[試合研究]J2第32節北九州対富山から[3-3-3-1]システムを読み解いてみる


はい、アジアカップ優勝ムードがまだ冷めやらぬ時期に、去年J2で18位だったチームのサッカーに熱視線を送るこの企画。ようやく[3-3-3-1]での試合となりました。
・2010J2第32節北九州(2-1○)
実は最下位(19位)北九州と18位・富山の裏天王山でした。両者ともに「ここで勝たずにどこで勝つ」ぐらいの気合が入っていた試合だったのは、見ているだけでもわかりました。熱戦でしたね。
富山[3-3-3-1]          苔口
    石田   黒部    朝日
 
    谷田   江添    船津
     堤   濱野    足助    
 
         内藤
 [3-3-3-1]システムを初お披露目。右SB西野が出場停止。前節、機能していなかったワントップ・黒部を二列目に、そして苔口をワントップにしています。相手の北九州は[4-4-2]のボックス。GK水原、DF佐藤、河端、長野、関、MF小森田、佐野、ウェリントン、池元、FWレオナルド、中嶋。
 立ち上がりは、積極的に攻め合う展開だった。北九州・レオナルドの仕掛けが目立つ。25分。セットプレーで試合が動く。ゴール前中央で得たFKを、関が直接決めて北九州が先制。見事な無回転シュート。Gk内藤は見送るしかない。0-1。
 だが富山はここで下を向かず、よりアグレッシブに。
得点には結びつかなかったが、31分の仕掛けが実に鮮やか。ロングボールの競り合いで、センターサークル付近で黒部とポジョンチェンジした苔口がボールを保持。目の前にいた前線3人が一気にゴールに向かって走りだすので、北九州の最終ライン4枚はズルズルとラインを下げて対応。これで苔口がノープレッシャーでゴール前までボールを運んでいく。さらに右にいた朝日が左へとダイアゴナルラン。その朝日を左ボランチの谷田が後ろから追い越していき、最後はあがってきたボランチの江添が中央からフリーでミドルシュート。大きく枠をはずしたが、富山はエリア内に5人飛び込んでいたのがすごい(解説の人も絶賛)。
 その直後にもサイドからチャンス。クロスに飛び込んでいったのは、3列目の船津。3枚のボランチがどんどん前に飛び出していく富山に、北九州は対処できず受け身になっていた。35分ごろから北九州も反撃。サイドの深い位置にロングボールを入れてそこから起点を作ろうとするが、うまくいかず。富山に決定機。右サイドで船津と朝日のワンツーでクロス。黒部が反転シュートも水原がセーブ。この前半、水原は大忙し。
 後半も富山のペース。特に苔口の裏を狙う動きに、北九州のラインコントロールに苦戦。中でも足助のフィードと江添の展開力が目立つ。59分、攻撃がついに実る。自陣のロングボールを左に流れた苔口が流れて起点に。石田が中央で受け、右に抜け出した石田に絶妙なパスを通す。これをしっかり流し込んで富山が同点。リズムの悪い北九州としては、FW長谷川太郎を入れて盛り返そうとした矢先の失点でした。
 その後は、サイドに人数をかけて攻めていく富山のハーフコートマッチ。67分、富山は苔口と石田を下げて、平野と関原を投入。前線にフレッシュなコマを入れて勝ちに行く。一進一退の攻防が続く。74分、左サイドから崩され、クリアミスを拾われ17番中嶋が反転シュート。しかしこれは内藤が超至近距離でビックセーブ。その後、富山は黒部を下げて、長身の永冨を投入。決勝点は83分。平野の蹴ったCKに主将・濱野が打点の高いヘディングでゴールネットを揺らす。ベンチはもみくちゃで大騒ぎ。4分のロスタイムも耐えて、富山が逆転で勝ち点3を獲得。前監督から続いていた連敗も7で止め、安間体制の初勝利を飾った。
