コンフェデ杯ブラジル戦雑感〜ピッコロの気分。

 コンフェデ杯ブラジル戦。
 完敗ですね。
昨年の親善試合では真っ向勝負を挑んで撃沈。今回はそれなりに組み合えるような戦い方を選択したとは思うのですが、それでも軽くひねられてしまった印象です。
 立ち上がり、日本は集中していたと思います。
しかし開始3分、ネイマールに被弾。矢のようなライナークロスをフレッジが落として、それを一閃。あのコースは川島選手もノーチャンスでしょう。最終ラインの対応にも批判されるようなミスはなかったとも思います。でも、それでもこのレベルではやられてしまうのが現実です。
 あえて指摘するならば、左からマルセロがクロスを入れるときに棒立ちだった本田選手の対応でしょうか。まだ立ち上がりということもあり、相手との距離感や間合いが掴めていなかったのかもしれませんが、あそこは彼がアプローチすべきだったかもしれません。
 この試合のスタメン、ザッケローニ監督は前田選手ではなく清武選手を起用してきました。守備のときなどは本田選手と岡崎選手を2トップにした[4-4-2]のブロックを作って対応しているように見えましたが、厳密には岡崎選手のワントップにした[4-2-3-1]だったそうです。
 早々に失点してしまったものの、コンパクトに守りながら、防戦一方にならずによく攻めに転じていたと思います。ただ奪った後のプレッシャーが速いですし、ボックス付近まで持たせてもらっても、エリア内にはまるで入らせてもらえません。
 川島選手の好セーブもあり0-1で前半をしのいで終えたのですが、後半開始直後の3分にまた失点。またライナー性のクロスからやられてしまいましたが、左サイドで起点を作ってクロスを入る前に、少しでも最終ラインを上げておけば、ボールが足元に収まっていたスペースも消せていたかもしれません。もちろん、非常に難しいところではありますが。
 これで0-2。ネジをしめ直したはずが、そこでいきなりやられてしまいました。ここらへんはさすがですね。こちらの心を折る技術に実に長けてますわ。
 このブラジル相手に後半だけで0-2からひっくり返す力は、残念ながら、今の日本代表にはありません。選手のコンディションを見ても、ワールドカップ予選を終えてドーハからの長距離移動もあった影響か、日本の選手、後半はかなりキツそうでしたね。特に遠藤選手は珍しく身体が重そうでした。この大会の為に、万全の準備していたブラジルとはコンディション面での差も響いたと思います。それにこういう展開で巻き返したくても、格上相手にパワーを出せるスーパーサブのようなカードや戦い方を含めたオプションが見当たらないことにも感じましたね。
 そういう意味でも決定的な2点目でしたし、残り2戦を考えたら、0-2で終わらせておくべき試合でした。しかしロスタイムに裏を突かれて失点し、0-3。スコアこそ昨年0-4から縮まりましたが、やっている選手としては、もしかしたら前回以上に力の差を感じたかもしれません。
ワールドカップで優勝したいなら、あと1年でこのブラジルと少なくとも対等に渡り合わないといけないわけです。なんすかね。あと1年の修行で地球に来るナッパとベジータを迎え撃たないといけないときのピッコロみたいな心境ですね・苦笑。
 その前に・・・まずは第2戦ですな。相手はイタリア。
さきほど終わったイタリア対メキシコは、2対1でイタリア。当たり前ですが、イタリアも強いです・笑。全体を通じて終始イタリアペースでしたし、メキシコもPKで追いつく意地を見せ、劣勢ながらもかなり粘り強く守ってましたが、最後はバロテッリが個人技で強引にこじ開けました。いやはや、強いっす。
楽しみです。
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イラク戦雑感〜機能しなかった攻撃陣。

 ワールドカップ予選イラク戦。
最終節がお休みのため、日本はこれが最終戦です。試合は後半44分にカウンターで岡崎選手が決めた1点で逃げ切り、1-0で勝利。まさに辛勝でした。
 「うーん・・・」という試合内容でしたね。
まずメンバーについては、最終ラインにCBに伊野波選手、右SBに酒井宏樹選手。中盤は、ボランチに細貝選手、トップ下に香川選手、左に清武選手、そしてワントップにハーフナー選手と言った具合が変更点です。先発が期待された憲剛選手は、残念ながらベンチスタートとなりました。
 おそらくザックの頭の中には、コンフェデの連戦を想定して試しておきたいものがあったのでしょう。そんな顔ぶれではありましたが、これが機能したかというと”否”でしょうな。
