書評:バルセロナが最強なのは必然である

サッカー本ソムリエ・いしかわごうが今回紹介するのは、この本です。
$いしかわごうの「サッカーのしわざなのだ。」
 まずこの本で語られている「バルセロナ」というのは、グアルディオラの一年目、つまり3冠を達成したときのチームを軸に解明しています。
あれから2年が過ぎ、さらなる進化を遂げていることは、2010ー2011シーズンのCLファイナル、マンチェスターユナイテッドに完勝した試合が証明されてますよね。あのゲームには、本当に脱帽させられました。
この本では、そんな「美学と効率」を両立させたバルセロナのフットボールのメカニズム、そして根底にある哲学をなんとかして言葉で説明しようと試みています。
 「フットボールに絶対的な真実はない」。
なぜなら「人も出来事もロジック通りには機能しない。それほど簡単なものではなく、予測はできない。数学の方程式のようにも解けない。ロジックによって整理される解答では及ばない世界なのだ。システムを操るためには、相互に影響しあう要因の組み合わせを見なければならない。原因と結果だけの単純な連続を見る考え方では不十分だ」、「部分ごとに分けて現象だけでは組織の全体像は掴めない」、「人が生きるうえで感じる複雑さとフットボールにおける新たな考え方を取り入れて、バルセロナのプレーを追及する」などなど・・・複雑性のパラダイムを使って、フットボールの基本概念を説明しようとしている内容なので、巷にあるサッカー戦術本だと思って手を出したら、相当に面を食らうと思います。
哲学者の言葉が何度も引用されているし、還元論、機械論、複雑性などにも話が及んでいたりします。僕はこの「Part1:バルセロナのフィロソフィーを解明する」を読んでいる間、何度も脳ミソがパンクしようになりました・笑。
 一方、「Part2:バルセロナのプレーモデル」では、図やイラストを用いながら、戦術的な側面を解析しているので、サッカーファンとしてはかなり読みやすいです。
「バルセロナの守備は、実は攻撃から始まっている」とはよく言われることですが、個々の対応と役割を、各ポジションの選手について詳細に言及しています。いかにバルセロナの攻守が緻密で、そしてどのように局面がオーガナイズされているのか。かなり細かく分類して紹介しています。バルサのメカニズムをより厳密に把握したい人は、ここだけを入念に読み込んでみるのもいいかもしれませんね。巻末には、この本の訳者・羽中田さんのCL2010ー2011CLファイナルの試合分析も掲載されています。
結論:既存の戦術本にある簡略化したような解説ではあのメカニズムがどうにも満足できないぜ、というようなコアなバルサファンは読んでみてください。あと、複雑性のパラダイムを使ってフットボールの基本概念を説明しているので、そういうフットボールの捉え方に興味がある方にもオススメですね。とにかく、歯ごたえはあります!
バルセロナが最強なのは必然である グアルディオラが受け継いだ戦術フィロソフィー/オスカル・P・カノ・モレノ

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調べてもわからないサッカーのすべて

家に帰ったら、ポストに本が届いていました。
「調べてもわからないサッカーのすべて」
$いしかわごうの「サッカーのしわざなのだ。」
 サッカーライター・猪狩さんの本です。
サッカーのいろいろなマニアックな面白いデータを検証している内容で、中村憲剛選手と遠藤保仁選手のロングインタビューが掲載されているということで「読みたいなー」と本屋で物色していたのですが、これがなかなか置いてない!
そこで先日、スタジアムで本人会ったときに「猪狩さんの本、売ってないですけどー」と言ったら、「じゃあ、サッカー本・ソムリエのいしかわさんに送りますよ!」とのこと早速、献本していただきました。いや、なんか業界内では思った以上に「サッカー本ソムリエ」として認識されているみたいでビックリしてます。あっざーす!
 まだパラパラとしか読んでいないのですが、中村憲剛選手には「ラッキーゴール2年連続1位」というデータについて、遠藤保仁選手には「5本以上パスをつないで決めたゴール数1位」というデータについて、その理由を本人の口から聞いて紐解くことで、彼らのサッカー観が垣間見れましたね。
既存の質問とはまるで違う切り口なので、たぶんインタビューを受けている本人たちも、面白く話していたんじゃないかな、と勝手に想像してしまいます。
「ふぇー、そんなんだ」というよりは「そこに目をつけるか!?」といった感じのデータ本なので、面白いですよ。
調べてもわからないサッカーのすべて/猪狩 真一

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今回は軽い紹介と言うことで。全部読んだら、書評をしっかり書きたいと思います。
サッカー本ソムリエの書くサッカー本が詠みたい人はクリックを。
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バルセロナが最強なのは必然である

