はい、アジアカップ優勝ムードがまだ冷めやらぬ時期に、去年J2で18位だったチームのサッカーに熱視線を送るこの企画。ようやく[3-3-3-1]での試合となりました。
・2010J2第32節北九州(2-1○)
実は最下位(19位)北九州と18位・富山の裏天王山でした。両者ともに「ここで勝たずにどこで勝つ」ぐらいの気合が入っていた試合だったのは、見ているだけでもわかりました。熱戦でしたね。
富山[3-3-3-1]
苔口
石田 黒部 朝日
谷田 江添 船津
堤 濱野 足助
内藤
[3-3-3-1]システムを初お披露目。右SB西野が出場停止。前節、機能していなかったワントップ・黒部を二列目に、そして苔口をワントップにしています。相手の北九州は[4-4-2]のボックス。GK水原、DF佐藤、河端、長野、関、MF小森田、佐野、ウェリントン、池元、FWレオナルド、中嶋。
立ち上がりは、積極的に攻め合う展開だった。北九州・レオナルドの仕掛けが目立つ。25分。セットプレーで試合が動く。ゴール前中央で得たFKを、関が直接決めて北九州が先制。見事な無回転シュート。Gk内藤は見送るしかない。0-1。
だが富山はここで下を向かず、よりアグレッシブに。
得点には結びつかなかったが、31分の仕掛けが実に鮮やか。ロングボールの競り合いで、センターサークル付近で黒部とポジョンチェンジした苔口がボールを保持。目の前にいた前線3人が一気にゴールに向かって走りだすので、北九州の最終ライン4枚はズルズルとラインを下げて対応。これで苔口がノープレッシャーでゴール前までボールを運んでいく。さらに右にいた朝日が左へとダイアゴナルラン。その朝日を左ボランチの谷田が後ろから追い越していき、最後はあがってきたボランチの江添が中央からフリーでミドルシュート。大きく枠をはずしたが、富山はエリア内に5人飛び込んでいたのがすごい(解説の人も絶賛)。
その直後にもサイドからチャンス。クロスに飛び込んでいったのは、3列目の船津。3枚のボランチがどんどん前に飛び出していく富山に、北九州は対処できず受け身になっていた。35分ごろから北九州も反撃。サイドの深い位置にロングボールを入れてそこから起点を作ろうとするが、うまくいかず。富山に決定機。右サイドで船津と朝日のワンツーでクロス。黒部が反転シュートも水原がセーブ。この前半、水原は大忙し。
後半も富山のペース。特に苔口の裏を狙う動きに、北九州のラインコントロールに苦戦。中でも足助のフィードと江添の展開力が目立つ。59分、攻撃がついに実る。自陣のロングボールを左に流れた苔口が流れて起点に。石田が中央で受け、右に抜け出した石田に絶妙なパスを通す。これをしっかり流し込んで富山が同点。リズムの悪い北九州としては、FW長谷川太郎を入れて盛り返そうとした矢先の失点でした。
その後は、サイドに人数をかけて攻めていく富山のハーフコートマッチ。67分、富山は苔口と石田を下げて、平野と関原を投入。前線にフレッシュなコマを入れて勝ちに行く。一進一退の攻防が続く。74分、左サイドから崩され、クリアミスを拾われ17番中嶋が反転シュート。しかしこれは内藤が超至近距離でビックセーブ。その後、富山は黒部を下げて、長身の永冨を投入。決勝点は83分。平野の蹴ったCKに主将・濱野が打点の高いヘディングでゴールネットを揺らす。ベンチはもみくちゃで大騒ぎ。4分のロスタイムも耐えて、富山が逆転で勝ち点3を獲得。前監督から続いていた連敗も7で止め、安間体制の初勝利を飾った。