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 スカパー!の中継での情報によれば、右SB西野が出場停止だったこと、さらにCB陣の調子がよかったため、この布陣を試してみたとのことです。参考にしているのは、チリ代表のビエルサ監督(当時)の戦い方。そうか。安間監督は南米サッカーマニアなのですが、なかでもポジションを崩して選手が後ろから飛び出していくチリ代表のサッカーが好きで、ミーティングで映像を見せていると、甲府監督時代におっしゃってました(普通ならば入手困難であろうチリ代表の試合映像は、日本代表の大木コーチ(当時)経由で確保していたはずです)。
 ちなみにビエルサが南アフリカW杯で採用していたのは、[3-3-3-1]ではなく[3-3-1-3]ですが、3枚のCBとその前に3枚のボランチを並べるのは同じですね。守備面で言えば、3バック+3ボランチなので、真ん中は堅い。当然相手はサイドから崩そうとする。3バックの外のスペースを突かれた時は、基本的には左右のボランチが流れて守る。間に合わない場合はCBが出ていく(その際は、逆サイドにいるボランチが中央に絞って最終ラインに入ってカバー)。2トップがサイドに流れて起点を作ろうとするときは、マッチアップするCBがついていく。
 攻撃面では、1トップの苔口が常に背後を狙い続ける。1.5列目でプレッシャーをやや受けにくい黒部がポストプレー。トップ下・黒部は札幌戦でのトップ起用よりもはるかに機能しており、守備の負担も少ないし、起点にもなりやすい。苔口と縦のポジションチェンジも頻繁に行う。そこに機動力のある二列目の石田と朝日がどんどん飛び出していく。この4人がカウンターの担い手になる。そこにボランチ、CBもリスクを恐れずにゴール前に飛び出して厚みを加えていく。こういう勇気ある攻撃が、チリっぽさを漂わせております。
 そしてこの[3-3-3-1]システムの生命線は、実は両サイドにあると見ています。もちろん[3-3-3-1]という羅列だけを見てたら、サイドのエリアに人は配置されてませんよ。でも3バック、3ボランチなので手薄になると思いがちなサイドのエリアをCBとボランチの選手がサイドに広がって起点を作るところから仕掛けが始まっているんですよね。例えば攻撃を組み立てる際に右サイドのエリアを見てみると、二列目の右MF朝日、右ボランチ・船津、右CB足助の3人が縦の関係で並んで打開しようとしていることに気づきます。一見、サイドには人がいないと思わせておいて、実はそこに人数をかけて数的優位を作り、縦に制圧していく戦い方なのではないかと、にらんでいます。
 このへんの発想は、安間監督ならではかもしれません。普通、ピッチに配置されたエリアを区切るとき、いわゆるフォーメーション表記のように、前線、中盤、DFラインという3等分して捉えますが、安間監督は、左エリア、中央エリアと右エリアとピッチを縦切りにした3等分で捉えてサッカーを組み立てる人なので。その縦に区切ったエリア、特にサイドでどう主導権を握るかを考えて、作戦を立てています。
 なので、サイドに配置されている選手も、数的優位を確保するためにアップダウンできる運動量を重視してる気がします。圧倒的に攻撃が多かった右サイドを見てみると、二列目の右の選手は前線からの守備で汗をかき、カウンターではゴール前に飛び込んでフィニッシュに絡めるウィング的な能力(朝日)、3ボランチの右は、低い位置で守備をしてから前線に出ていくけるサイドバック的なタフな機動力(船津)という印象です。CBに関しては、高い守備力とサイドで前線へのフィード技術(足助)を求めているのかなという感じです。
 北九州戦での対応で見えてきたのは、こんなところでしょうか。
新システムで幸先良く勝利しました。とはいえ、まだまだ整備する余地はありそうです。これをベースにどう戦っていくのか、でしょうね。
 次回からはこんなに長く書きません(時間かかり過ぎ・笑)。この戦い方からどう変化したかなどに触れる感じにしていきますね。

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