今さらですが、先週の「情熱大陸」は、サッカー選手・香川真司選手でした。
アジアカップ優勝直後の放送ということもあり、本来ならば、「ドイツでの大活躍→アジアカップ優勝」という番組構成にしたかったと思います・・がっ、ご存知のように残念ながら準決勝韓国戦の骨折で決勝直前に離脱。カタールとは違う場所で日本代表の優勝を見守ることに・・・ということもあり、ドイツでの生活を密着した内容が中心でしたね。
彼らしい自然体の様子が感じられる映像でした。プレーで解説されていたのが、ブンデスリーガで見せた「直角フェイント」のようなドリブルで決めたシーン。あれは本当に香川選手らしいプレーだと思います。DFの立場になってみればよくわかるのですが、エリア付近でドリブルを仕掛けてくる相手に対する準備としては、「縦方向」に切れ込んでくるのか、あるいは「斜め」にドリブルしてくるかを想定するところ。しかし香川選手の選択は、「横のドリブル」ですからね。
この「横」っていう動きの変化が意外にも盲点で・・・・ 例えば野球でフォークボールを打ちにくいのは、カーブやシュートなどの変化球が「横」の回転であるのに対して、フォークボールが「縦」に落ちるボールだからというのがあるじゃないですか。動きに落差があるので、視覚的にも瞬間的な反応がしにくいわけです。
香川選手のあの横切るドリブルも似たようなもので、ゴール前でボールホルダーに突然(←これが大事)目の前を横切られる動きをされたら、縦か斜めの突破を準備していたDFは体勢的に準備ができていないですし、そのうえでスペースを捨ててその動きにくらいついていくか、それとも隣にいる味方にマークを受け渡すか、瞬間的な判断も求められるわけです。何度も対戦していれば、その対策もできるでしょうけど、所見では後手になりますよね、あの仕掛けは。
彼はセレッソ時代から日本代表ではプレーしていましたが、J2リーグでのプレーが中心だったため、彼自身の一般的な知名度はさほど高くなかったと思います。ただ、08年&09年シーズンのJ2リーグを見ていた人ならわかると思います。セレッソ大阪での香川選手には乾選手という相棒がいて、あのコンビによる破壊力というのは、本当に脅威でした。
ドリブルをしながら、お互いを見てワンツーを仕掛けてくる距離感とタイミングが絶妙で、対戦相手もわかっていながらやられてしまうというのが、正直なところでした。とにかく彼の周りのスペースをコンパクトにして、ドリブルに入る前のファーストタッチで身体をぶつけて、スピードに乗せない、プレーをさせないというのが精いっぱいの防止策だったように思えます(それでも、一瞬の隙であっという間に置き去りにされ、失点してしまう)。だったら、そのパス供給源を押えればいいのですが、ボランチのマルチネスの緩急の付け方、球出しもうまいだな、これが。1+1が2ではなく、3や4になるというのは、あのコンビの崩しのことをいうのでしょう。まさにキャプテン翼に出てくる翼くんと岬くんの黄金コンビのような突破でした。あれは恐ろしかった。
そんなことも思いつつ・・・それにしても、情熱大陸にサッカー選手が出る放送では、ケツを見せたり(遠藤保仁)、勝負パンツを見せたり(香川真司)、やたらとサービスショット満載ですなぁ(笑)。... 記事を読む
[試合研究]J2第34節熊本対富山から[3-3-3-1]システムを読み解いてみる
安間監督の採用する[3-3-3-1]システムでの試合分析も3試合目になりました。今回の相手は、高木監督率いるロアッソ熊本です。
富山は[3-3-3-1]
11.永冨
28.関原 7.朝日 23.平野
16.谷田 5.長山 27.船津
3.堤 6.濱野 2.足助
31.橋田
前節からスタメン5人を入れ替え。九州での一戦だからかどうかはわかりませんが、九州出身の選手を多く起用。特に前線4人は朝日以外、総入れ替え。ワントップの永冨は長身FW。懸念の左CBには吉井ではなく堤が入った。熊本は[4-4-2]ボックス。GK南、DF築城、矢野、福王、堤、MF吉井、原田、宇留野、片山、FW松橋、カレン。
開始3分に富山がいきなり先制。