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スカパー!の中継での情報によれば、右SB西野が出場停止だったこと、さらにCB陣の調子がよかったため、この布陣を試してみたとのことです。参考にしているのは、チリ代表のビエルサ監督(当時)の戦い方。そうか。安間監督は南米サッカーマニアなのですが、なかでもポジションを崩して選手が後ろから飛び出していくチリ代表のサッカーが好きで、ミーティングで映像を見せていると、甲府監督時代におっしゃってました(普通ならば入手困難であろうチリ代表の試合映像は、日本代表の大木コーチ(当時)経由で確保していたはずです)。
ちなみにビエルサが南アフリカW杯で採用していたのは、[3-3-3-1]ではなく[3-3-1-3]ですが、3枚のCBとその前に3枚のボランチを並べるのは同じですね。守備面で言えば、3バック+3ボランチなので、真ん中は堅い。当然相手はサイドから崩そうとする。3バックの外のスペースを突かれた時は、基本的には左右のボランチが流れて守る。間に合わない場合はCBが出ていく(その際は、逆サイドにいるボランチが中央に絞って最終ラインに入ってカバー)。2トップがサイドに流れて起点を作ろうとするときは、マッチアップするCBがついていく。
攻撃面では、1トップの苔口が常に背後を狙い続ける。1.5列目でプレッシャーをやや受けにくい黒部がポストプレー。トップ下・黒部は札幌戦でのトップ起用よりもはるかに機能しており、守備の負担も少ないし、起点にもなりやすい。苔口と縦のポジションチェンジも頻繁に行う。そこに機動力のある二列目の石田と朝日がどんどん飛び出していく。この4人がカウンターの担い手になる。そこにボランチ、CBもリスクを恐れずにゴール前に飛び出して厚みを加えていく。こういう勇気ある攻撃が、チリっぽさを漂わせております。
そしてこの[3-3-3-1]システムの生命線は、実は両サイドにあると見ています。もちろん[3-3-3-1]という羅列だけを見てたら、サイドのエリアに人は配置されてませんよ。でも3バック、3ボランチなので手薄になると思いがちなサイドのエリアをCBとボランチの選手がサイドに広がって起点を作るところから仕掛けが始まっているんですよね。例えば攻撃を組み立てる際に右サイドのエリアを見てみると、二列目の右MF朝日、右ボランチ・船津、右CB足助の3人が縦の関係で並んで打開しようとしていることに気づきます。一見、サイドには人がいないと思わせておいて、実はそこに人数をかけて数的優位を作り、縦に制圧していく戦い方なのではないかと、にらんでいます。
このへんの発想は、安間監督ならではかもしれません。普通、ピッチに配置されたエリアを区切るとき、いわゆるフォーメーション表記のように、前線、中盤、DFラインという3等分して捉えますが、安間監督は、左エリア、中央エリアと右エリアとピッチを縦切りにした3等分で捉えてサッカーを組み立てる人なので。その縦に区切ったエリア、特にサイドでどう主導権を握るかを考えて、作戦を立てています。
なので、サイドに配置されている選手も、数的優位を確保するためにアップダウンできる運動量を重視してる気がします。圧倒的に攻撃が多かった右サイドを見てみると、二列目の右の選手は前線からの守備で汗をかき、カウンターではゴール前に飛び込んでフィニッシュに絡めるウィング的な能力(朝日)、3ボランチの右は、低い位置で守備をしてから前線に出ていくけるサイドバック的なタフな機動力(船津)という印象です。CBに関しては、高い守備力とサイドで前線へのフィード技術(足助)を求めているのかなという感じです。
北九州戦での対応で見えてきたのは、こんなところでしょうか。
新システムで幸先良く勝利しました。とはいえ、まだまだ整備する余地はありそうです。これをベースにどう戦っていくのか、でしょうね。
次回からはこんなに長く書きません(時間かかり過ぎ・笑)。この戦い方からどう変化したかなどに触れる感じにしていきますね。... 記事を読む
Posts from 1月 2011
アジアカップ優勝と川島選手の言葉。
祝!アジアカップ優勝!!
