どうも、いしかわごうです。
湘南ベルマーレ戦は2-1で勝利。後半ロスタイム、エウシーニョが放った渾身の一撃が決まり、劇的な逆転勝利となりました。いやはや、あの瞬間のスタジアムの熱は凄かったですね。それまでの94分のうっぷんを晴らすかのような、爆発でした。
さて。
劇的な勝ち方でしたが、試合内容に関して言うと、決して良かったわけではありません。ただ、これだけ連戦が続けばコンディションも厳しく、パフォーマンスが落ちるのは必然なので、それは仕方ない側面もあります。実際、湘南も決して良かったわけではなく、カウンターにいつものほどの迫力はありませんでした。お互いに不安要素があるわけで、その材料をたくさん抱えながら、どれだけストロングポイントを出せるか、という総力戦だったと思います。
・・・という、長めの前フリがあってのレビューですが、そういうことを差し引いても前半の低調ぶりは問題です。
もともと[3-4-3]システムは、選手間の距離をうまく解消しないとフロンターレでは機能しにくい布陣です。前半に関していえば、動き出しの少なさ、具体的に指摘すると、ボールを引き出す動きの少なさが目につきました。
ビルドアップの起点となる3バックとダブルボランチが、[5-2-3]で守る湘南の前線3枚の守備をうまく剥がし切れず、いわゆる「後ろが重くなる現象」が起きていて、サイドに展開しても、相手のブロックの外でボールを回すだけでエリア内を攻撃できず。敵陣までボールが運べませんでした。
そんな中、アクセントを付けようとしていたのが、孤軍奮闘していた大久保嘉人。中村憲剛と大島僚太が不在のため、彼がトップ下の位置でゲームメークを担っていました。前半、フロンターレ相手ゴールを脅かした唯一とも言える場面も、彼が味方に出したスルーパスをカットされたリバウンドを、自ら左足で放ったミドルシュートです。
実はこの試合で個人的に注目していたのが、出場停止明けの大久保嘉人、先発復帰の井川祐輔、ベンチスタートの中村憲剛というフロンターレのベテラントリオでした。
若さと走力を武器にしてくる湘南ベルマーレが相手だからこそ、彼らベテランが「何を考えながらプレーするのか」。そしてピッチで「ベテランの味」をどう表現してくれるのか。そこに興味があったのです。
試合後に大久保嘉人にそのことを聞くと、「相手が走ってくるなら、その走りをうまく使ってやろうと思った」と明かしてくれました。こういう発想でサッカーができるのは、さすがだと思いますね。
もっとも、その狙いが結実したのは後半になってから。前半には味方にはうまく伝わらず、相手の走りにハメられてしまい、パスミスからカウンターを浴びてしまう展開に・・・谷口彰悟や車屋紳太郎がビルドアップでらしくないボールロストをしてしまい、ピンチを招く場面も目につきました。
ただ、その劣勢でも冷静だったのが、最終ラインのベテラン・井川祐輔でした。走力勝負に持ち込まれた局面は後手を踏みましたが、中央をよく塞いで対処。ボールを保持すれば、湘南の勢いあるプレッシャーを1人悠々といなすことで、ビルドアップがままならない味方に、落ち着くようなメッセージを伝えようとしているようでした。
後半になると、チームのパフォーマンスが改善されました。具体緒的には、後ろからのビルドアップですね。傍目にはボールを回す際の距離感が改善されたように見えたので、井川祐輔や車屋紳太郎に微調整したのかどうかを聞いてみたのですが、2人とも「特にはしていない」という答えでした。変えたのは「意識だけ」とのこと。
さらにベテラン・中村憲剛の投入で、その「意識」がより強めに。クサビのパスがガシガシと通るようになり、チーム全体が前に出て行くスイッチにもなりました。まぁ、この試合での中村憲剛の投入は、試合のターニングポイントとして、いろんなメディアで取り上げられるでしょうから、あえて膨らましませんけどね・笑。
ただPKを獲得するときのドリブル突破で見せた相手DFとの老獪な駆け引きなんて、まさに「ベテランの味」ですよね。そしてその場面で等々力のサポーターに対する鬼気迫る煽り・・・等々力劇場の幕開けでした。
チームメートの意識を変える存在感、試合の流れを変えるプレー、そしてスタジアムの空気を一変させる煽り・・・どれもその効果を論理的には説明しにくいものです。でも、サッカーというゲームは不思議な生き物みたいなところがあるわけで、こういう状況で何をすべきかという空気の扱い方はベテランほどよくわかっているのかもしれません。若さと走力でピッチを支配していた湘南の選手達は、1人の老獪なベテランのプレーに掌で転がされ始め、次第に等々力に飲み込まれてしまったようでした。
PK獲得後の後裏は、フロンターレあるあるの表紙みたいな感じでしたね。
大久保嘉人のPK成功で追いついた直後には、湘南のGKがバックパスを手でキャッチしたため、エリア内での間接フリーキック。中村憲剛のボールに頭で飛び込んだのは、井川祐輔でした。もしこれが決まっていれば、「ベテラントリオで勝利!」と奇麗に決まったわけですが、それを豪快に外す・・・さらに終盤にはシュートブロックでハンドを取られて、ペナルティエリア前でフリーキックを取られてしまうあたりも、イガちゃんらしかったですが・・・いやはや、危なかった。頼みますよ、ベテランなんだから・笑。
しかし、つくづくサッカーは「よくわからない」です。
だって、「若さの湘南対フロンターレのベテラントリオ」の構図で試合を観察していたのに、最後に決着を付けたのが、若手と呼ぶほどでもなく、かといってベテランでもない25歳の中堅・エウシーニョだったんですから。ドラマだったら台本、全部最初から書き直しだよ・笑。
でもナイスゴールでした。しびれましたよ、うん。
思えば、このブラジル人右サイドバックは、つい先日のナビスコカップ・マリノス戦でミドルシュートを決めた試合後に、「相手の選手にぶつかって角度が変わったけど、どういう形であってもボールをゴールに入れることが重要だと思っている」と話しておりました。そこには「走る」も「若い」も、「ボールを保持する」も、「ベテラン」も関係ないですから。
「サッカーに正解はない」と言われてますが、もし圧倒的な正解があるとすれば、「どういう形であってもボールをゴールに入れること」なのでしょう。そんな当たり前のことを教えてもらったような気がします。
ではでは。
今回はこのへんで。最後まで読んでいただき、ありがとうございました。
ようやくamazonの在庫が復活しました。中村憲剛の試合中の思考プロセスを完全網羅しています。