多摩川クラシコ〜谷口彰悟という左サイドのピース。



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 ようやくリーグ戦初白星です。
 実は風間監督が3月に勝利したのは初めてなんですよね。
就任は2年前の4月でしたし、去年は3月に一度も勝てませんでした。オーストラリアでは、試合日に選手たちだけでのミーティングもしたそうです。「勝ててないけど、自分たちが目指しているところは間違いない。ブレないでいこうよ」と、あくまで風間監督のもとで目指しているスタイルを継続することにベクトルを合わせたとのことでした。
 そして迎えた多摩川クラシコは、4-0で勝利。

 勝敗を決したポイントをわかりやすく言えば、相手のミスとそれを見逃さなかった大久保選手と小林選手の決定力、ということになると思います。二人とも素晴らしいの一言です。
 ただ違う視点で試合全体のポイントを挙げるとすれば、両チームの布陣と選手起用にあったのではないかと思っています。たまには長文で書いてみます。
 この日のフロンターレの布陣は[4-4-2]でした。
ダブルボランチに憲剛選手と大島選手、さらに右サイドには森谷選手を先発させました。守備力に定評のあるパウリーニョや稲本選手、運動量が豊富な山本選手に比べると、いわゆる「技巧派タイプ」を中盤に並べています。
 さらに左サイドバックには、新人の谷口選手を配置。大学ナンバーワン・ボランチと称されている彼をなんと左SBで抜擢しました。
 そしてこの谷口彰悟というピースが、見事にハマッたんですよね。
筑波大で風間監督のもとでやっていただけあって、味方にボールをつけるタイミングとテンポが抜群に良いです。そしてパスを出した後はしっかりと受け直すようにポジション取りも怠らない。なおかつ足元の技術が高いので、ダイレクトかつ正確に間を通すことも出来る。
 相手から多少のプレッシャーを受けても、左サイドとダブルボランチで細かくパス交換しながら組み立てをしていき、局面が詰まった場面では、今度は大きく逆サイドに振って右サイドの田中裕介選手と森谷選手から仕掛けていく。攻撃のやり直し含めて、非常に丁寧にやれていました。もちろん隙があれば、守備ブロックに顔を出した前線の選手に、憲剛選手が縦パスをズバズバと通していきます。ダブルボランチがプレスを受けたときの逃げ場としての左サイドに谷口彰悟という受け手が構えていたことで、ビルドアップがスムーズに機能しました。
 あれだけビルドアップの起点を作れる選手がフロンターレの左サイドで先発したというのは、フィッカデンティ監督にとっても、おそらく誤算だったのではないでしょうか。
 というのも、FC東京の布陣は[4-3-1-2]。
正確に言うと、中盤はダイヤモンド型らしいのですが、前半に関して言えば、守備のときは米本選手、高橋選手、東選手の3枚が中盤の底に並び、トップ下に三田選手が構えるような[4-3-1-2]の布陣に見えました。
 つまり2トップで、中盤がトップ下+3ボランチなので、システムの構造上、マッチアップしたときに左サイドバックでボールを持った谷口選手に対するプレッシングがかかりにくいんですよね。つまり、ここの位置が浮いてフリーでボールを持ちやすいため、フロンターレは左からのビルドアップがいつもより機能しやすかったわけです。
 この展開がさすがにマズイと思ったのか、前半40分ぐらいに、フィッカデンティ監督はシステムを[4-4-2]に変更してきました。三田選手を右サイドハーフに配置することで、左SBでつなぎの起点になっていた谷口選手のところに圧力をかけるという狙いで手を打ってきたのでしょう。前半終了直前に2-0となったため、後半からは選手交代含めてさらに変化を打ち出してきましたが。
 後半にも2得点を追加・・・攻撃陣爆発です。
ただこの試合は、全員の守備意識も素晴らしかったですね。ボールを奪われてからの守備の切り替え、そして球際、端々に強い気持ちを感じさせる泥臭さがありました。
「今日の試合で一番良かったのはケンタロウ(森谷賢太郎)だったと僕は思いますね。プレーでチームにカツを入れていたし、若い選手が前であれだけ頑張ったら、自然と後ろも頑張ろうと思いますから」と話してくれたのは、GK西部選手。森谷選手のハードワークは光っていましたね。選手交代時のあの声援が物語っていたと思います。
 田中裕介選手は「試合中にかける声が、今日はプラスの声だった」と話してくれました。「キツイ時間帯も味方を鼓舞するような声だったし、全員が同じ方向を向いてやれていたと思う」とのこと。苦しい時こそ、前を向く言葉をかける大切さは、ピッチ内もピッチ外も同じなんでしょうね。
 あとこの日の最終ラインは、谷口選手が左SBに入ったことで、4人全員180センチオーバーと高さもありました。川崎山脈復活とまでは言わないですが、パワープレーやセットプレーでの安定感も出て来るかもしれません。
 それにしても・・・4連敗で迎えた多摩川クラシコという舞台で、ルーキーのデビュー戦を、プレーしたことのないポジションでスタメンで送り出す・・・・風間監督は鬼ですね・笑。もし大敗してたらボロクソに言われてますよ、この起用法・笑。
 ただ同時に思い出したのが、フットボールサミットで風間監督をインタビューしたときに語ってくれたこのエピソード。
「(横浜桐蔭大監督時代に)中盤の真ん中をやっている選手をサイドバックに命じたら、『僕は右サイドをやったことがないんです』と言ってきた。『お前、試合中に右サイドに一回も移動したことないのか?』と聞いたら、『それはあります』。『じゃあ、その時間が長いだけだ』と言った」というもの。実際、谷口選手も「ボランチのイメージでやれ」と言われていたようですし、このサッカーは機能してしまえば、ポジションはあまり関係ないのも確かですからね。
 なにはともあれ、リーグ戦初勝利。
これをきっかけに浮上していって欲しいですね。
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