いやー、タフな試合でした。
決勝戦という舞台を考えれば、簡単な試合にならないことなど百も承知してましたが、これに加えてオーストラリア戦特有の、あの「なかなかピッチ上でガッチリ組ませてもらえない感じ」って言えばいいんですかね・・・・具体的には「体格差を生かした相手のエアバトル」になるんでしょうけど、ピッチ上ではそういうサッカーに耐え続けるストレスもありましたから。ACLでオーストラリアのクラブと対戦するときは違うんだけど、代表戦だともれなくこういう戦いになるんで面白いですよね。ホント、ジリジリとした時間がずっと続く、見ているだけでも消耗するファイナルだったと思います。
エアバトラー・岩政選手の投入とシステム変更、そしてスーパーボレーを決めた李選手の投入と、ザック采配がことごとくはまったのは言うまでもないですが、この試合に関しては、やはり川島選手でしょう。南アフリカワールドカップのとき以上の、鬼神のようなセービング。GL、そして準々決勝までは決していいパフォーマンスではなかったですから。彼自身にとっても本当に良かった。
試合後のインタビューで、「自分は今まで優勝したことがなかった。はじめて優勝して非常に気持ちいい」と川島選手は喜びの声を口にしていました。
このとき思い出したのが、09年のナビスコカップ決勝戦前に川島選手におこなったインタビューでの言葉です。そこで僕は最後の質問として、「タイトル獲得」を強く口にしていた川島選手に「タイトルに向かわせるこのエネルギーの源は何だと思いますか」と聞いてみたんです。インタビューの最後に投げかけようとしていた、自分なりの勝負球でした。
すると彼はじっと考えてから、丁寧に言葉を紡いでくれました。
まず「フロンターレというチームにとって、チャレンジし続けても、なかなか手が届かないという存在がタイトルだということ。だから欲しい」と。
そしてこう言いました。「僕自身、タイトルを取ったことがないことがあります。一番になったときの気持ち、その道のりを含めて経験をしたことがないので、経験してみたい。それを目指して挑戦することにすごくやりがいを感じるんです」。
彼のブログのタイトルは、座右の銘である「Life is Beautiful」。
人生を美しくするために、「後悔しないことが大事」だと彼は言っています。「人生は決断の連続だけど、一つ一つの決断を公開しないことで自分を肯定できる」と。
そんな川島永嗣選手が初めて掴んだ優勝の味・・・自身のブログでも思いをつづっていますが、なんだか感動してしまいましたよ。
「Champion」... 記事を読む
[試合研究]J2第31節富山対札幌戦
はい、J2富山の試合を見直すという趣味丸出しの企画、2試合目・札幌戦です。
第30節が試合なしとなったため、3週間のインターバルを経て、じっくりとトレーニングを積んで臨んだとのこと。千葉戦同様、[4-3-2-1]システムだが、1トップ2シャドーを総入れ替え、Gkも中川ではなく内藤を起用するなど、先発を大幅に入れ替え。木本が出場停止。
・富山[4-3-2-1]
9.黒部
20.苔口 28.関原
27.船津 22.江添 7.朝日
16.谷田 3.堤 2.足助 19.西野
21.内藤
札幌は[4-2-3-1]。メンバーはGk高原、DF藤山、吉弘、石川、西嶋、MF芳賀、上里、三上、砂川、高木、FW内村。
入り方がよかったのは富山。苔口が鋭い突破を見せて右サイドを崩し、チャンスメークしていた。ほかに目立ったのは、朝日のフリーランニング。神出鬼没な動き出しで、ボールサイドに随所に顔を出し、数的優位を確保。相手守備陣を引き付けるなど、攻撃のサポートをこなしていた。