 試合内容うんぬんよりも、まず選手達の動きが、かなりしんどそうな感じを受けました。
テレ朝の中継によれば、風が強く、空気が乾燥していて眼が痛いほどだと言っていました。それでいて給水タイムが設けられるほどの30度越えの暑さですから、気候としては相当に過酷だったのだと思います。サッカーは体力を使いますが、それ以上に選手の思考力が鈍るような環境だったのではないでしょうか。日本は勝ちが絶対に必要な状況ではなかったですが、内容をテストにも不向きな条件で、なんか難しかったですね。
 一方、日本に勝たないといけないイラクは、結果最優先であり、やるべきことをシンプルにして徹底してきた印象です。地上戦ではテクニックのある選手よりも、スピードのあるアタッカーをサイドに走らせて勝負。そしてシンプルなロングボールで日本の最終ラインに圧力をかけてきました。
 これに手を焼いていたのは事実ですが、伊野波選手と酒井宏樹選手の入った守備陣は、全体的にそつなくやっていたと思います。チーム全体が間延びしてしまったことで、カウンターを受けた場面も何度かありましたが、局面勝負に晒されながらも冷静に対応。ロングボールの処理を含め、劣勢の時間帯でも粘り強く守り、及第点での出来だったのではないでしょうか。
 攻撃陣は機能しませんでしたね。
暑さで動き出しが少なかったというのもあると思いますが、ワントップのハーフナー選手、トップ下の香川選手の持ち味が活きる場面が少なく、完全なる消化不良に終わりました。特に香川選手は、やはり活かされるプレイヤーだとあらためて感じました。自身の良さである、相手を外してフリーになった瞬間に走りながらボールを受けてスピードに乗る動きも、そのタイミングで足元にボールをつけてくれる味方がいなければ、マンUのようには輝けません。本田選手のようにバイタルエリアでも身体でキープできるタイプではないのですから。
 攻撃陣であえて評価するならば、清武選手でしょうか。
前半31分の場面。香川選手が中盤の底まで下がって相手のマークを引きつけた瞬間、清武選手が左から中央に寄っていき、わざとサイドバックがつきにくい間の位置でボールを受ける。そこで生まれた左サイドのスペースに長友選手がオーバーラップ。高い地位で起点を作って清武選手が絡み、クロスにハーフナー選手がヘディング。完全なる決定機でしたし、いい連係でした。こういう崩しをもっと観たかったですね。
 憲剛選手は後半の残り25分という場面で清武選手に代わって登場。トップ下に入り、香川選手が左サイドにスライドする形になりました。
 ただ捨て身の攻撃に出てきていたイラクに押され続ける展開でしたし、中盤も間延びしていて、なかなか憲剛選手のところにまでボールが運ばれてこず、ボールタッチ自体が少なかったですね。ボールを持ったときは持ちすぎず、シンプルにさばいてテンポをあげていたのはさすがでしたが、ボールに触る回数自体が少なかったので、「これぞ中村憲剛!」という見せ場を作れませんでした。やはり試合の始めから観たかったですね。
 それでも岡崎選手のゴールで勝ち切ったので、深夜まで起きて観ていた日本のサッカーファンも報われましたが。ただ収穫という点では物足りなかったと思います。これを受けてザックがコンフェデのグループリーグ3試合をどうやりくりするのか。
 それにしても、この試合が行われたのはカタールのドーハでした。あのドーハの悲劇が1993年ですから、あれからちょうど20年ですか。いろいろ考えさせられますね。そりゃあ、僕も年を取るはずだわ・笑。
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オーストラリア戦雑感。

 無事、ワールドカップ出場が決まりました。5大会連続出場決定です。よかった、よかった。
 しかし劇的でしたな。
なんだろうな・・・ワールドカップ出場切符がかかったPKを、ロスタイムに蹴る。なんか漫画じゃないとありえないようなシチュエーションですよね。ゾクゾクしますわ。フットボーラーとしてどんな感覚に襲われるのでしょうか。
 そしてそのPKをド真ん中に蹴り込んで成功させた本田圭佑選手のメンタリティーには、ただただ脱帽です。強心臓だわー。ちなみにこのPKをベンチで見守る中村憲剛選手は、「マジで決めろよ、マジで」とつぶやいていました。日本全国民の思いを代弁していましたね。
 試合は自宅でテレビ観戦してました。