左サイドタッチライン際で谷田が素早くアーリークロス。中央での平野の落としを、関原が落ち着いてボレーシュート。これが南の逆をつきあっという間にゴールネットを揺らす。関原はフリーでボレーシュートを放ったのですが、中への仕掛けを見せる谷田の姿勢に、ゴール前に3人が飛び込んでいたことが、この状況を呼び込んだのだと思います。関原は、地元熊本でJ初ゴールを記録するおまけつき。観戦にきていたご両親も感無量といった表情。
前半、リードを奪った富山がゲームをコントロール。前からのチェイスが献身的で、ボールの奪われてからの切り替えも早い。sそしてボールを持ってからの富山は、しっかりシュートで攻撃をフィニッシュ。一方の熊本は、富山の分厚い守備に打開策を見いだせず。中央ではアンカーの長山がしっかりつぶし役となる。懸念していた左サイドも、谷田の守備意識が高く、ボールホルダーへのアプローチが早く、素早いケアで相手の右MF宇留野に仕事をさせない。ここはCB堤選手との連係を含め、前節から改善で来ていると思います。そんなこともあって、高木監督とコーチ陣が戦術ボードとにらめっこする場面が何度も抜かれていましたね。解説の方が「サイドチェンジすれば・・・・」としきりに言ってましたが、実は富山は相手にサイドチェンジさせない戦い方をしているんですよね。1-0で前半終了。
後半の立ち上がり、GKからのビルドアップを高い位置から関原と船津で猛プレス。右サイドでボールを奪取。縦に素早く展開して、走り込んだ永冨が押し込む・・・がっ、惜しくもオフサイド(リプレーで見ても、かなり微妙なタイミングでしたが)。熊本は57分に、松橋を下げてファビオを投入。起点となるファビオの対応で富山が少し後手になります。61分、左からのアーリークロスに宇留野が頭で合わせて同点。これは崩された形ではなく、中に人数も揃ってましたからね。宇留野のヘディングがうまかった。
熊本はファビオにボールを集めて、カレンも広いエリアで動きまわり、富山はそこを捕まえ切れずにピンチを招いていく。70分には、中央のカレンから右サイドへ。橋田が足一本でセーブ。苔口、黒部、石田の投入を行いましたが、逆転にまでは至らず。1-1でドロー。
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この日の前線4人は、永冨、関原、朝日、平野といつものとは違う組み合わせ。そのため攻撃は、ワントップ長身FW永冨を生かそうと、スペースに走らせるよりも、ロングボールを多用していく形が多かったですね。ただハイボールの競り合いでファウルを取られることが多く、彼自身はあまり機能していなかった印象。それ以外では、DFラインの背後に飛び出す朝日の動き出し、サイドからの仕掛けはしっかりできていたように思います。得点シーンも、縦からの仕掛けに中央へ3人が飛び込んでいた。このへんの迷いなくエリア内に飛び出していく意識も評価できると思います。あとはアンカーに長山が入ったことで、守備のつぶしはできる反面、真ん中からのパスに展開には、ややバリエーションが少なくなった印象もある。
守備に関しては、前半はパーフェクトに近い出来だったのでは。単純に中盤にボールを入れられれば、3枚が3段重ねで並んでいるのだから、人数は相手より多く、挟み込みやすい。あるいは中央を堅くして、サイドにボールを出させて、そこを奪いどころにしてしっかり奪い取る。改善が求められた左サイドも、谷田の守備意識が高まっており、熊本の攻撃を手詰まりにさせていました。前半はさぞかしやりにくかったことでしょう。
しかし後半、運動量が落ちた上に、高さを使いながらサイドでキープをするファビオが入ってから、そこにCBが引っ張られて横にゆさぶられて熊本ペースになってしまった感はありました。失点場面に関しても、アーリークロスでサイドを揺さぶられた形です。この試合のように、後半になるにつれて選手の運動量が落ちると、どうしてもサイドのスライドが遅れたり、プレスバックもかかりにくくなりますからね。ゆえにサイドにスペースもできやすくなりますから、その問題をどうごまかしていくか。このへんは、机上ではなく、実戦を経験して現実的な改善策を見つけていくしかないのかな、という感じです(ただこの日に関しては、富山が通常7~8℃だったのに対して、熊本は22℃~23℃だったとのこと。気候的な影響もあったかもしれません)。