一方、悪い意味で気になったのは、ワントップ気味に構える黒部。フォアチェックが甘すぎる。コースを切るしぐさだけで、ボールホルダーへの寄せがかなり緩い。簡単に中盤の縦パスが通り、あるいは狙いを済ましたロングボールを蹴らせており、簡単に不利な局面を作らせていた。ここで守備が機能しなければ、富山は守備でリズムが作れない。それでも攻撃で仕事ができていればいいのだが、それもなかった。
最初の決定機は富山に。15分、左サイドを突破した谷田が絶妙なクロス。なによりこの場面、右サイドからフォローに走っていた朝日のフリーランが実に聞いていた。クロスを受けた関原がエリア内でトラップ。ただ、ややもたついたか。角度がなく、GK高原に弾き出される。
その流れで得たCKで事件勃発。
クリアを拾われカウンターをくらい、味方が戻って対処。GK内藤までボールを戻して、もう一度攻撃を仕切り直す。何もこともない場面だ。しかしそのGK内藤に対して、札幌のFW内村が猛然とチェイス。思わずスピードで間合いを詰められた内藤は、慌てて蹴りだすものの、このクリアが内村の体に当たり、ボールはそのままゴールマウスに吸い込まれていく。富山、Gkの信じられないミスで失点。0-1。内藤はこれがJデビュー戦だったようだ。
ここから前半終了までは札幌がゲームをコントロール。富山は焦りなのか、表情が変わったように意気消沈。チーム全体が間延びしており、ボールを奪いに行く時の一人一人の距離感が悪い。連動性がなく簡単にいなされており、たまに奪ったボールもつながらず・・と悪循環。40分に右SB西野がオーバーラップして攻めた場面ぐらいしか見どころがなく、前半終了。
後半、船津と朝日がポジションチェンジ。全体がコンパクトになり、いい奪い方、そしてゴール前に味方が飛び出していく。いいリズムだったが、52分、自陣深い局面で西野が砂川との1対1で見事に完敗。右サイドを破られると、エリア内まで走り込んでいた上里がうまく流し込んで追加点。0-2。
ここで安間監督が動く。関原を下げてカン・ヒョンスを投入。カンはボランチにいれ、朝日を2列目にあげる。さらに左SB谷田をやや高めの位置に上げ、3バック気味にする。時間がたつとさらに右SB西野も上げ、江添を最終ラインに下げ、[3-4-2-1]のような形になった。
黒部
苔口 朝日
谷田 西野
カン 船津
足助 江添 堤
終盤には船津を下げて平野、苔口を下げて永冨を投入。崩した局面もあり、いい形で攻め込むが札幌の集中力も高かった。シュート場面では全員が身体を投げ出してブロック。それをこじゃあけられず、0-2のままタイムアップ。7連敗となった。
千葉戦の負けとは比べると、内容的には低調した順当な負け。悔やまれるのは、内藤のミスによる失点場面。GKのミスは失点に直結する見本のような形。これが6連敗中で下位に沈むメンタルなのか、まるでボタンのかけ違いが起きたように、ズルズルと悪循環に飲まれてしまった。リードした後の札幌もさすがで、ピッチを広く使ってボールを回して富山のプレスをいなすなど、効果的な試合の進め方をしていた。守備でも高原中心に最後まで集中を切らさなかったのが勝因か。
個人的に疑問だったのは、やはり黒部の先発起用。チェイスイング役として機能していない。攻撃面でもまるで仕事ができていなかった。このあたりの舵取りをどう判断するのか注目。
まぁ、この2試合は自分の中では助走。次の北九州戦からが[3-3-3-1]システムになります。
【J2:第31節 富山 vs 札幌】安間貴義監督(富山)記者会見コメント [ J’s GOAL ](10.10.24)... 記事を読む
iPadで将棋をする、将棋を読む。
「将棋世界」という将棋の世界が大好きな人が毎月読むであろう雑誌があります。
これもiPadで読む「電子書籍版」が発売されてるんですよ。しかも斬新的な作りで。
