マリ代表戦:大島僚太選手の見えている景色と、そのスピード。


 どうも、いしかわごうです。

 昨日は日本代表対マリ代表戦。
先発していた大島僚太選手に注目して見ていました。しかし前半に左ふくらはぎを痛めて、34分に交代。ピッチを退くまで攻守に存在感を出していただけに、なんとも悔やまれる負傷でした

 交代するまでのパフォーマンスについては、試合後の会見でハリルホジッチ監督も絶賛していたようですが、確かに別格でした。彼が、ピッチにいるときといないときでは、攻撃の展開がまるで変わってしまいましたから。

 試合のあれこれはここでは触れません。
ここであらためて語りたいのは、大島僚太選手についてです。彼が優れているポイントに、見えている場所の多さと、それを見つける判断の速さがあります。

 いわゆる「プレースピード」にも関係する話になるのですが、例えば、一般的なサッカー選手3秒かかって3つの場所が見えていたとしたら、大島選手はそれを1秒で見つけてプレーしているような感じです(例えば、ですよ)。スピードが速くなれば、判断も素早くしていかないといけないですし、当然、技術も必要になるわけですが、大島選手はそこでのミスも起こしません。彼にとっては、あのスピードが平常運転だからです。

 大島選手自身、プレースピードを高めることにはこだわっていると言います。
理由は簡単で、小柄なサイズであるため、頭をフル回転して、判断を速くしてプレーしないと、ボールを持っても相手に体をぶつけられて、あっさりと潰されてしまうからです。

 そのこだわりを表すエピソードがあります。
フロンターレが試合前に行うアップでのボール回しの出来が、彼にとっては調子をはかるバロメーターになっているというのです。

 フロンターレの試合前のボールを使った鳥かごのアップは、フィールドの10人を6対4でやっています。特徴的なのは、他のチームに比べてかなり狭いエリアで行われていることと、ボールのスピードがかなり速いことです。ボールホルダーには鬼役の4人が、ときに同時にプレッシャーをかけにきますが、この圧力が彼にとっては試合直前の頭のウォーミングアップにもなっているというわけです。

「実際の試合で4人以上がプレッシャーをかけてくる状況って、まずないですよね?4人来るということは4箇所、コースが消されるわけで。それでもうまくやれているときは、試合でも落ち着いてできるんです」
 
 ゴール前ならともかく、試合中に4箇所からプレッシャーを受けたり、4つのコースを消される場面というのは、普通の局面ではほぼありません。試合前にその感覚や目を慣らしておくことで、試合中は余裕を持ってプレーしやすくなる、というわけです。

 2012年の頃だったと思います。U-19の代表合宿から戻ってフロンターレの練習に合流した際、大島僚太選手が「見える場所が少なくなった」と、焦っていたことがありました。このときは「見える場所が少なくなった」とはどういう感覚なのかよくわからなかったのですが、あるときに本人に聞いてみたところ、こんな風に説明してくれました。

「まずボールが来る前に、周囲を見ていますよね。そしていくつかの(パスを)出す場所がある。そして実際にボールを持ってターンした後は、相手のディフェンスも対応に来ているので、当然その選択肢が減ってますよね。その減った選択肢の数が、すごく多くなっていたんです。本当ならば、パスは出せると思うのですが、ボールを持ったときに味方につけられないな、と直感的に思ってしまう。そういうことです。ただチームに戻って練習に慣れると、その感覚も戻りました」

 今思うと、これはアンダーの代表にいくと、そのプレースピードに目が慣れてしまい、遅くなってしまうという話なわけです。そこからフロンターレのスピードの速い練習に加わると、感覚を戻すのに苦労する、というわけです。

 リオ五輪の本大会だったと思いますけど、風間監督は「まわりには100キロのスピードに見えているかもしれないけど、僚太には60キロのスピードにしか見えていない」と言っていたこともありました。つまり、そういうことですよね。風間監督はよく「目が揃ってきた」という言い方をしてましたが、プレースピードも含めてそういうことなのだったと思いますね。

 そしてこの代表戦を見ていても、大島僚太選手は見えている景色とそのスピードが少し違うんだろうな、と感じる時間帯がありました。やはりワールドカップでも見たい選手です。軽傷であることを祈って。

ではでは。
興味ある方は読んでみてください。

・圧巻だった名古屋戦のゲームレビューです。
鬼木フロンターレと風間グランパス。それぞれのスタイルで進んでいく、お互いの道。(リーグ第4節・名古屋グランパス戦:1-0)。

・去年、中村憲剛選手が久しぶりに大島僚太選手に伝えたアドバイス。こういうアドバイスができるのは、日本でも憲剛選手ぐらいかもしれません。
「もっと圧倒的な大島僚太になってもらわないと」。中村憲剛だからこそ伝えられたアドバイスと、それによって大島僚太に起き始めている変化とは?





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