いずれにせよ、この時期まで昇格の可能性を残していた熊本に善戦しての引き分け。チームとしても安定した力を発揮できるようになってきていると思います。残り4試合、この[3-3-3-1]システムの成熟度が楽しみです。
J2:第34節 熊本 vs 富山】安間貴義監督(富山)記者会見コメント [ J’s GOAL ]... 記事を読む
[試合研究]J2第33節富山対東京Vから[3-3-3-1]システムを読み解いてみる
はい、もうガッツリいきますよ。
・2010J2第33節富山対東京V(●2-3)
富山[3-3-3-1]
20.苔口
15.石田 9.黒部 7.朝日
16.谷田 22.江添 27.船津
24.吉井 6.濱野 2.足助
31.橋田
[3-3-3-1]で臨む2試合目。前節との違いは、左CBに堤→吉井、GKに内藤→橋田にしたこと。東京Vは[4-2-3-1]。GK土肥、DF福田、土屋、富澤、高橋、MF柴崎晃、佐伯、高木善、菊岡、河野、FW飯尾。平本がベンチスタート。
立ち上がりから20分前後までは完ぺきなヴェルディペース。
富山の布陣は3バック+3ボランチなので、中央は固い。そのため相手はサイドのスペースを狙うのだけど、東京Vの崩し方には工夫があった。富山がボールを取りに行っても、ヴェルディは中盤でワンタッチでパスを回したり、後ろにボールを下げていなしたり、ボールの奪いどころを簡単に絞らせない。そうやって緩急を作ってから中央の飯尾と河野に縦パスが入れるんですよね。中央が固いはずの富山がバイタルで簡単に飯尾にポストプレーをされるし、河野には前を向いてドリブルでつっかけられてしまう富山としては、堅いはずの真ん中でプレスバックが効かず、いいパンチをくらいました。そのうえで、左から崩すと見せて、高橋祥平が中央へ切れ込んでいく。富山の守備は完全に後手となり、非常に苦しい序盤だったと思います。
ただエリア内に入られても、フリーでシュートは打たせず、我慢強く対応。すると20分過ぎからセットプレーで徐々に反撃していく。23分には、流れの中でから左サイドからのクロスに、右CBの足助が飛び込んでボレーを放つ場面も。なんでこの時間帯に右CBの選手がそこに(笑)??足助、ヴェルディ戦ということもあってか、気合入ってましたね。
富山の先制点はカウンターから。自陣でボールを持った朝日が攻め上がり、中央の苔口に縦パス。バウル(土屋)とカンペー(富澤)がしっかりケア。しかし苔口のトラップミスにより、ボールが流れたとこにいたのは黒部。フリーで豪快に蹴り込んで先制。苔口のトラップミスが黒部のゴールにつながった「災い転じて福になる」みたいな形ではありますが、黒部の隣には石田も前線に上がっていて、人数的には3対2になっているんですよね。このカウンターの切れ味には、思い切りの良さを感じます。
追加点も右サイドから。縦に出たボールを石田が仕掛け、エリア内に走り込む苔口へ。キープしながら逆サイドにクロスし、それを朝日が蹴り込んでゴールイン。前線の4人が絡んだ2得点だと思いますが、左右のMFが上下に見せる機動力が、この戦い方では肝になっていることがこの2得点でよくわかる。
前半終了間際の失点場面は、東京Vの右SB福田のクロスを濱野がオウンゴールしたもの。
柴崎晃からのパスを受けた福田はほぼフリーでクロスをあげており、富山からすれば、懸念されていたサイドのスペースを使われた形なわけです。左ボランチの谷田は柴崎のケアをしていて福田への対応が遅れていたのだから、ここは左CBの吉井が真ん中を捨てて、福田の対応に出ていく判断をするべき場面だったのかな、というところ。
ただ一連の流れを巻き戻して見てみると、センターサークル付近での河野のドリブルがそもそもの起点になっているんですよね。対応していたアンカー江添が河野から奪い切れず、ズルズルと自陣まで下がってきて、最終的には左ボランチの谷田、左CBの吉井までも河野のドリブルに引き付けられていて、そのキープから柴崎晃→福田のクロスにつながっている。吉井も河野にくいついた分、結局、中途半端な位置取りになってしまい、中でクロスを跳ね返そうとエリア内で構えているしかなくなっている。ただ形としては濱野選手の頭に当たったオウンゴールですからね・・・悔やまれる失点でした。