例えば竜王戦7番勝負での渡辺竜王対羽生名人の観戦記事。
将棋をよく知らない人でも、こういう図は新聞の将棋欄で見かけたことがあると思います。
将棋ファンは、観戦記に掲載されているこの図を見て、頭の中に将棋盤を思い浮かべて脳内で駒を進めていったり、あるいは将棋盤を引っ張り出して実際に指して、「ほうほう、羽生さんはそう来たか」とかつぶやくわけですよ。はた目から見ると、すっげぇ地味な光景ですけど、将棋ファンはそんなんをもう何十年もやってたわけですよ。
だけどねぇ、電子書籍版「将棋世界」では、この図にタッチすると、掲載されている将棋盤の駒がカチカチ対局図の通りに動くようになっているんですよ。これ、ちょっと感動するわ。さらに柿木将棋のアプリをダウンロードしていると、将棋ソフトが起動して再現してくれたりもします。
こういう風にiPadを使いこなして将棋指しているおじいちゃんがいたら素敵やん、ですよね。... 記事を読む
[試合研究]J2第29節富山対千葉
どうも。
年明けから「自主トレ」と銘打って、ほぼ毎日サッカーの試合を見てゲーム分析をやってます。シーズン中は、どうしても担当チームの試合チェックが中心になりますし、さらにその対戦相手、日本代表とか海外サッカーの最新試合を優先する形になりますからね。年明けからは撮りためていたリーガとプレミア、あるいは南アフリカワールドカップのゲームを見ていたんですけど、なんかそれも少し飽きてきたし、ちゃんとテーマを持って他のチームの試合をじっくり見たいなーと思って国内に目を向けてみました。
ということで、安間監督のカターレ富山を研究してみることに。Jリーグで[3-3-3-1]を採用しているのは、ここだけですからね。そのシステムに興味がありましたから。安間さんが指揮を執った第29節から見ることにしました。
第29節の千葉戦
・富山[4-3-2-1]
17.木本
22.平野 15.石田
14.川崎 22.江添 7.朝日
16.谷田 2.足助 24.吉井 19.西野
1.中川
安間監督の初戦がこの試合でした。[3-3-3-1]を採用したのは3試合目からなので、この千葉戦と次の札幌戦は[4-3-2-1]という形です。ただベースとなっている戦い方、そして富山の選手の顔と名前、プレースタイルを叩きこむ目的もあったので、かなり丁寧に見ました。
情報としては富山は、黒部と船津が出場停止。競争心を植え付けるため、ゲーム形式の練習で勝ったグループを中心に起用し、前節からメンバーを7人の入れ替え。木本を1トップに、石田と平野の2シャドー、そして中盤を3ボランチに。最終ラインが吉井と足助の若いCBコンビ(吉井はルーキーで初先発)なのも注目か。
・千葉[4-2-3-1]。
青木孝
工藤 伊藤 谷澤
山口 佐藤
アレックス 青木良 福元 鎌田
岡本
試合開始。まずは全体の動きを確認。守備時には、1トップが相手のCBとボランチを、2シャドーが左右に開いて相手のSB(&ボランチ)をケア。その3人がいい距離感でフィルター役となることで、背後の3ボランチと連動してボールを奪っていくことができる。序盤はこれが功奏し、千葉は後ろからのビルドアップにかなり苦戦していたような印象。佐藤勇人も最終ラインまで下がってさばいたりしてアクセントをつけようとするが、富山の前線も簡単にはいなさせず、逆にボールを奪取して仕掛けていく。これがはまった場面が17分、19分で、相手陣地でうまくひっかけて、縦への素早いカウンターからあわやの場面を作りだす。低い位置からの攻撃で肝となっているのはアンカーの江添。フィード力があるので、奪った後、彼を起点にダイナミックな展開していた。