サッカー本ソムリエ・いしかわごう、現在3冊のサッカー本を並行して読んでるんですよ。
$いしかわごうの「サッカーのしわざなのだ。」
・バルセロナが最強なのは必然である
・欧州サッカー批評
・戦術リストランテ
なかでも「バルセロナが最強なのは必然である」は歯ごたえありますね。
バルセロナが最強なのは必然である グアルディオラが受け継いだ戦術フィロソフィー/オスカル・P・カノ・モレノ

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この本、読んだ人、いますか?
なかなかハードじゃないっすか?
ちょっとばかしバルサに詳しいからと勘違いして読み進めると、「??????」ってなります。例えば第1章からの「バルセロナのフィロソフィーを解明する」のところなんて、まるで国語の難しい評論文を読んでいたような感覚に襲われます。
だって、「現実を体系的に理解する」、「複雑性のパラダイムの思考を取り入れる」とかそんな表現がたくさん出てきますからね。還元論、複雑性に触れていたりするので、それこそ本文の途中で傍線が引っ張ってあって、「傍線の単語と同義語を次の選択肢a~eの中から選びなさい」とか入試問題で出題されてもおかしくないレベルの文章です・笑。
 羽中田昌さんが翻訳をしているのですが、一つの単語を訳すために本を一冊読んだり、一行を訳すのに三日間考え込んだりしたそうです。すげぇ大変だったんですな。
 とはいえ、第2章のバルセロナのプレーモデルを紐解くあたりになると、図やイラストも豊富なので、だいぶ読みやすくなっている印象です。僕はようやくそこまでたどり着きました。
バルササッカーの機能美を、巷のサッカー解説本とはまったく違う切り口で解明しようとしているので、バルサの凄さを読み取りたい人は、読んでみてもいいかもしれません。ただ、「それなりの覚悟いりまっせ」とアドバイスしておきます・笑。
今回のはただの「読書中」の感想なので、読み終わったらちゃんと書評を更新しようと思ってます。
バルセロナが最強なのは必然である グアルディオラが受け継いだ戦術フィロソフィー/オスカル・P・カノ・モレノ

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「つーか、サッカー本ソムリエって何よ?」って思ってる人はクリック。
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戦術リストランテ購入。

昨日は取材帰りに本屋に寄って、コラソンの最新刊6巻とこの日発売されたばかりの西部さんの「戦術リストランテ」を購入。
$いしかわごうの「サッカーのしわざなのだ。」
「戦術リストランテ」はフットボリスタで連載されていた戦術コーナーを単行本化したものです。レストランのように戦術メニューを料理し、提供してくれています。「戦術と料理ってどういうこと?」と思うかもしれませんが、まえがきにはこんな文章が書いてありました。
「10-11シーズンで圧倒的に強かったバルセロナの攻撃陣は、小さい選手ばかりになっていました。バルセロナは自らの勝ちパターンを突き詰めていった結果、FWとMFが軒並み小型化したのです。自分たちの特徴、武器を先鋭化させていくと、チームがひとつの人格のようになっていきます。人の長所と短所が表裏一体の関係にあるように、チームはまとまればまとまるほど長所短所がはっきりしてきます。
 
 辛い料理が好きな人には、万人向けのカラさでは満足できません。辛いなら、とことん辛いほうがいい。もちろん、辛いだけではなく美味しくなければダメですが、中途半端な辛さでは良くない。しかし、そうすると辛い料理が苦手な人にはまったく食べられない代物になってしまいます。つまり、ウチは本格的に辛い料理で勝負したいと決めた時点で、辛いのが苦手なお客さんを切り捨てる覚悟が必要になってきます。戦術もそれにちょっと似ています。 」

 もともとはフットボリスタの人気連載コーナ-ですし、西部さんの本なのでわかりやすくて読みやすいです。今読んでいる「バルセロナが最強なのは必然である」(←これが読み応えあるんだな!!)が読み終わったら、こちらを読み始めようと思っております。
戦術リストランテ/西部謙司

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バルセロナが最強なのは必然である グアルディオラが受け継いだ戦術フィロソフィー/オスカル・P・カノ・モレノ