試合直前には、FM NACK5の「スポファイ」に電話出演して、試合の見所などモロモロのポイントを話させてもらいました。キーマンとしては岡崎慎司選手と中村憲剛選手を挙げさせてもらったのですが、岡崎選手の話題で次の質問に移ってしまい、憲剛選手のことを話せず・・・あんな話や、こんな話をしたかったのにー・笑。
 
 メンバーは戦前の予想通り。ザックジャパンにおけるベストメンバーでの[4-2-3-1]システム。さすがにこの一戦でギャンブル的な布陣やメンバーは送り出しません。
 試合は思いのほか、立ち上がりからオープンな展開になった印象でした。もっとお互いに慎重になるかと思いきや、オーストラリアも積極的に仕掛けてきましたね。懸念されていたケーヒルへのハイボールは、今野選手と吉田選手がうまく対応。むしろ空中戦よりも、前半はスピードを生かした地上戦にヒヤリとさせられましたが、川島選手のビッグセーブで救われました。
 攻撃に関しては、やり慣れたシステム、気心わかったメンバーということもあって、実に連動がスムーズでした。そしてやはり本田選手がいると、攻撃が格段に循環します。特に左サイドの崩しですよね。本田選手が高い位置でボールをキープして起点を作る。そのタメを使って長友選手が左サイドからオーバーラップして来る。そこに香川選手が絡み、3人で相手のゴールに圧力をかけていき、さらに遠藤選手も中盤の底から顔を出して厚みを加える。やはりここが日本の生命線ですね。
 それだけではなく、本田選手はゴールが見えれば、強引にでもミドルシュートを打っていきますから。相手に十分な脅威となります。結果的には彼のミドルがCKになり、彼のクロスがPKを呼び込みました。
 もちろん冷静に見ると、ザックの采配しかり、課題も残った試合でした。ただそこからへんを細かく分析し出すと文章がかなり長くなりそうなので、ここで止めておきます・・・というか、他にまだ原稿が残ってるんだよーーー!!・笑。
ワールドカップ出場は決めましたが、最終戦のイラク戦、そしてコンフェデと6月は日本代表月間ですね。憲剛選手も無事コンフェデのメンバーに選出されましたし、楽しみにしたいと思います。
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ブルガリア戦雑感。

6月4日に控えたオーストラリア代表戦。そのテストマッチとして行われたブルガリア代表との試合は0-2でした。
 まず言うと、ブルガリア代表は十分に強かったですね。日本の課題を浮き彫りにさせてくれる感じの”いい手強さ”でした。欧州予選でイタリアについで2位をキープしているだけのことはあります。ビッグネームがいないにもかかわらず、ですから日本が学ぶべきものがあるチームだな、とかいろいろ考えながら見てました。
 さて日本に目を向けると、前半45分は[3-4-3]にトライ。
個人的にはこのトライは悪くないと思ってます。今の日本代表は[4-2-3-1]という「自分たちの戻れる場所」をしっかり持っているチームです。ボールを保持できる展開ならば、完全に相手を押し込める戦い方ですし、そのオプションを増やしておく姿勢は評価したいと思ってます。
 実際の効果としては、前線の配置がどうだったのかな、という気はしました。前半、3トップの両ウィングに入ったのは香川選手と乾選手でした。セレッソ時代よろしく、このコンビは2シャドー的な役割でサイドから中央に入っていく動きを得意としています。それはそれで前線のストロングポイントになっていたし面白かったのですが、その反面、[3-4-3]の特徴である幅を広く使った攻撃がなりを潜めてしまった印象があります。具体的には、駒野選手と内田選手という中盤の両サイドですよね。周囲と連係しながら人数をかけてサイドを崩したり、深くえぐってクロスを上げるといった、サイドを起点にした攻撃を出すことがあまり出来ませんでした。
 ただ[3-4-3]はこれで、まだ5試合目。もう少し時間をかけていけば、出ているメンバーの配置による特徴や距離感を含めて整備できるんじゃないですかね。
 守備に関して言えば、サイドチェンジされたときに対応の稚拙さは目につきました。ただこれは3バックを今野選手、栗原選手、吉田選手という並び方も含めて、何か試していた気がしました。テレビ観戦だけじゃ、意図はよくわからないです・笑。
あとは開始早々、川島選手が無回転FKを弾き切れずに失点してしまった場面は、どうしても印象に残ってしまいますね。対処の難しいシュートであるのは百も承知ですが、本大会での戦いを考えると、せめて前には弾いて欲しかったところ。ナビスコカップ決勝(09年)もそうですし、南アフリカのオランダ戦などなど、川崎時代からそうですが、未だにああいうブレ球を苦手にしている印象が拭えないです。