ピンチらしいピンチはなかった富山なのだけど、初めて守備のバランスを崩したのが23分の場面。
千葉がボールを保持していると、トップ下・伊藤が低い位置まで下がって、さらに右サイドへと流れてパスをつないでいく。伊藤の対応でやや食いついていた3ボランチのバランスが一瞬、崩れたところに、左SBのアレックスが中央まで入り込み、ボールを受けて起点を作る。そこからガラ空きになった左サイドに山口がボールを展開。これは富山の選手との走り合いで、千葉のスローインに。このスローインをつなぎ、バイタルエリアでボールを受けた谷澤が反転して、青木孝太とのワンツーでエリア内へドリブル。CB吉井が置き去りにされ、GK中川が谷澤との1対1を止め切れずにボールがこぼれてポストに。その跳ね返りを青木がつめて千葉が先制。ほぼノーチャンスだった千葉。スローインからのゴールですが、そのスローインにつながった崩しのリズムがよかったですね。富山としては、ワンチャンスだけでやられてしまった失点。
だがその直後、高い位置でボールを奪い、石田が思い切りよくミドルシュート。これは惜しくもバーにはじかれるが、富山は下を向かずに反撃していく。石田、木本、平野の前線3人が流動的な崩しを見せながら、そこにボランチの朝日が精力的な飛び出しで厚みを加え続ける。特に千葉は左SBのアレックスが非常に攻撃的なので、留守になった裏のスペースを縦に仕掛けて使う、あるいは1トップをサイドに走らせて狙っていく。32分には、その崩しで右サイドに流れた平野から、中央へグランダーのクロス。左サイドから石田が走り込む決定機も、鎌田とGkがブロック。1-0のまま前半終了。富山のゲームでしたが、リードしているのは千葉。
後半はざっくりと。
まずは千葉が右サイドからのクロスが目に見えて多くなり、GK中川がハイボールを処理する場面が目立ち出す。おそらくこれは、前半からやや不安定な守備を見せていた富山の左ボランチ・川崎のいるサイドから崩していく狙いだったと予想。この状況に、安間監督が素早く動く。52分、川崎を下げてカン・ヒョンスを入れる。守備だけではなく、朝日とともに中盤の底からゴール前まで飛び出していく場面があった。82分には、ボランチのマークを振り切り、CBとSBの間に割って入ってシュートを放っている。その後平野を下げて関原を投入。決定な場面が2本訪れるも、関原も決め切れず。試合は0-1で終了。
全体的には富山のゲームだったと思います。ただ有効打は作っているが、決め切れない攻撃陣。守備面だと、足助と吉井で組む最終ラインも破綻はすくなかった。特に足助は、ワントップの青木孝太にくらいつき、厳しく対応していた。吉井は、谷澤に振り切られた失点場面に反省が残りましたね。次への期待が持てる敗戦でした。
【J2:第29節 富山 vs 千葉】安間貴義監督(富山)記者会見コメント [ J’s GOAL ](10.10.03)
最初なので詳細に研究しましたが、徐々にボリュームは減らしていく予定。基本的には、チームとしての戦い方が機能しているかどうか、得点失点の場面、気になった局面のポイントなどを中心に富山視点で書いていく感じです(もっと細かいところもノートには書いてるんですけど、ここでは省きます)。第38節までつらつらとやってみようと思います。
ただ試合は毎日ノートにメモして研究してるんですけど、そこからブログに書き起こす作業がかなり面倒くさいので、そこにはタイムラグがあるかもしれません。なにせ今日の文字だけでも2500文字ぐらいありますからね(笑)。まぁ、自己満足でやっていきたいと思います。... 記事を読む
情熱大陸・道尾秀介。
いまさらですが、先週の情熱大陸は面白かったですねぇ。登場したのは、先日、「月と蟹」で直木賞を受賞した作家・道尾秀介さん。