後半開始から、東京Vは高木善を下げて、平本を投入して巻き返し。高さとキープ力、そして突進力のある平本を止められず、富山はファウルがかさんでいく苦しい展開。そして同点ゴールは、またも左サイドを使われた形から。ワンツーで抜け出した福田のクロスに、逆サイドから飛び込んできた飯尾のボレーが突きささる。飯尾のマークは足助。よくついていってましたが、あの動き出しで一瞬であそこに飛びこまれると捕まえにくいですね。決めた技術といい、飯尾がすばらしかった。
とはいえ、この局面もポイントは福田の抜け出しにあったと思います。ここでは、まず左の二列目にいた黒部が福田についていこうとしたが振り切られています。相手のSBが攻撃参加してサイドを崩すときに誰がついていくのか、あるいは間に合わないときは誰が出ていくのか。右エリアの守備ではCBと足助とボランチの船津がスムーズに連係しているのですが、左エリアになると、ボランチ谷田とCB吉井でうまくスライドし切れていない印象です。ここは改善の余地ありですね。
その後、富山は前線に、平野、西野、中田とフレッシュな選手を投入し、攻撃に推進力が復活。77分にはCKからのカウンターで平野が独走。朝日へのラストパスを通し、決定的なシュートチャンスを得たが、土肥がこの1対1を弾きだす。ここからは一進一退でした。攻撃で前ががかりになり、守備で負担がかかる時間帯に土屋、富澤、土肥の3人が見せた守りで踏ん張る。その気迫が、柴崎のロスタイム決勝点を生んだのかもしれません。3-2で東京Vの勝利。
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(ベースとなる部分については、ここに書いてます)
攻撃に関しては、狙い通りの形が構築されている印象です。サイドから起点を作れているし、2得点もカウンターから味方が迷いなく駆け上がって奪った形でした。先制点は、黒部のフィニッシュ精度の高さが生きたもの。両サイドMFの石田、朝日の機動力はすばらしいですね。リードを守り切れなかったことは反省点ですが、その後、下を向かずに3点目を狙った姿勢も評価できると思います。土肥のビッグセーブがなければ、富山に勝ちが転がっていたとしてもおかしくはなかった。
守備組織に関しては、この4試合で一番崩された試合だったように思います。このシステムと戦術は、構造上の弱点を隠すために、ボールホルダーに対して逆サイドを使わせないようにうまくポジショニングを取って守っているのですが、東京Vのようにドリブルとパスワーク主体で時間を作られ、中央から守備をはがされるとそれも機能しなくなってしまいます。ただこれは東京Vのボールキープのうまさ、テクニックを褒めるべきでしょう。他のJ2チームも簡単にそれができるかというと違う気もしますし。
あとは左サイドの守備の連係ですね。あえてサイドのスペースにボールを出すように誘い込むのが、このシステムの狙いの一つだと思うのですが、相手の右サイドバックがいいタイミングで抜け出した時、左の守備のスライドがうまくいかずに失点につながるなど、ウィークポイントになっています。なんだろう、相手に落とし穴を仕掛けて誘い込んだはずなのに、そこに自ら落ちそうになってるみたいです(苦笑)。
次節の注目は、ここらへんをどう改善するかでしょうか。
【J2:第33節 富山 vs 東京V】安間貴義監督(富山)記者会見コメント [ J’s GOAL ]... 記事を読む
長友、インテル。
朝、ニュース番組をみていると、もうすごいですね。
何がって、日本ハムの斎藤佑樹投手がキャンプ地入りした話題で、ですよ。
もう隙あらば、キャンプ地から中継でしたからね。
まだプロになって一球も投げていないルーキーの一挙手一投足にそこまで注目するのはいかがなものかと思うと同時に、まわりが過剰に持ちあげている環境に置かれている斎藤投手が、ちょっぴり気の毒に思えてきます。去年は、菊地雄星選手でしたっけ?すごい注目のされ方でしたよね。
まぁ、サッカーファン的には、長友選手のインテル移籍ですよ。正式に決まりました。
・・・インテルって、凄過ぎるでしょ。もはや事件でしょ。