 もっとも、ブレ球っていうのは、翼くんと岬くんが放ったツインシュートみたいなもんですからね。若島津くんの初失点も、今で言うブレ球でしたから、得意なGKはいないと思いますが(※キャプテン翼(小学生編)の全国大会決勝で登場した不死身のGK若島津は、それまで鉄壁のセービングを見せるも、翼くんと岬くんが放った合体シュートが揺れるボールとなり、反応できなかった)。
 0-1で迎えた後半は4人の選手交代を行い、[4-2-3-1]に戻した戦い方。慣れた戦い方だけあって選手同士の距離感もよくうまくペースを握ったのですが、ブルガリアの守備陣も頑張ります。特に最終ラインはザゲイロ中心によく安定していました。さらにセットプレーから長谷部選手のオウンゴールで2失点目。
 終盤には、中村憲剛選手がトップ下で投入されました。シンプルなボールさばきでゲームのリズムを作っていたと思います。
トップ下から中盤に下がって、ボランチの遠藤選手からボールを引き出す。その間に、憲剛選手がいたトップ下のスペースには香川選手が左サイドからスルスルと入っていく。前を向いた憲剛選手からのボールを受けた香川選手がドリブルを仕掛けてゴール前でFKを獲得する、などというスムーズな流れもありました。オフサイドにはなりましたが、長友選手のゴールも憲剛選手が起点になった形でしたね。短い時間でしたが、できることはやれていたのではないでしょうか。
・・・あっ、5月29日にフットボールチャンネルに掲載された憲剛選手の記事、なんとyahoo!のトップニュースになりました。ありがとうございます。
中村憲剛が語る日本代表への決意「本田がいないときにやってきた自負がある」
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等々力取材〜ケンゴとシルバ。中盤を制するものがゲームを制す。

 新潟戦は2-1で勝利。
いしかわごうオフィシャルブログ「サッカーのしわざなのだ。」
 サッカーは90分間のスポーツ、というのをあらためて感じた試合でした。
タイトな連戦を締めくくる最後のゲームということもあって、試合中のペース配分も含めて、90分をうまくやりくりをして過ごしたフロンターレが勝ち切った。そんな印象です。
 まず前半に関して言えば、新潟がペースを握った展開だったと思います。
前線からかなりのハイプレッシャーをかけて、守備で自分たちのリズムをうまく掴んでいました。フロンターレも、前がかりになっていた相手のスペースを狙い、縦に速い攻撃を繰り出せていたのですが、そこから思うようにシュートにまで持ち込めず。「マイボールのときに、カウンターを狙いすぎていた部分はあったかもしれない。そこで取られてしまい、今度は相手がゆっくりボールを回す、という展開にされてしまった」と田中裕介選手。新潟がボールを握るという時間帯が続きました。
 ボールを握った新潟は、ビルドアップから攻撃を組み立てて、サイドバックも積極的に攻撃参加していましたし、十分な圧力があったと思います。小林選手がたまらず自陣に帰って守備に追われる時間も目立ちましたから。「アンパンマンと(田中)アトムのマッチアップだな」などと思いながら見てましたけどね・笑。
 ただフロンターレは、ペースを握られた前半を無失点でしのぎました。これが大きかったと思います。逆にいうと、新潟はテンポをあげた前半にアドバンテージを奪うことができなかったわけです。「後半は、絶対に相手がバテると思っていた」とは憲剛選手の弁。その通りに、後半になると運動量が落ちた相手を、フロンターレが一気に攻め立てます。
 その急先鋒になっていたのがレナトでした。特に負傷明けのレナトは、前半は”らしい突破”が鳴りを潜めていて心配していたのですが、後半は別人でしたね。対面していたサイドバックをほとんど子供扱い(実際、まだ19歳になったばかりの若手らしいですが)。左の局面勝負で圧倒して決定機を作り続けます。そして大久保選手のゴールをお膳立て。これで先手を奪いました。
 その後もフロンターレがペースを握り、相手はほぼノーチャンスだったと思います・・・”ほぼノーチャンス”だったのですが、セットプレーのクリアボールでつなぎをミスしてしまい、さらにその対応も誤るなどのミスが重なり、非常にもったない失点で同点に。試合全体を通じても、後半は崩された場面も少なく、ピンチらしいピンチは本当にここだけだったと思います。それだけに実にもったいなかった。
