今日のエルゴラ、そして「6月の勝利の歌を忘れない」の松田直樹を見て。


今日のエルゴラ。
昨日の午後に届いた悲しいお知らせにより、急遽紙面が差し替えとなりました。松田直樹選手が表紙です。一夜明けても、やっぱり信じられません。
$いしかわごうの「サッカーのしわざなのだ。」
日本のサッカー界で別れの季節というのは12月なんです。天皇杯に勝ち残っていないクラブは、12月頭にシーズンが終わると、だいたいその後1週間ぐらいの全体練習を終えるとオフに入ります。だから取材する記者にとっても、クラブから離れる選手とは、そのシーズン後のわずかな練習期間が触れ合うことの出来る最後の機会になる。
 選手が所属クラブを離れる理由は、「移籍を志願している」、「引退を決断している」、「戦力外通告を受けている」などさまざまですが、やはりさびしいのが戦力外通告を受けた選手。シーズンが終わったばかりで、まだ次の移籍先が決まってない状態で彼らと別れの挨拶をしなければなりません。
 このとき、僕は「さよなら」とは言わないようにしている。「じゃあ、また」と言ってその選手と握手するようにしている。その選手がサッカーに携わる仕事にい続ければ、そして自分がサッカーの仕事を続けていれば、またどこかで会えると信じているからです。「さよなら」と言って別れると、なんかずっと会えない気がするんですよね。だって、その選手が現役選手としてであれ、指導者の道であれ、あるいは解説者業なりのメディアでの仕事なのかはわからないですけど、またサッカーの世界で会おうよという思いもこもっている。だから「さよなら」は言わないようにしているんです。
 でも松田直樹選手にはとはもう会えなくなってしまった。「さよなら」と言わなくてはならない。本当につらい「さよなら」だ。こんな悲しいことはないです。
昨日の夜、フロンターレの練習取材から帰ってきてから、あるDVDを見ようと思った。
 「6月の勝利の歌を忘れない」
$いしかわごうの「サッカーのしわざなのだ。」
2002年日韓ワールドカップのトルシエジャパンに密着していたドキュメント。もともとDVD用に収録していたのではなく、帯同している代表スタッフが撮影した映像を、岩井俊二監督が編集した作品で発売当時は大変話題になった。
六月の勝利の歌を忘れない 日本代表、真実の30日間ドキュメント DVD-BOX/出演者不明

¥7,980
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押入れから引っ張り出して見てみようと思った。
 見直すのは、一体何年ぶりだろう?
懐かしい顔ぶれだ。当たり前だけどみんな若い。トルシエは相変わらずだし、通訳のダバディもいい味を出している。中田英寿もいる。戸田和幸は赤いトサカだ。いまはフロンターレでプレーする稲本潤一もいる。このときのメンバーにはやはり思い入れがある。
そんな中で松田直樹は・・・やっぱり松田直樹だった。
彼らしいなと思ったシーンが、開幕前の決起集会での一コマだ。一番にプールに飛び込んでいって、その場を盛り上げたのは松田選手だった。さらに誰もが一目置いている中田英寿にも遠慮なく「ナカタが飛ぶぞ」コールをして彼をプールに落とし、ズブ濡れになっている中田英寿に頭をガシガシ叩かれていた。
$いしかわごうの「サッカーのしわざなのだ。」
 大会中はフラットスリーの右CBとしてレギュラーを担っている。そして初戦のベルギー戦では、ラインコントロールにミスが生じて、二列目から飛び出しで右サイドを破られて失点を喫している。トルシエからも呼び出されて、松田選手が厳しく咎められている場面もあった。
 その後、ロシア戦を控えた練習後。
最終ラインだけでラインコントロールの修正点をあれこれ話し合っている場面があった。
「ただアイツはすっげぇうるせいじゃん。でもまぁ、試合で点を取られなきゃいんでしょ。」
アイツというのはトルシエのこと。トルシエの理論通りでは、ときに守備に破綻が生じることもあるのは選手たちも痛感していた。そんな状況を踏まえて、松田選手はそう言い放っていたのである。こういうやんちゃっぷりも、なんだか彼らしいな。
そんな風に映像にのめりこんでいけばいくほど、そして「6月の勝利の歌を忘れない」を見終わっても、やっぱり松田直樹のプレーがもう二度と見られなくなったなんて信じられなかった。
本当に残念です。
心からご冥福をお祈り申し上げます。

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