そして長友選手の話題で思いだすのが、某ヴェルディサポーターのこの貴重な写真・・・ひさびさに見たら、更新はやっ!はやくもインテル版になってました(笑)。
インテルミラノDF長友選手とヴェルディサポーターの熱い夏。
・・・長友さん、本当に太鼓叩いてたんすね。
この写真には、林陵平選手(現・柏レイソル)も写っています。彼がヴェルディにいた09年によく話を聞いたのですが、明治大学で同期の長友選手とは家族ぐるみで仲が良くて、家に遊びに来るそうです。林選手はイブラヒモビッチが大好きで、彼のインテルユニのキーホルダーつけていたんだよな・・・大学時代の親友がそのインテルの一員になるなんて、想像できないだろうな。... 記事を読む
[試合研究]J2第32節北九州対富山から[3-3-3-1]システムを読み解いてみる
はい、アジアカップ優勝ムードがまだ冷めやらぬ時期に、去年J2で18位だったチームのサッカーに熱視線を送るこの企画。ようやく[3-3-3-1]での試合となりました。
・2010J2第32節北九州(2-1○)
実は最下位(19位)北九州と18位・富山の裏天王山でした。両者ともに「ここで勝たずにどこで勝つ」ぐらいの気合が入っていた試合だったのは、見ているだけでもわかりました。熱戦でしたね。
富山[3-3-3-1]
苔口
石田 黒部 朝日
谷田 江添 船津
堤 濱野 足助
内藤
[3-3-3-1]システムを初お披露目。右SB西野が出場停止。前節、機能していなかったワントップ・黒部を二列目に、そして苔口をワントップにしています。相手の北九州は[4-4-2]のボックス。GK水原、DF佐藤、河端、長野、関、MF小森田、佐野、ウェリントン、池元、FWレオナルド、中嶋。
立ち上がりは、積極的に攻め合う展開だった。北九州・レオナルドの仕掛けが目立つ。25分。セットプレーで試合が動く。ゴール前中央で得たFKを、関が直接決めて北九州が先制。見事な無回転シュート。Gk内藤は見送るしかない。0-1。
だが富山はここで下を向かず、よりアグレッシブに。
得点には結びつかなかったが、31分の仕掛けが実に鮮やか。ロングボールの競り合いで、センターサークル付近で黒部とポジョンチェンジした苔口がボールを保持。目の前にいた前線3人が一気にゴールに向かって走りだすので、北九州の最終ライン4枚はズルズルとラインを下げて対応。これで苔口がノープレッシャーでゴール前までボールを運んでいく。さらに右にいた朝日が左へとダイアゴナルラン。その朝日を左ボランチの谷田が後ろから追い越していき、最後はあがってきたボランチの江添が中央からフリーでミドルシュート。大きく枠をはずしたが、富山はエリア内に5人飛び込んでいたのがすごい(解説の人も絶賛)。
その直後にもサイドからチャンス。クロスに飛び込んでいったのは、3列目の船津。3枚のボランチがどんどん前に飛び出していく富山に、北九州は対処できず受け身になっていた。35分ごろから北九州も反撃。サイドの深い位置にロングボールを入れてそこから起点を作ろうとするが、うまくいかず。富山に決定機。右サイドで船津と朝日のワンツーでクロス。黒部が反転シュートも水原がセーブ。この前半、水原は大忙し。
後半も富山のペース。特に苔口の裏を狙う動きに、北九州のラインコントロールに苦戦。中でも足助のフィードと江添の展開力が目立つ。59分、攻撃がついに実る。自陣のロングボールを左に流れた苔口が流れて起点に。石田が中央で受け、右に抜け出した石田に絶妙なパスを通す。これをしっかり流し込んで富山が同点。リズムの悪い北九州としては、FW長谷川太郎を入れて盛り返そうとした矢先の失点でした。
その後は、サイドに人数をかけて攻めていく富山のハーフコートマッチ。67分、富山は苔口と石田を下げて、平野と関原を投入。前線にフレッシュなコマを入れて勝ちに行く。一進一退の攻防が続く。74分、左サイドから崩され、クリアミスを拾われ17番中嶋が反転シュート。しかしこれは内藤が超至近距離でビックセーブ。その後、富山は黒部を下げて、長身の永冨を投入。決勝点は83分。平野の蹴ったCKに主将・濱野が打点の高いヘディングでゴールネットを揺らす。ベンチはもみくちゃで大騒ぎ。4分のロスタイムも耐えて、富山が逆転で勝ち点3を獲得。前監督から続いていた連敗も7で止め、安間体制の初勝利を飾った。