 ここで風間監督は、矢島選手を下げて、パトリック投入・・・・ではなく、稲本選手を投入。最前線に大久保選手、中村憲剛選手をトップ下にあげる、湘南戦の後半にも見せたゼロトップのツーシャドーシステムに変更して勝負に出ました。
 決勝点はこの采配がズバリ当たった形です。「ジュニーニョに出した感覚を思い出したよ」と憲剛選手は話してましたが、あのドンピシャのスルーパスと、GK が倒れるまで見切ってから冷静に決めた大久保選手のゴールと合わせて、見事な連係でした。これで勝負ありました。
 うまくいかない時間が続いても、無失点で耐える。リードしてからは、マイボールを大事にしながらも、ポゼッションにこだわりすぎず、相手の隙を見つけたら、縦に速い攻撃で仕留める。まだまだチームの課題はありますが、着実に前進しているのではないでしょうか。
 さて。
この試合ではもうひとつ、見所がありました。それが中村憲剛選手とレオ・シルバによる両チームのボランチによる中盤の主導権争いです。相手がアプローチに来たら、あえて勝負せずにバックパスや横パスで逃げてから中盤の攻撃を組み立てたかと思ったら、今度は相手が来た瞬間、味方とのワンツーで置き去りにするような突破を仕掛ける。そんな駆け引きを中盤で繰り広げていました。個人的にもとても見応えがありました。このへんの駆け引きって、きっと将棋のプロ棋士同士の頭脳戦に通じるものがあると思ってます。
 試合後のミックスゾーンで「相手のボランチ(レオ・シルバ)との中盤の引っぱりあいが見ていて面白かった」と憲剛選手に伝えたところ、憲剛選手本人もかなり楽しかったようで、「ワンツーで外して、前にグンと出て行ったりして、どうやって出し抜いてやろうかという感じが出ていたでしょ?久々にJリーグでああいう駆け引きが出来たよ」と笑顔で語ってました。憲剛選手がそこまで言うのはかなり珍しいと思います。
 決勝点も憲剛選手のスルーパスばかりが注目されますが、あれは中盤でレオ・シルバをいなして起点になってから、大久保選手に出したボールでしたからね。シルバとの競り合いを制して生まれたスルーパスでもあったわけです。互いに駆け引きを満喫し、お互いの実力を認めあった90分だったんでしょうね。試合後の整列では、握手だけではなくお互いに笑顔でハグをしてました。レオ・シルバ、良い選手でした。
 ちなみに失点シーンに関しては、「あれは福森でしょ。『なんで俺がカバー?なんで、いかないのフク?』と言いながら、カバーに走ってたよ・笑」と憤慨してました。ちなみに福森選手はというと「行くのは憲剛さん・・・」と言いながら走っていたと言い訳していました・笑。
 そのシーンを録画で見直すとやはり福森選手の対応に問題があったと思いますが・笑、一応、チームメートの見解を聞いておきましょう。「福森(福森晃斗)にアプローチにいかせて、憲剛さん(中村憲剛)がカバーする場面だったと思う。自分も声を出していたが、歓声で届かなかった」とはGKの杉山選手の証言・・・・福森選手は、中断期間の宿題をもらったということにしておきましょう。
 これで今季の等々力負けなしは継続。
スタジアムもいい雰囲気が戻ってきていますね。特に5月は登里選手や伊藤選手、大島選手やレナトの離脱が重なり、台所事情の苦しい時期がありながらも、公式戦負け知らずで乗り切りました。
中断明けは鹿島、浦和、広島、大宮・・とタフな相手ばかりですが、いい準備をして欲しいですね。
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平塚取材〜中盤の渋滞を解消して巻き返す。

 ナビスコカップ湘南戦の取材に行ってきました。
いしかわごうオフィシャルブログ「サッカーのしわざなのだ。」
 試合は1-1のドローながら、3位のジュビロ磐田が引き分けたため、決勝トーナメント進出が決定しました。もちろん、試合に勝って決めたかったところではありますが、追いついての引き分けでしたし、ミッションを無事に果たすことができました。
 試合内容についていうと・・・前半はうまくいきませんでしたね。
なかなか良い形でボランチや前線にボールを入れることができず、最終ラインの中澤選手と實藤選手に何度もボールが戻ってきていました。ビルドアップをやり直すこと自体は何も問題ないのですが、やり直しでも中盤でうまくいかず、結局、前線に目がけてロングボールを蹴るしかない状態が目立ちました。
