を作った上野山信行氏の話が実に興味深かったですね。
そのガンバ大阪ユース立ち上げの際、上野山氏は、ヴェルディを「反面教師」にした。
「参考にしたのは、ピッチのなか全部です。育成年代の大会で見るたびに、技術、戦術、サッカーの中身をつぶさに研究した。盗めるものは盗めと。一方、ピッチ外は見習わなかった。中学生の選手がツバを吐く。審判に文句を言う。これではあかん。社会に出て行く子を育ていているのにきちんと指導できていない。ヴェルディはここで止まるなと思った。確かに巧い。でもそこに慢心している。反省がない。謙虚さがない」
育成年代の東の雄が、東京ヴェルディなら、西はガンバ大阪と言われている。
そしてガンバの下部組織出身者といえば、稲本潤一は言うまでもないですが、橋本英郎、二川孝広、宮本恒靖、新井場徹、大黒将志。現在海外でも家長昭博、安田理大、宇佐美貴史など、多くの選手が育って活躍しているわけです。
この現状に対する上野山氏の指摘には、説得力がありました。
「小見さんたちは日本のためを考えたのかな。読売クラブだけを、ヴェルディだけを見ていたんと違う?サッカーは世界のスポーツだから、僕は世界を基準に置いた。ガンバが目標だとそこで止まって努力しなくなる」
「僕はJリーグができたとき、これは日本社会を動かすことやとおもった。アマチュアの時代は自分たちのため。Jクラブのユースやジュニアユースは社会を動かせる子を育てる。2002年の日韓ワールドカップで稲本がゴールしましたよね。うわ、日本が動いていると思った。少しは自分が役に立てたのかとうれしくなった」
うーん、いろいろ考えさせられますね。
まぁこんな感じで、「プロサッカー選手を育てるというのはどういうことなのか」を感じ取れる一冊となっております。
サッカーに特化した難しい本じゃないので、スポーツの指導者はもちろんですが、他の分野であれ「人を育てる」ということに興味のある方々にも読んでもらいたいですね。それこそ、子供を持つ親御さんにもオススメできるかもしれません。海江田さんの文章もグイグイと読ませますし、オススメです。
異端者たちのセンターサークル──プロサッカー選手を育てるということ (サッカー小僧新書)/海江田 哲朗
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サッカー本ソムリエ・いしかわごうに対する献本の申し出、書評の依頼は go.ishikawa55@gmail.com までどうぞ。... 記事を読む