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スカパー!の中継での情報によれば、右SB西野が出場停止だったこと、さらにCB陣の調子がよかったため、この布陣を試してみたとのことです。参考にしているのは、チリ代表のビエルサ監督(当時)の戦い方。そうか。安間監督は南米サッカーマニアなのですが、なかでもポジションを崩して選手が後ろから飛び出していくチリ代表のサッカーが好きで、ミーティングで映像を見せていると、甲府監督時代におっしゃってました(普通ならば入手困難であろうチリ代表の試合映像は、日本代表の大木コーチ(当時)経由で確保していたはずです)。
ちなみにビエルサが南アフリカW杯で採用していたのは、[3-3-3-1]ではなく[3-3-1-3]ですが、3枚のCBとその前に3枚のボランチを並べるのは同じですね。守備面で言えば、3バック+3ボランチなので、真ん中は堅い。当然相手はサイドから崩そうとする。3バックの外のスペースを突かれた時は、基本的には左右のボランチが流れて守る。間に合わない場合はCBが出ていく(その際は、逆サイドにいるボランチが中央に絞って最終ラインに入ってカバー)。2トップがサイドに流れて起点を作ろうとするときは、マッチアップするCBがついていく。
攻撃面では、1トップの苔口が常に背後を狙い続ける。1.5列目でプレッシャーをやや受けにくい黒部がポストプレー。トップ下・黒部は札幌戦でのトップ起用よりもはるかに機能しており、守備の負担も少ないし、起点にもなりやすい。苔口と縦のポジションチェンジも頻繁に行う。そこに機動力のある二列目の石田と朝日がどんどん飛び出していく。この4人がカウンターの担い手になる。そこにボランチ、CBもリスクを恐れずにゴール前に飛び出して厚みを加えていく。こういう勇気ある攻撃が、チリっぽさを漂わせております。
そしてこの[3-3-3-1]システムの生命線は、実は両サイドにあると見ています。もちろん[3-3-3-1]という羅列だけを見てたら、サイドのエリアに人は配置されてませんよ。でも3バック、3ボランチなので手薄になると思いがちなサイドのエリアをCBとボランチの選手がサイドに広がって起点を作るところから仕掛けが始まっているんですよね。例えば攻撃を組み立てる際に右サイドのエリアを見てみると、二列目の右MF朝日、右ボランチ・船津、右CB足助の3人が縦の関係で並んで打開しようとしていることに気づきます。一見、サイドには人がいないと思わせておいて、実はそこに人数をかけて数的優位を作り、縦に制圧していく戦い方なのではないかと、にらんでいます。
このへんの発想は、安間監督ならではかもしれません。普通、ピッチに配置されたエリアを区切るとき、いわゆるフォーメーション表記のように、前線、中盤、DFラインという3等分して捉えますが、安間監督は、左エリア、中央エリアと右エリアとピッチを縦切りにした3等分で捉えてサッカーを組み立てる人なので。その縦に区切ったエリア、特にサイドでどう主導権を握るかを考えて、作戦を立てています。
なので、サイドに配置されている選手も、数的優位を確保するためにアップダウンできる運動量を重視してる気がします。圧倒的に攻撃が多かった右サイドを見てみると、二列目の右の選手は前線からの守備で汗をかき、カウンターではゴール前に飛び込んでフィニッシュに絡めるウィング的な能力(朝日)、3ボランチの右は、低い位置で守備をしてから前線に出ていくけるサイドバック的なタフな機動力(船津)という印象です。CBに関しては、高い守備力とサイドで前線へのフィード技術(足助)を求めているのかなという感じです。
北九州戦での対応で見えてきたのは、こんなところでしょうか。
新システムで幸先良く勝利しました。とはいえ、まだまだ整備する余地はありそうです。これをベースにどう戦っていくのか、でしょうね。
次回からはこんなに長く書きません(時間かかり過ぎ・笑)。この戦い方からどう変化したかなどに触れる感じにしていきますね。... 記事を読む
アジアカップ優勝と川島選手の言葉。
祝!アジアカップ優勝!!