 原因は色々あると思うのですが、そのひとつとしては中盤で「渋滞」が起こっていたことでしょう。まず湘南が採用している[3-4-2-1]は、前線の1トップ&2シャドーが守備でのプレスバックも頑張りますし、中盤はかなり分厚いです。前線からの守備を頑張る相手を、フロンターレの後ろがなかなか外せませんでした。
 パスの受け手となる前線も然り。
この日フロンターレで先発したサイドハーフの森谷選手と宏矢選手は、サイドに張ってスペースに出て行くというよりは、中盤に顔を出して足元でボールを受けたいタイプです。湘南が中盤で人数をかけていましたし、中盤ではいわゆる「渋滞」が起こっており、フロンターレは、ボールを持ったボランチが中盤で前を向いて組み立てたり、2トップが縦のクサビを受けに来るスペースやタイミングをなかなか作ることができませんでした。
 もちろん、打開策はあったと思います。
例えば、サイドハーフが大きくワイドに開いたり起点になることで、3バックの陣形を横に広げたり、ピッチの幅を使った組み立てをすることで、中央のエリアを薄くするような「交通整備」がそうです。ただ試合中は、ピッチ上の選手の中でそこまで工夫ができず、ペースが掴めないまま。そんな前半でした。
 ハーフタイム、風間監督はここをテコ入れしました。
後半から、大久保選手をワントップに、トップ下に憲剛選手を入れて、両サイドには左に矢島選手、右に小林選手が張る[4-2-3-1]のような形に変更。この采配で巻き返します。
 特に2トップだった矢島選手を左サイドにウィングのような形で張らせ続けている狙いがよかったと思います。矢島選手本人も「自分は左サイドに張ってもいいので、真ん中のスペースを空けることを意識するように言われていた」と明かしていましたが、中央で起きていた前半の「渋滞」を解消するために、風間監督は矢島選手を左に配置転換させました。さらに相手の右サイドの守備の連係に難があったことも見越したとも思います。後半の矢島選手は持ち前の強さとスピードで何度も左サイドで起点を作り始めます。
こうして相手の3バックを横に広げていき、さらに右サイドに移った小林選手が抜群の動き出しで、サイドからゴール前へと飛び込んでいく。それでいて真ん中は真ん中で、大久保選手と憲剛選手が縦関係で構えており、ややプレッシャーの緩くなった真ん中で起点を作りながら、2人だけでの連係でもゴールに向かっていく攻撃を繰り出していましたからね。左右中央、どのエリアからの攻撃も迫力が出ていました。
 試合のハイライトは、後半の左サイドの矢島選手からのクロスに小林選手が中央で合わせる形で生まれていた決定機ですね。ここで立ちはだかったのが、フロンターレからの期限付き移籍中の安藤選手。後半だけで2、3度はビッグセーブしたでしょうか。思わず「アンドゥー、気合いは入りすぎだろ」と僕も記者席で頭を抱えてしまいましたが、それでも最後は小林選手がヘディングこじあけて同点ゴールを決めました。そして、これが決勝トーナメント進出を決めるゴールとなりました。
 面白かったのが、試合後のミックスゾーンです。
小林悠選手を取材していたら、フロンターレ側のミックスゾーンに安藤選手が挨拶しに来ました。安藤選手が視界に入った瞬間、すかさずたまたま身体に当たってただけだろ?『俺が止めた!』みたいな顔すんなよ。キャッチすんな!」と安藤選手をいじる小林選手。先日のリーグ戦と同様、終盤で追いつかれる形でのドローだったこともあり、安藤選手も「勝たせてよー」と小林選手に懇願してましたが、フロンターレは負けていたらグループ敗退でしたから、そうはいきません。
 ちなみに安藤選手にビッグセーブを連発されたあの局面。
小林選手によると、ピッチが少しスリッピーだったこともあり、左からのクロスに対して、ボールが流れないようにしっかり右足に当てようと思っていた結果、少し慎重になりすぎたとのことでした。つまり、安藤選手が凄かったのではなく、自分の問題だったということを再三強調してました・笑。クロスを入れていた矢島選手にも「相手GKがよかったんですかね?」とわざとらしく聞いてみましたが、「それはないっすねー」と安藤選手の活躍を全否定してました・笑。
 なんていうか、この試合の後半は、湘南ベルマーレ対川崎フロンターレではなく、ほとんど小林悠対安藤駿介の構図になってましたから・笑、試合後のこういうやりとりも微笑ましかったです。
 中断まであと1試合。
選手は連戦続きでかなりキツいと思いますが、負けなしで踏ん張ってもらいましょう。... 記事を読む