[試合研究]J2第33節富山対東京Vから[3-3-3-1]システムを読み解いてみる


はい、もうガッツリいきますよ。
・2010J2第33節富山対東京V(●2-3)
富山[3-3-3-1]              20.苔口
       15.石田   9.黒部   7.朝日
       16.谷田   22.江添  27.船津
       24.吉井   6.濱野   2.足助
             31.橋田
[3-3-3-1]で臨む2試合目。前節との違いは、左CBに堤→吉井、GKに内藤→橋田にしたこと。東京Vは[4-2-3-1]。GK土肥、DF福田、土屋、富澤、高橋、MF柴崎晃、佐伯、高木善、菊岡、河野、FW飯尾。平本がベンチスタート。
 立ち上がりから20分前後までは完ぺきなヴェルディペース。
富山の布陣は3バック+3ボランチなので、中央は固い。そのため相手はサイドのスペースを狙うのだけど、東京Vの崩し方には工夫があった。富山がボールを取りに行っても、ヴェルディは中盤でワンタッチでパスを回したり、後ろにボールを下げていなしたり、ボールの奪いどころを簡単に絞らせない。そうやって緩急を作ってから中央の飯尾と河野に縦パスが入れるんですよね。中央が固いはずの富山がバイタルで簡単に飯尾にポストプレーをされるし、河野には前を向いてドリブルでつっかけられてしまう富山としては、堅いはずの真ん中でプレスバックが効かず、いいパンチをくらいました。そのうえで、左から崩すと見せて、高橋祥平が中央へ切れ込んでいく。富山の守備は完全に後手となり、非常に苦しい序盤だったと思います。
 ただエリア内に入られても、フリーでシュートは打たせず、我慢強く対応。すると20分過ぎからセットプレーで徐々に反撃していく。23分には、流れの中でから左サイドからのクロスに、右CBの足助が飛び込んでボレーを放つ場面も。なんでこの時間帯に右CBの選手がそこに(笑)??足助、ヴェルディ戦ということもあってか、気合入ってましたね。
 富山の先制点はカウンターから。自陣でボールを持った朝日が攻め上がり、中央の苔口に縦パス。バウル(土屋)とカンペー(富澤)がしっかりケア。しかし苔口のトラップミスにより、ボールが流れたとこにいたのは黒部。フリーで豪快に蹴り込んで先制。苔口のトラップミスが黒部のゴールにつながった「災い転じて福になる」みたいな形ではありますが、黒部の隣には石田も前線に上がっていて、人数的には3対2になっているんですよね。このカウンターの切れ味には、思い切りの良さを感じます。
 追加点も右サイドから。縦に出たボールを石田が仕掛け、エリア内に走り込む苔口へ。キープしながら逆サイドにクロスし、それを朝日が蹴り込んでゴールイン。前線の4人が絡んだ2得点だと思いますが、左右のMFが上下に見せる機動力が、この戦い方では肝になっていることがこの2得点でよくわかる。
 前半終了間際の失点場面は、東京Vの右SB福田のクロスを濱野がオウンゴールしたもの。
柴崎晃からのパスを受けた福田はほぼフリーでクロスをあげており、富山からすれば、懸念されていたサイドのスペースを使われた形なわけです。左ボランチの谷田は柴崎のケアをしていて福田への対応が遅れていたのだから、ここは左CBの吉井が真ん中を捨てて、福田の対応に出ていく判断をするべき場面だったのかな、というところ。
 ただ一連の流れを巻き戻して見てみると、センターサークル付近での河野のドリブルがそもそもの起点になっているんですよね。対応していたアンカー江添が河野から奪い切れず、ズルズルと自陣まで下がってきて、最終的には左ボランチの谷田、左CBの吉井までも河野のドリブルに引き付けられていて、そのキープから柴崎晃→福田のクロスにつながっている。吉井も河野にくいついた分、結局、中途半端な位置取りになってしまい、中でクロスを跳ね返そうとエリア内で構えているしかなくなっている。ただ形としては濱野選手の頭に当たったオウンゴールですからね・・・悔やまれる失点でした。
 後半開始から、東京Vは高木善を下げて、平本を投入して巻き返し。高さとキープ力、そして突進力のある平本を止められず、富山はファウルがかさんでいく苦しい展開。そして同点ゴールは、またも左サイドを使われた形から。ワンツーで抜け出した福田のクロスに、逆サイドから飛び込んできた飯尾のボレーが突きささる。飯尾のマークは足助。よくついていってましたが、あの動き出しで一瞬であそこに飛びこまれると捕まえにくいですね。決めた技術といい、飯尾がすばらしかった。
 とはいえ、この局面もポイントは福田の抜け出しにあったと思います。ここでは、まず左の二列目にいた黒部が福田についていこうとしたが振り切られています。相手のSBが攻撃参加してサイドを崩すときに誰がついていくのか、あるいは間に合わないときは誰が出ていくのか。右エリアの守備ではCBと足助とボランチの船津がスムーズに連係しているのですが、左エリアになると、ボランチ谷田とCB吉井でうまくスライドし切れていない印象です。ここは改善の余地ありですね。
 その後、富山は前線に、平野、西野、中田とフレッシュな選手を投入し、攻撃に推進力が復活。77分にはCKからのカウンターで平野が独走。朝日へのラストパスを通し、決定的なシュートチャンスを得たが、土肥がこの1対1を弾きだす。ここからは一進一退でした。攻撃で前ががかりになり、守備で負担がかかる時間帯に土屋、富澤、土肥の3人が見せた守りで踏ん張る。その気迫が、柴崎のロスタイム決勝点を生んだのかもしれません。3-2で東京Vの勝利。
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(ベースとなる部分については、ここに書いてます)
攻撃に関しては、狙い通りの形が構築されている印象です。サイドから起点を作れているし、2得点もカウンターから味方が迷いなく駆け上がって奪った形でした。先制点は、黒部のフィニッシュ精度の高さが生きたもの。両サイドMFの石田、朝日の機動力はすばらしいですね。リードを守り切れなかったことは反省点ですが、その後、下を向かずに3点目を狙った姿勢も評価できると思います。土肥のビッグセーブがなければ、富山に勝ちが転がっていたとしてもおかしくはなかった。
 守備組織に関しては、この4試合で一番崩された試合だったように思います。このシステムと戦術は、構造上の弱点を隠すために、ボールホルダーに対して逆サイドを使わせないようにうまくポジショニングを取って守っているのですが、東京Vのようにドリブルとパスワーク主体で時間を作られ、中央から守備をはがされるとそれも機能しなくなってしまいます。ただこれは東京Vのボールキープのうまさ、テクニックを褒めるべきでしょう。他のJ2チームも簡単にそれができるかというと違う気もしますし。
 あとは左サイドの守備の連係ですね。あえてサイドのスペースにボールを出すように誘い込むのが、このシステムの狙いの一つだと思うのですが、相手の右サイドバックがいいタイミングで抜け出した時、左の守備のスライドがうまくいかずに失点につながるなど、ウィークポイントになっています。なんだろう、相手に落とし穴を仕掛けて誘い込んだはずなのに、そこに自ら落ちそうになってるみたいです(苦笑)。
次節の注目は、ここらへんをどう改善するかでしょうか。
【J2:第33節 富山 vs 東京V】安間貴義監督(富山)記者会見コメント [ J’s GOAL ]

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