書評:人を束ねる 名古屋グランパスの常勝マネジメント


どうも。サッカー本ソムリエ・いしかわごうです。
 明日は名古屋戦ということで・・・・この本を紹介。
いしかわごうオフィシャルブログ「サッカーのしわざなのだ。」
「 人を束ねる 名古屋グランパスの常勝マネジメント 」
 著者は、名古屋グランパスの現役GM久米一正氏。長谷部誠選手の「心を整える。」を世に送り出した編集者・二本柳さんがてがけた新書です。
 この本では、08年にGMとして就任した久米氏が、それまで中位に沈んでいた名古屋で行った構造改革を惜しげもなく公開しています。チームを率いるのは監督ですが、クラブをデザインし、マネジメントしていくのはGM。クラブの目標設定、組織と規律のポイント、交渉術や人身掌握術などなど、現役GMの仕事内容が垣間見れて、非常に読み応えがありましたね。
 読んでいて「なるほど!」とひざを打つ項目も多かったのですが、なかでも感心したのは、グランパスが採用している選手の査定システムでしょうか。
まず実績に合わせて、G1が日本代表選手、G2は元代表、G3はレギュラークラス・・・という順に選手を7つにグループ分け。その評価基準として、試合出場評価、試合評価、能力評価、練習評価、貢献度評価、日本代表評価の6つだそうです。本書ではその項目もかなり細かく設定されているのがわかります。
 もちろんどのクラブも選手の評価基準はそれぞれあると思います。
ただ自分が知る限りでは、名古屋はかなり多角的な評価システムを採用している部類ですね。野球とは違い数値での評価をしにくいスポーツですが、選手の瞬間的なパフォーマンスではなく、年間を通じたパフォーマンスを、厳密かつ客観的な評価として年俸に反映しようとしているクラブの意図がそこあるのが感じられます。
言われてみれば、年俸交渉でもめて選手がサインせず、契約がもつれる・・・といったケースは名古屋で聞いたことがありません。これだけのシステムですからね。交渉時に「ごね得」が通用しないのも当然だな、と納得した次第です。
 名古屋の話だけではなく、柏レイソルや清水エスパルスでの経験談(失敗談)もたくさん語っています。いい選手やいい監督になるためには経験が必要なように、いいGMになるのにも経験が必要なのだな、ということですね。選手や監督だけではなく、フロントも「移籍」しようと提言しているのも、そういうことなのだと思います。
 GMの本と聞くと、なんだか選手や監督の本よりも敷居が高そうですが、そんなことはありません。
福岡大から永井選手を獲得するときの争奪戦や、清水から藤本淳吾選手の獲得、あるいは今オフ、千代反田選手の移籍に伴い、急遽ダニエルを甲府から獲得した舞台裏のエピソードなどは、単純に読んでいて面白いですよ。
 フロンターレ絡みでいえば、名古屋が優勝した10年シーズン、そのターニングポイントとして、久米GMは等々力でフロンターレ戦の大敗(0-4)を挙げています。試合後のロッカールームで闘莉王選手と金崎選手が取っ組み合いの喧嘩をしたそうです。自分もあのとき等々力で取材をしていましたが、闘莉王選手がミックスゾーンを無言を貫き、足早に通り過ぎていったのは記憶にあります。ただこのぶつかり合いでチームは結束し、優勝していくきっかけにもなったとのこと。
 普段、取材していないクラブスタッフの考えを知ることが出来るのは、やはり面白かったですね。
フロンターレの企画部長こと天野さんによる著書もそうでしたが、「現役」のクラブスタッフによる書籍がもっとたくさん出版されたら、面白いのな、と思うサッカー本ソムリエでした。
人を束ねる (幻冬舎新書)/久米 一正

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これは川崎フロンターレの名物企画部長・天野さんいよる本。オススメ度、高いです。
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