[試合研究]J2第35節富山対栃木から[3-3-3-1]システムを読み解いてみる


安間監督の採用する[3-3-3-1]システムの試合分析シリーズ。4試合目になりました。残りも4試合となりましたが、ボヤボヤしていると11年シーズン開幕してしまいますから、巻きでいきましょう。今回の相手は、松田監督率いる栃木SCです。
富山[3-3-3-1]               20.苔口
       28.関原   8.渡辺   7.朝日
       16.谷田   29.森   27.船津
       3.堤    6.濱野   24.吉井
             21.内藤
富山は[3-3-3-1]システム。右CBとして定着していた足助が負傷欠場。左手骨折だそうです。ファビオともつれた際、痛がっていましたからね。アンカーに富山出身の新人・森を初先発させました。長短のパスを出せる選手とのこと。GKが橋田→内藤、中盤に渡辺が入りました。対する栃木は[4-4-2]システム。GK武田、DF宇佐美、ヨ・ヒョジン、大久保、那須川、DFパウリーニョ、本橋、杉本、高木、FWリカルド・ロボ、チェ・クンシク。
 立ち上がりの攻撃は、富山の積極性が目立つ。苔口が左右のスペースに飛び出しサイドで起点を作り、ゴール前に二列目の3人が飛び込んでくる。関原のボレーシュートがわずかに逸れるなど惜しい場面もあった。ただ15分ぐらいに、苔口が相手との接触で足を痛めたのか、その後、裏への動き出しがめっきりなくなってしまい、次第に富山の攻撃が手詰まりに・・・前線4人は、まずトップの苔口がスタートを切らないと、二列目も連動して出ていきにくいですからね。トップ下に黒部がいたら、縦のポジションチェンジもあるのでしょうけど。とにかく、15分の接触プレーを機に富山の攻撃は機能しなくなりました。
 一方、栃木の攻撃の狙いは、あせらずじっくりと、といったところ。思ったよりもロボやチェの2トップにボールを入れてこない。最終ラインでじっくりボールを動かして、前線の4枚をチェイシングでくいつかせてから、中盤の浮いたスペースにボールを入れていくという感じです。富山の守備が集中して隙を見せず。栃木の最大のチャンスは、34分の場面。富山の左サイドに縦しかけて深い位置で起点を作ると、そこから逆サイドのスペースに展開。タイミングよくあがってきた那須川が、正確なクロスをゴール前に入れて、決定機を演出しました。栃木が一番やりたかった攻撃は、間違いなくこの形だったと思います。
 解説が指摘したように、両チームともボールを奪ってからのパスが、相手の守備に引っ掛かる展開の連続。それだけ両チームが守備にハードワークしたということなのでしょう。特に15分~30分までは、本当に我慢大会のようなお互いに守り合う時間になっていました。0-0で前半終了。
 後半は、前節指摘した「後半の課題」が噴出した展開に。前半、プレーエリアの狭かった栃木の2トップがかなり動くようになり、攻撃にアクセントがついてくる。58分の先制点は栃木に。ロングスローからの競り合いでこぼれたボールを、ロボが相手DFを背負いながらも足を出してゴールを揺らす。栃木が先制して0-1に。
 言ってみれば、ロボの個人技ですが、この1点をきっかけに栃木の攻撃に動きが出てきます。逆に富山は失点のショックからか、守備組織に簡単に綻びが出てくる。わずか5分後、クリアボールの処理からロボにミドルシュートを決められさらに失点。直後の66分には、前がかりになったところでカウンターを浴び、反則覚悟で船津が止めて2枚目のイエローで退場。0-2で10人ではさすがに厳しいです。平野、西野、桜井と投入しますが、キッチリ守られチャンスは作れず。85分には、3点目を決められて万事休す。0-3での敗戦となりました。
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 スコアは0-3。思わぬ大敗となってしまいました。ただ戦術的な問題点が噴出した敗戦だったかというと、そうではなかったとみています。戦術的な原因うんぬんよりも、この試合に関しては、後半に見せたメンタル的な部分ですよね。栃木のような守備でリズムを掴んでくる相手と組み合うときは、こういう我慢比べになるのは容易に想像できたはずです。しかし富山は、後半に1失点しただけで簡単にメンタルが折れてしまった。さほど崩された形ではなく、ロボの個人技を食らったような失点なのに、です。
そうなった要因は、前半にハードしていた反動なのか、下位に低迷していたメンタルなのか、はわかりませんが、終盤まで持つ応える粘り強さがなく、わずか1点であえなく白旗をあげてしまったような自滅っぷりでした。負け続けたこの年の富山は、それだけメンタル面における負のサイクルにはまりやすいのかもしれません。「システムに命を吹き込むのはお前らだ!」とは安間監督の言葉ですが、この試合の後半は戦術の是非を語る以前の負けだったと思ってます。
 もちろん戦術的な部分をじっくり。対戦相手が崩し方を研究してきている傾向は感じられています。栃木は、最終ライン4枚とボランチ2枚でボールをじらすように回すことで、ワントップだけではなく前線を4枚(1トップ+2列目の3枚)を前にひっぱり出す。こうすると、3枚のボランチと二列目の3枚の間(中盤)にスペースができやすくなる。ここにうまくボールを入れて、さらにサイドに展開して・・・という流れで相手のスライドをいなしながら、ボールを運んでいく崩しの狙いが感じられました。
あとは34分の場面ですね。一方のサイドに偏らせて、逆サイドから上がってきた那須川が、相手の守備がスライドする前にアーリークロスを入れてくる。狙ったタイミングでサイドチェンジされ、さらにそこからアーリークロスを入れられると、富山の守備が横にスライドしている最中なので、クロス対応が難しいです。実際、前節熊本の失点はこの形に近いですからね。今後もこの形は狙われると思います。このデメリットをどう隠すか。
 攻撃陣にも冴えがない90分でした。原因は、前半の接触後、苔口が動きに精彩を欠いていた点にあると思ってます。縦にボールが出ても、苔口の飛び出しがないため、起点が作れず、後ろから追い越していく攻撃もなりをひそめることに。中盤からの展開にもミスが目立ちました。奪ってから出した縦パスが、相手の守備網にひっかかり、前線につながっていかない。あとは足助がいないことで、前線へのフィードも少なかった気がします。こういう状況での「次の一手」が求められるところです。
【J2:第35節 富山 vs 栃木】安間貴義監督(富山)記者会見コメント [ J’s GOAL ]

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