元日早々、川崎フロンターレのホームページに、中村憲剛選手のピックアッププレイヤーが掲載されてました。
リベンジ
彼にとってあまりにたくさんの出来事が起きた2014年シーズンを、じっくりと振り返っている内容です。読んでいて興味深いと感じたのは、気持ちの部分で戦う姿勢を若手に促している記述でしょうか。
今の20代前半とか半ばぐらいの選手はおとなしい。だから、やる時も淡々、やられる時も淡々になるのかも。クールなスタイルは全然いいんだけど、抗(あらが)うとかっていう気持ちも出していいと思う。負けたけど気持ちが見えた試合が少ないよね。負け方があまりにも淡々としていて、それはキャプテンの責任もあるし反省している。彰悟や僚太には、絶対やられないという気迫が全面に出ている選手の方が相手にするのは嫌だよという話をしている。
ここ最近、フロンターレにいる後輩について話題が及ぶと、憲剛選手はよく「若手が大人しい」と指摘しています。例えばシーズン後半のある時期、憲剛選手は谷口彰悟選手にハッキリとこう言ったそうです。
「お前のセンターバックは怖くないよ」
もし相手として対戦するチームのセンターバックに谷口彰悟という選手と対峙したとしても、たぶんピッチ上で怖さを感じない、という意味です。プレー面ではなく、ピッチ上の存在感として、おそらくそう感じると指摘したわけです。もちろん、彼の奮起を促すためです。
「優しいから。試合中に怒らないし、気迫とかそういう怖さがない。だから『それを出せ』とショウゴには言った」
このアドバイスが谷口彰悟の胸にどれだけ響いたのかはわかりません。ただシーズン最終盤、武岡優斗選手、車屋紳太郎選手と組んだ3バックでは、彼が意識的に声を出してチームを鼓舞する姿勢を出し続けていたのは以前のブログでも書いた通りです。
「最後の残り2試合は、後ろにDFリーダーがいなかったですし、自分が真ん中をやっていたので、『ここを頑張ろう』、『ここ踏ん張ろう!』とか試合中に声を出すようにしていましたね。あんまり大きい声を出して統率するタイプではないのですが、後ろの選手がやることで前の選手が頑張らなきゃ、と思ってくれれば」(谷口彰悟)
「もっともっとタフになっていかないと」。今季のリーグ戦試合出場時間が2番目に長かった新人・谷口彰悟。
ジェシという魂のこもったザゲイロが退団して迎える今シーズン。もしかしたら、谷口彰悟が気持ちを出して後ろを仕切れる存在を担うかもしれません。
ちなみに憲剛選手がなぜあれだけピッチ上でキモチを出すのか。
もしかしたら、ラモスさんの影響もあるのかな、とも僕は思っています。
パス技術を磨いていた少年時代、ラモス瑠偉選手のプレーを真似ていたというエピソードはわりと有名です。ただ華麗なプレーだけではなく、勝負に対して厳しくこだわるピッチ上の姿勢も大好きだったそうです。確かにラモスさん、自分が奪われたボールは、相手を削ってでも奪い返してやるぐらいの闘争心を見せてましたからね。ときにピッチ上であれだけ気持ちを出すのは、少なからずラモスさんの影響もあるのかな、なんて思ってます。
ただチームという生き物は難しいもので、気持ちを出す選手は絶対に必要な反面、憲剛選手における伊藤宏樹、ラモスさんにおける柱谷哲二のように、闘争心を出す選手がたまに暴走してしまいそうなときに、それをちゃんとなだめることのできるコントロール役もセットで必要なんですよね。昨年のフロンターレには、その伊藤宏樹役が不在でした。その影響でどうなったのか。その結果は憲剛選手自身も自覚していますし、今年は同じ轍を踏まない、と思います。だからこそ、若手に気持ちを出す姿勢を促している、のだともわかるはずです。
気持ちを出してプレーをする選手がどれだけ出てくるのか。今年のフロンターレのひとつの見どころとして注目ですな。