ビックマウスで退路を断つ彼。4回連続で受賞候補になり、いずれも落選(4度連続候補は、戦後初の記録)するも、そのときの残念会では、「えーっ、6ヶ月後(次回)の前祝いに来ていただき、ありがとうございます!」、「もし、次取れなかったら、責任を取って・・・・・・・もっといい作品を書きます!」と自信満々。強気な姿勢を崩さない発言で、その場を沸かせていました。
番組内では日々の生活や仕事場での様子を密着。執筆作業は、朝10時から夕方5時まで机に向かって行う。夜になれば慣れ親しんだ近所のバーでくつろぎ、深夜には週に4日、8キロのランニングを行うというのが、ルーティンのようです。規則正しいリズムで小説を書いていく、というスタイルみたいですね。
そして最大のハイライトが、「月と蟹」を書きあげた瞬間のシーンを撮影していたこと。
これって、かなりすごいことですよ。だって、まずテレビ的に見て、パソコンに向かって文字を何時間も打ち続ける作業って、とことん地味な画ですからね。動きがないからいい画は撮れないし、なによりも見ている方が耐えられない。同じことは作家もしかり。例えば桜庭一樹さんのときは、定点カメラを置いて撮影していたのですが、やっぱり気が散ってはかどってなかったですからね。テレビカメラが回っている前で執筆に集中するなんて、まず無理なんじゃないかと思います。つまり、両者にメリットが少ない場面なんですよね。そんな奇跡とも言える瞬間の撮影に成功。本人も「人前で小説を書き終えたのは初めてですよ」と苦笑いしてましたね。
そんなビックマウスの彼も、あるとき、「パソコンを立ちあげて、開くのが怖くてたまらない」と、思わむ心情を吐露した場面も。朝、仕事する前に「俺は書ける」と20回、声を出して唱え、今度は「俺は書く」と20回唱えてから書き始めるそうだ。「自信はあるけど、怖い」と。このへんが情熱大陸らしいですね。そしてラストは受賞報告会の場では、いつものビックマウスで「今後『月と蟹』以下の作品は、書きません!」と公約してエンディング。
作家が作品を生む貴重な場面を垣間見れたり、才能ある人でもあんなに不安を抱えているのかなどなど、なんとも興味深い回でしたね。面白かったので、保存版にします。
ちなみに次回の情熱大陸は、サッカー日本代表の香川真司選手です。このタイミングで怪我をしてしまったけど・・・オンエアはどんな感じになるんだろうか。
月と蟹/道尾 秀介
¥1,470
Amazon.co.jp... 記事を読む
No iPad, no life.
どうも。
着々と、iPadが日常の一部になりかけてます。
今日は、毎号買ってるフットボリスタをダウンロード版で購入しました。
書籍と同じ300円也。
近所のカフェでコーヒーをすすりながら、ipadで優雅に読んでましたよ。
ちなみに今回は、キャリアの円熟期を迎えたベテラン特集。
サッカー人生の終え方、締めくくり方を考察する、しぶい企画でした。
中でもエルナン・クレスポ(パルマ・元アルゼンチン代表)の「自分も年も取ったものだと実感するよ。でもそれは悲しい気持ちじゃない。とても心地がいいものだ」の言葉には、ホロリとさせられましたわ。
思わずカフェで、ひとりホロリー、ホロリーでしたわ。
♪えぇーいぃーやぁー、君から~もらい泣き~、ですよ。
ほんと、一青ごうも裸足で歌っちゃいますよね。
そりゃ、やさしいのは~誰です~?って話になってきますよね。
なりませんけど。
そんな感じで、iPadがおれのライフスタイルに馴染んでるわけです。
・・・というかね、おれほどiPadが似合うライターもいないんじゃないかな、と思ってます。
自分で言うのもあれですけど。
だって、iPadの「i」って何のことだよ?って疑問に思ったことありません?
