書評:名将への挑戦状 ~世界のサッカー監督論


「モウリーニョは勝利者なのだろう。ペップ・バルサを打ち破ったことは賞賛に値する。モウリーニョは信念を貫き勝利したわけで、その精神力も名将と呼ぶにふさわしい。
しかしそれでも私は言い切る。
モウリーニョはフットボールには敗れている。 」

 本書の帯には、こんな刺激的なフレーズが掲載されております。
 どうも。
サッカーブック・ソムリエ・いしかわごうです。
 今回紹介するのは「名将への挑戦状 ~世界のサッカー監督論」。以前も紹介した「名将への挑戦状」の第2弾です。
いしかわごうオフィシャルブログ「サッカーのしわざなのだ。」
 今回登場するのはこの10人の名将たち。
ジョゼ・モウリーニョ
マヌエル・ペジェグリーニ
チュザーレ・ブランデッリ
ヨーゼフ・ユップ・ハインケス
ローラン・ブラン
ディエゴ・シメオネ
ヨアヒム・レーブ
アンドレ・ビラス・ボアス
マルセロ・ビエルサ
ジェゼップ・グアルディオラ
 そうそうたるこの顔ぶれを評すのは、創造的でスペクタクルなフットボールの信奉者・スアレス氏。翻訳者の小宮氏も触れていますが、スアレス氏の視点、論評は独断と偏見に満ちています。でも、だからこそ面白い。
 名将が目指すフットボールの機能性、合理性をきっちりと分析し、鋭く論評した上で、彼らが振り分けられる勝利と敗北。そして、その先にある各々の人間性にしっかりと迫ろうとしているので、彼の人生を深く考えさせられるし、読み応えある内容にもなってます。
 10人それぞれの感想をここに書くのはさすがにしんどいですし、この本を読んで損はないですよ、としか言いようがありません。鋭く、刺激的な面白さは保証します。
 中でも印象深かったのは、やはりビエルサでしょうか。
本書の中でスアレス氏は一年目のビルバオでの戦いぶりを評し「ビエルサは理想に走り過ぎている」と指摘しています。

「 相手が誰であろうと、どんな舞台であろうと時間帯すら関係なく、理想を貫こうとしてしまう。アトレティコのシメオネ監督がビルバオの戦い方を研究し、長いボールを蹴らせる罠をかけてきたが、ビエルサはアトレティコの弱点を突くような作戦を選手たちに何も与えていなかった。
ビエルサは相手や状況に応じて動くよりも、常に自陣がいかなるプレーをするかをひたすら追求している。それは悪いことではないが、勝負を制するためには相手の弱点を衝かなくてはならない局面も往々にしてある。少なくともリーダーたるもの、その準備はしておかなくてはならない。相手がモウリーニョ、シメオネのように相手の隙をつくのに長けたリーダーならば、なおさらだ。 」

 しかしそれ以上に、ビエルサの底知れぬ野望に大きな敬意を抱いているところが印象的でした。「 とはいえ、私は進化のプロセスに起きた不具合を指摘しているに過ぎないのかもしれない。」と。
そして、こう結んでいます。
 「90分間、ボールを支配して攻め続ける」
見果てぬ夢に過ぎないが、そこに近づこうとすることで、ビルバオは神話を作ることになるだろう
、と。
「そんなのは非常識。理想論だよ」と一笑に付すのは簡単ですが、常識を覆す発見や新しい価値観というのは、常識の否定から生まれるものです。ビエルサのこの「狂気」ともいえるチャレンジ精神、そしてその生き様からは、何かそういう可能性を感じるんですよね。やはりこの変人に僕は惹かれますわ。
興味のある方は、ぜひ読んでみてください。
欧州サッカー 名将への挑戦状/ヘスス・スアレス

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第1弾の書評はこちら:「名将への挑戦状 ~世界のサッカー監督論」
http://ameblo.jp/go-football/entry-10984291226.html
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