いやー、タフな試合でした。
決勝戦という舞台を考えれば、簡単な試合にならないことなど百も承知してましたが、これに加えてオーストラリア戦特有の、あの「なかなかピッチ上でガッチリ組ませてもらえない感じ」って言えばいいんですかね・・・・具体的には「体格差を生かした相手のエアバトル」になるんでしょうけど、ピッチ上ではそういうサッカーに耐え続けるストレスもありましたから。ACLでオーストラリアのクラブと対戦するときは違うんだけど、代表戦だともれなくこういう戦いになるんで面白いですよね。ホント、ジリジリとした時間がずっと続く、見ているだけでも消耗するファイナルだったと思います。
エアバトラー・岩政選手の投入とシステム変更、そしてスーパーボレーを決めた李選手の投入と、ザック采配がことごとくはまったのは言うまでもないですが、この試合に関しては、やはり川島選手でしょう。南アフリカワールドカップのとき以上の、鬼神のようなセービング。GL、そして準々決勝までは決していいパフォーマンスではなかったですから。彼自身にとっても本当に良かった。
試合後のインタビューで、「自分は今まで優勝したことがなかった。はじめて優勝して非常に気持ちいい」と川島選手は喜びの声を口にしていました。
このとき思い出したのが、09年のナビスコカップ決勝戦前に川島選手におこなったインタビューでの言葉です。そこで僕は最後の質問として、「タイトル獲得」を強く口にしていた川島選手に「タイトルに向かわせるこのエネルギーの源は何だと思いますか」と聞いてみたんです。インタビューの最後に投げかけようとしていた、自分なりの勝負球でした。
すると彼はじっと考えてから、丁寧に言葉を紡いでくれました。
まず「フロンターレというチームにとって、チャレンジし続けても、なかなか手が届かないという存在がタイトルだということ。だから欲しい」と。
そしてこう言いました。「僕自身、タイトルを取ったことがないことがあります。一番になったときの気持ち、その道のりを含めて経験をしたことがないので、経験してみたい。それを目指して挑戦することにすごくやりがいを感じるんです」。
彼のブログのタイトルは、座右の銘である「Life is Beautiful」。
人生を美しくするために、「後悔しないことが大事」だと彼は言っています。「人生は決断の連続だけど、一つ一つの決断を公開しないことで自分を肯定できる」と。
そんな川島永嗣選手が初めて掴んだ優勝の味・・・自身のブログでも思いをつづっていますが、なんだか感動してしまいましたよ。
「Champion」... 記事を読む
[試合研究]J2第31節富山対札幌戦
はい、J2富山の試合を見直すという趣味丸出しの企画、2試合目・札幌戦です。
第30節が試合なしとなったため、3週間のインターバルを経て、じっくりとトレーニングを積んで臨んだとのこと。千葉戦同様、[4-3-2-1]システムだが、1トップ2シャドーを総入れ替え、Gkも中川ではなく内藤を起用するなど、先発を大幅に入れ替え。木本が出場停止。
・富山[4-3-2-1]
9.黒部
20.苔口 28.関原
27.船津 22.江添 7.朝日
16.谷田 3.堤 2.足助 19.西野
21.内藤
札幌は[4-2-3-1]。メンバーはGk高原、DF藤山、吉弘、石川、西嶋、MF芳賀、上里、三上、砂川、高木、FW内村。
入り方がよかったのは富山。苔口が鋭い突破を見せて右サイドを崩し、チャンスメークしていた。ほかに目立ったのは、朝日のフリーランニング。神出鬼没な動き出しで、ボールサイドに随所に顔を出し、数的優位を確保。相手守備陣を引き付けるなど、攻撃のサポートをこなしていた。
一方、悪い意味で気になったのは、ワントップ気味に構える黒部。フォアチェックが甘すぎる。コースを切るしぐさだけで、ボールホルダーへの寄せがかなり緩い。簡単に中盤の縦パスが通り、あるいは狙いを済ましたロングボールを蹴らせており、簡単に不利な局面を作らせていた。ここで守備が機能しなければ、富山は守備でリズムが作れない。それでも攻撃で仕事ができていればいいのだが、それもなかった。