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書評:野洲スタイル

いしかわごうの「サッカーのしわざなのだ。」
この本が発売したのは、野洲高校が選手権で優勝した06年です。
だから少し昔の本なのですが、現在の川崎フロンターレには、このときの優勝メンバーである楠神順平選手と田中雄大選手がいて、先日田中雄大選手が初スタメンを飾ったということで、あらためて野洲高校のことを知りたくなって再度購入しました。
 読み直してみたのですが、当時読んだときとは、全然違う印象を受けましたね。
野洲高校でセクシーフットボールの作り上げるまでの山本監督紆余曲折、そのスタイルは静岡学園や読売ユース(当時は川勝監督が指揮していた!)などの影響があったなどの話は興味深かった。ただ、優勝メンバーである楠神選手や乾選手(ボーフム)の選手個人ことはそれほど詳しくは触れていなかったかな。
個人的には、山本監督が「前田とか田中大輔がいなかったら、野洲の歴史はない」と言い切っていたところが印象的でした。
 前田とは、前田雅文選手(現在:草津)です。
ガンバ時代、Jリーグ通算1万ゴール目を決めたことで一躍注目を浴びたシンデレラボーイですね。08年と09年には甲府に所属していました。ただ甲府時代はケガに泣かされて、あまり活躍はしていないんですよ。そういえば、「甲府でやっている練習は、野洲と似た部分があるんですよ」と前田選手が語っていたのを思い出しましたわ。
 個人的なことをいうと、自分も当時の「セクシーフットボール」に衝撃を受けたクチです。
 国立競技場でのあの野洲対鹿実の決勝戦は忘れられないですね。
高校生なのにテクニック抜群で、しかもヒールパスでガンガンつないでいって、「なんだコイツら?」みたいな。後ろに座っていた高校生とかが「やべーよ、コイツラ」と連発してましたから。案の定、ボール取られたら大ピンチになるんだけど、そのヒヤヒヤ感もたまらない。試合見ながら、「こんな危なかったしいサッカーでよく決勝まで勝ちあがってきたな、おい」と思ったもんです。
 そしてあの延長戦での鮮やかな決勝点で観客総立ちっていうね。自分が今のサッカーライターの仕事を始めたばかりで、食べていけるかどうかわからなくて不安ばっかりだったけど、「サッカーってすげぇな」って思わされた試合でしたから。
 その決勝点の場面がこちら。

 決勝点の起点は、今年関西大からフロンターレに入った田中雄大の左足のサイドチェンジから生まれたものでした。
楠神選手、田中雄大選手のルーツを知ることのできる一冊です。
野洲スタイル/山本 佳司

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ブラックジャック創作秘話。

$いしかわごうの「サッカーのしわざなのだ。」
「ブラックジャック」は大好きな漫画です。中学生のときに古本屋で買い集めて何度も読んでました。秋田書店の全25巻全部持ってました。これは不朽の名作です。
ブラック・ジャック (1) (少年チャンピオン・コミックス)/手塚 治虫

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 ブラックジャックに出てくるキャラクターや作品がどういう発想で生まれたかという経緯を紹介するのではなく、手塚治虫が、漫画作りに注いでいた情熱と執念を、制作現場の関係者からの証言で綴られている内容ですね。今でいうと、「プロフェッショナル 仕事の流儀」みたいな感じ。
 例えば、仕事場での手塚治虫の姿。
「ベレー帽をかぶるのなんて、取材のときだけです。深夜になり冷房がストップしたビルの部屋の中で汗だくになり、メガネをはずして鉢巻を締めて、貧乏ゆすりをしながら、肉体労働者のように・・・・眼で原稿を喰らうように描いてました」と、締め切り間際の修羅場の生々しい姿が描写されてます。
 一番印象的だったのは、手塚治虫の異常ともいえる多忙ぶりと、漫画制作にかける執念ですね。
締め切りを何本も抱えているので、移動中のタクシーや飛行機の中で原稿を描くのは当たり前。さらに海外から原稿を間に合わせるときは、「このページの背景は、ブッダの前々回の14ページの5コマ目の木々・・・」など国際電話で編集者に指示を与えて背景を描き加えさせて完成させてますからね。
 そこに対応しなければならない編集者も過酷です。当時はインターネットはもちろん、ケータイもFAXもない時代なので、通信手段が電話しかないわけで。貨物便がなくなってから原稿が完成したため、見ず知らずの乗客に原稿を預けて羽田空港までの空輸を頼んだり、もう便利になった今では考えられないようなエピソードが多数。
 そして投稿漫画を選出する側になっても、「本当は自分が応募したいんですよ」と笑顔で言ってしまう情熱。
 モノを作るとはどういうことなのか。
漫画に限らず、何らかのジャンルで「クリエイター」を目指す人には刺激的な作品ですね。
ブラック・ジャック創作秘話~手塚治虫の仕事場から~ (少年チャンピオン・コミックス・エクストラ)/宮崎 克(原作)

