[書評]「勝負哲学」岡田武史 羽生善治


 どうも。
サッカーブック・ソムリエのいしかわごうです。
本日紹介する本は、こちらです。
$いしかわごうの「サッカーのしわざなのだ。」
 「勝負哲学」
 前日本代表監督の岡田武史氏と将棋プロ棋士の羽生善治氏による対談本。
サッカーと将棋には共通点が多いと思うのですが、そこについて語り合う内容というよりも、勝負を分ける決断の筋道であったり、ロジックや直感といったものの認識を議論している内容ですね。サッカーに関しては、監督視点での話が中心ですね。
 例えば、勝負を決める決断力について。両者の意見はこんな感じで一致しています。
岡田「勝負事においては、ロジックやデータを積み重ねれば積み重ねるほど、それだけではカバーし切れない、直感やひらめきというあいまいで非論理的なものの重要性が増していく。
羽生「本当の勝負は、ロジックの限界点から始まる」

 決断と言う部分では、岡田監督のデータに関する認識も興味深かった。
左サイドのディフェンスが破られている、攻撃が右サイドに偏っている、そういうことがデータを見ないとわからないようでは、そもそも監督は務まりません。今はピンチだ、チャンスだっていうことをいちいち数字に教えてもらっているようでは話にならないでしょ?
コーチなどから「監督、いまこうなってます」とデータを示されて、「えっ、そうだったのか」と意外に感じていたら、その時点で監督失格です。その意味で、データは自分の感覚を裏付ける情報でしかないということです

 最近、サッカーでも注目されることが多いデータですが、データはあくまで裏づけ。そこから新しいサッカーが生まれることがあるかといえば、「ノー」だとはっきり断言。このへんは現場監督の経験者ならではの認識かもしれませんね。
 
 あとはワールドカップでの采配についても触れていますね。
例えば、「状況が悪いと動きたくなるけど、じっとがまんのこを決め込む。すると流れが好転することがあるんです」という話で、「面白いから」と逆に我慢できなかった例でデンマーク戦の采配を挙げていました。
 引き分けでも決勝トーナメント進出が決まる状況で迎えた、あのデンマーク戦、岡田監督はメンバーこそ変えなかったものの、中盤の長谷部選手、阿部選手、遠藤選手で構成していたトリプルボランチをダブルボランチにしてスタートしていたんですよね。その決断について語っています。
「私は引き分け狙いの守備的システムを敷くことで選手が守りに入るのが怖かったんです。『引き分けでもいいや』と消極的になった途端、やられることも多いですからね。やられたら、つかみかけた決勝トーナメント進出も泡と消えてしまう。そこであえて中盤を五人から元の四人に戻し、前線を攻撃的な陣容にして点を取りに行く積極策をとったのです」
試合が進むにつれて、案の定、中盤を抜かれてピンチが広がるケースが増えてきましたが、私は何度か肝を冷やしながらも、我慢だと自分に言い聞かせてきました。試合の途中で、遠藤が「監督、僕の周りにスペースがいっぱいあります」と訴えてきたときも「一人減らしたんだから当たり前や。もっと横に動いてスペースをつぶせ」と言いました。
ところが世界は甘くありませんでした。その後も決定的なピンチが続き、思わず目を覆いたくなるような決定的なシュートも打たれる―――ということで、とうとうがまんし切れなくなって、結局システムの再変更を指示したんですね。中盤をまた五人に戻したんです。戻した後はこっちのペースで戦う場面が多くなり、選手も消極的になることなく攻撃的に戦ってくれて、勝利を手に入れることができました。
 だから、結果的にはよかったんですが、流れが変わるまで我慢できなかったという点では、少し自分自身に対して思うところはあるんです。

 あのデーマーク戦。引き分け狙いの姿勢では消極的になってしまうから、アグレッシブにいく戦い方を取る。これはこれでひとつの尊重できる決断だと思うんですよ。しかしこれが裏目に出てしまった。その状況でどうするのか。その決断を貫くのか、それとも変えるのか・・・ものすごく難しい判断ですよね。しかも、これがワールドカップの決勝トーナメントをかけた大事な試合中に起きる・・・・こわいわー、常人ならパニックですよ。そこで岡田監督は、勇気ある撤退をし、それが功を奏した。自分の信念を貫くことも大事ですが、ときにはそこを曲げてでも目的(勝利)のためならば柔軟な判断を下せる。あのデンマーク戦の前半だけでも、いろんな要素が詰まっていますよね、はい。
 あとは若手の将棋から学ぶべきものがあるという流れで、岡田監督がこんなことを明かしてました。
例えば、あるチームの指導者が、それまでの常識にはないようなサッカーをするのをすごく面白いなと思っていましてね。そのアイディアをどうしても知りたくなったんです。それで、知るのには仲間に入れちゃうのが一番手っ取り早いと考えて、代表チームのコーチに呼んだこともあるんですよ。
・・・これ、O木さんのことじゃないですか・笑。
 対談本ですし、将棋に詳しくないサッカーファンでもあまり構えずにサクサク読めると思います。
勝負哲学/岡田武史 羽生善治

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