最初の決定機は富山に。15分、左サイドを突破した谷田が絶妙なクロス。なによりこの場面、右サイドからフォローに走っていた朝日のフリーランが実に聞いていた。クロスを受けた関原がエリア内でトラップ。ただ、ややもたついたか。角度がなく、GK高原に弾き出される。
その流れで得たCKで事件勃発。
クリアを拾われカウンターをくらい、味方が戻って対処。GK内藤までボールを戻して、もう一度攻撃を仕切り直す。何もこともない場面だ。しかしそのGK内藤に対して、札幌のFW内村が猛然とチェイス。思わずスピードで間合いを詰められた内藤は、慌てて蹴りだすものの、このクリアが内村の体に当たり、ボールはそのままゴールマウスに吸い込まれていく。富山、Gkの信じられないミスで失点。0-1。内藤はこれがJデビュー戦だったようだ。
ここから前半終了までは札幌がゲームをコントロール。富山は焦りなのか、表情が変わったように意気消沈。チーム全体が間延びしており、ボールを奪いに行く時の一人一人の距離感が悪い。連動性がなく簡単にいなされており、たまに奪ったボールもつながらず・・と悪循環。40分に右SB西野がオーバーラップして攻めた場面ぐらいしか見どころがなく、前半終了。
後半、船津と朝日がポジションチェンジ。全体がコンパクトになり、いい奪い方、そしてゴール前に味方が飛び出していく。いいリズムだったが、52分、自陣深い局面で西野が砂川との1対1で見事に完敗。右サイドを破られると、エリア内まで走り込んでいた上里がうまく流し込んで追加点。0-2。
ここで安間監督が動く。関原を下げてカン・ヒョンスを投入。カンはボランチにいれ、朝日を2列目にあげる。さらに左SB谷田をやや高めの位置に上げ、3バック気味にする。時間がたつとさらに右SB西野も上げ、江添を最終ラインに下げ、[3-4-2-1]のような形になった。
黒部
苔口 朝日
谷田 西野
カン 船津
足助 江添 堤
終盤には船津を下げて平野、苔口を下げて永冨を投入。崩した局面もあり、いい形で攻め込むが札幌の集中力も高かった。シュート場面では全員が身体を投げ出してブロック。それをこじゃあけられず、0-2のままタイムアップ。7連敗となった。
千葉戦の負けとは比べると、内容的には低調した順当な負け。悔やまれるのは、内藤のミスによる失点場面。GKのミスは失点に直結する見本のような形。これが6連敗中で下位に沈むメンタルなのか、まるでボタンのかけ違いが起きたように、ズルズルと悪循環に飲まれてしまった。リードした後の札幌もさすがで、ピッチを広く使ってボールを回して富山のプレスをいなすなど、効果的な試合の進め方をしていた。守備でも高原中心に最後まで集中を切らさなかったのが勝因か。
個人的に疑問だったのは、やはり黒部の先発起用。チェイスイング役として機能していない。攻撃面でもまるで仕事ができていなかった。このあたりの舵取りをどう判断するのか注目。
まぁ、この2試合は自分の中では助走。次の北九州戦からが[3-3-3-1]システムになります。
【J2:第31節 富山 vs 札幌】安間貴義監督(富山)記者会見コメント [ J’s GOAL ](10.10.24)... 記事を読む
iPadで将棋をする、将棋を読む。
「将棋世界」という将棋の世界が大好きな人が毎月読むであろう雑誌があります。
これもiPadで読む「電子書籍版」が発売されてるんですよ。しかも斬新的な作りで。
例えば竜王戦7番勝負での渡辺竜王対羽生名人の観戦記事。
将棋をよく知らない人でも、こういう図は新聞の将棋欄で見かけたことがあると思います。
将棋ファンは、観戦記に掲載されているこの図を見て、頭の中に将棋盤を思い浮かべて脳内で駒を進めていったり、あるいは将棋盤を引っ張り出して実際に指して、「ほうほう、羽生さんはそう来たか」とかつぶやくわけですよ。はた目から見ると、すっげぇ地味な光景ですけど、将棋ファンはそんなんをもう何十年もやってたわけですよ。
だけどねぇ、電子書籍版「将棋世界」では、この図にタッチすると、掲載されている将棋盤の駒がカチカチ対局図の通りに動くようになっているんですよ。これ、ちょっと感動するわ。さらに柿木将棋のアプリをダウンロードしていると、将棋ソフトが起動して再現してくれたりもします。
こういう風にiPadを使いこなして将棋指しているおじいちゃんがいたら素敵やん、ですよね。... 記事を読む