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ブラック・ジャック The Complete seventeen Volume set 全17…/手塚 治虫

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書評:紳竜の研究

 数年前に発売された、島田紳助の「紳竜の研究」というDVDがある。
紳竜の研究 [DVD]/島田紳助、松本竜介,島田洋七 島田洋八,オール巨人 澤田隆治 他

¥6,090
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紳助竜介の漫才を収録している2枚組のDVDなのだけど、実はこれビジネス方面からも非常に高い評価を受けているDVDだったりする。それが、特典として収録されている島田紳助がNSC生の前で一度だけ行ったという特別授業。冒頭に「世の中はすべて才能」と言い切ったうえで、漫才の教科書の作り方、XとYの公式、テレビタレントしていかに売れるか、そしてM-1での勝ち方などタレントとしての戦略やテレビでの生き抜き方を、島田紳助が冗談抜きで100分間ひたすら話し倒しているのだ。
 島田紳助という人は、天才的にしゃべりのうまい芸人ではあるが、それ以上に漫才やテレビの仕組みを徹底的に研究し尽くして、効率的な努力を猛烈にしていたのがよくわかる。一見の価値はありますね。いろいろな分野で応用できる考え方ですし、そんじょそこらのビジネスセミナーに通うよりも、はるかに勉強になると思いました。ビジネス本や教材などでも紹介されていることがあるほどです。
見てもらえればわかるのですが、これは正直、圧倒されますね。
この講義を文字に起こした本も発売されています。
自己プロデュース力 (ヨシモトブックス)/島田 紳助

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ただやはり映像で見たほうが印象に断然残りますね。あの語り口に引き込まれます。
あとネットで見かけたんですけど、島田紳助とアップル社の創業者スティーブ・ジョブスには共通点が多いそうです。
<島田紳助>
56年3月24日
74年 弟子入り
77年 紳竜結成
85年 解散
04年 傷害事件で休業
11年8月23日 引退
<スティーブ・ジョブス>
55年2月24日
74年 就職
77年 アップル立ち上げ
85年 解雇
04年 ガン治療で休業
11年8月25日 辞任
スティーブ・ジョブズ 驚異のプレゼン―人々を惹きつける18の法則/カーマイン・ガロ

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スティーブ・ジョブズの流儀/リーアンダー ケイニー

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スティーブ・ジョブズ 驚異のイノベーション―人生・仕事・世界を変える7つの法則/カーマイン・ガロ

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僕のプレミア・ライフ

 「FOOT×BRAIN」で紹介された映画「僕のプレミアライフ」。
もともとは書籍「ぼくのプレミア・ライフ」を映画化したもので、むしろサッカーファンにとっては原作のほうが馴染み深いんじゃないですかね。生活の中心はアーセナル、寝ても覚めてもアーセナル。いまでも文庫本として出ているので、まだの方にはぜひ読んで欲しい一冊ですね。
ぼくのプレミア・ライフ (新潮文庫)/ニック ホーンビィ

¥700
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「僕はアーセナルに鎖でつながれてしまった。」
「ぼくらは日に何時間も、年に何ヶ月も、一生に何年もの時間を、自分たちではコントロールできないものに投資している。」
「これまでの23年間、僕はずっと、細かい活字で書かれた契約書を隅から隅まで眺め、ファンであることをやめられる方法はないか探してきた。だが、そんな方法など見つからなかった。」

 などなど、フットボールにとりつかれた作者ならではのコトバの数々に、きっとなにかを感じることと思います。文庫本化されており、お手軽な価格で買えるので、一読の価値ありです。
 「フットボール・チームというのは、サポーターを悲しい気持ちにさせる方法なら次から次へと無数に発明してくれる。」
・・・・・うーん、サポーターの胸にグサリと突き刺さる、タイムリーな文章を紹介してしまいすみません(苦笑)。
ファンでいることについて、ぼくにわかっている唯一のこと ーどんなにそう見えようと、それは代替的な喜びではない。だから、スポーツなんて見るものじゃなくてするものだよ、なんていう意見は的外れだ。フットボールにおいては、見ることがすることに一致する。
 特に最後の「フットボールにおいては、見ることがすることに一致する。」の部分。ここがサポーターの心情のすべてですな。本国イギリスで100万部を超す大ベストセラーになったそうです。
アーセナルといえば・・・元アーセナルのリュングベリが清水エスパルスに移籍だとか。ひさびさの超大物ですね。
ちなみに稲本選手はアーセナル時代にチームメイトですね。9月24日には等々力で川崎フロンターレ対清水エスパルス戦がありますね。... 記事を読む