あの「i」って、実はおれのことですからね、じつは。
「ishikawa go」の頭文字の「i」のことですからね。
スティーブ・ジョブスからは何の連絡もないものの、明らかじゃないですか。
まずは一週間、「No iPad, no life.」を合言葉に頑張ります。... 記事を読む
THIS IS 日韓戦
いやはや、「THIS IS 日韓戦」っていう試合でしたね、アジアカップ。
どんな感じになるかなと思ったけど、立ち上がりは日本ペースだったなぁ。
前田、岡崎、本田、香川の4人がキープと突破を使い分けながら流動的にゴールに向かい、そのこぼれも後ろの選手がフォローして、二次攻撃を繰り返していく。入り方が悪かったカタール戦とはうって変わって、アグレッシブさが目立つ序盤。逆に中二日の韓国は体力的な問題を見越してか、かなり抑え気味。おそらく「前半はセーブして、後半に勝負」というプランだったのだろう。守備に重点を置きながら、セーフティな攻撃が主体で、さほどペースアップしてこなかった。
ところが、韓国はラフなロングボール1本で幸運なPKを獲得。エリア内でパクチソンが今野に倒されたものだが、今野はショルダーチャージを主張・・・うーん、「これでPKなの?」という厳しめのジャッジでしたが、これを成功させた韓国が先制。
しかし、これで慌てないのがこの代表の強さか。
慌てずたじろがずにパスをつないで、サイドからじっくり崩していく。本田が起点となり、チャドゥリの背後のスペースをついた長友がエリア内へ深く侵入し、中央へ折り返し。飛び込んでいた前田が流し込んで同点。
韓国の右SB・チャドゥリは、元FWだけあってオーバーラップ時の迫力はありますが、その反面、守備の対応とポジショニングに難がある選手でもある。16分にも、長友がそのスペースをついてクロスに岡崎のヘディング(Gkが弾いてポストに)、という決定機もありましたからね。試合全体を通じても、ここを長友が突けたのは大きかったと思います。
後半は、パス回しと突破力で圧力をかけ初めて来た韓国に、盛り返された印象。日本はたまらずファウルで止める場面が目立ち始めゴール前でのFKが多発。そこで跳ね返しても前線でキープできず、再び押し返される苦しい時間が続いていく。こういう展開で流れを変えられる前線の選手がベンチに見当たらないことが、ちょっとネックですよね。ザックも動こうにも動けず、終盤に香川を下げて細貝を投入したのみ。日韓戦らしいジリジリするような緊張感のまま、1-1-で延長戦へ。
試合が動いたのは、延長前半5分。サイドでの前田のキープから、中央の本田が絶妙なパス。エリア内に抜けだそうとした岡崎が韓国選手とぶつかり倒されてフエが鳴り、日本にPKが与えられる。まぁ、倒れた位置といい判定といい、ラッキーとしかいいようがないPKでした。
本田のPKはGkに防がれるも、全速力で詰めていた細貝がプッシュ。日本がついに逆転に成功。あとはゲームをクロースさせるだけ。延長後半、日本はラインを下げて守り固め。相手敵陣付近での本田と長友のボールキープや、伊野波、本田拓を投入して必死の逃げ切りをはかる・・・しかし、韓国の見せる執念のパワープレーも強烈。結局、終了直前に与えたFKをクリアし切れず・・・最後の最後に押し込まれ、まさかの同点。日本国民が地獄に叩きおとされました。
試合の決着はPK戦へと委ねられることに。
ゴールマウスに向かうのは、川島永嗣とチェ・ソンリョン。そういえば、去年のフロンターレ初公式戦はACL城南戦だったのですが、川崎FのGkは川島くんで、城南のGKはチェ・ソンリョンだったんだよな・・・などと思い出してしまった。
このPK戦で、川島くんがいきなり2本をストップ。
日本は本田圭、岡崎が成功、長友が失敗するも韓国の3人目が枠を外す。そして今野がしっかり決めて3-0で決勝進出。延長後半終了間際に追いつかれた地獄から天国へ・・・すごかった。しびれました。。こういうハートを鷲づかみされるような瞬間があるから、サッカーはたまらんですね。
試合全体を通じて振り返ってみると、個人的には、120分アップダウンを繰り返し長友にMOM(マンオブ・ザ・マッチ)をあげたかったですね。同点弾のアシスト、チャドゥリとの駆け引きも含め、攻守両面で本当にすばらしかった。
・・・ただ豪快にPKをはずしたからな(笑)。
なによりも、川島くん。
よく言ってますが、自分が川島くんの存在を強烈に意識したのは、AFCユースの準決勝ウズベキスタン戦のPK戦で見せた、美しいセービングフォームでの神がかりなストップからです。あれから約8年。1本目のPKストップした姿は、あのときの記憶を思い出してくれましたよ。本当にナイスセーブでした。彼自身、ワールドカップパラグアイ戦でのリベンジも少しは晴れたかもしれません。
決勝戦の相手はオーストラリア・・・楽しみだ。... 記事を読む