等々力取材〜完勝の浦和戦。


 昨日は等々力で浦和戦を取材。試合は4-0で勝利。
$いしかわごうオフィシャルブログ「サッカーのしわざなのだ。」
 完勝だったと思います。
もともとフロンターレは、ペトロヴィッチ監督とは抜群に相性がいいです。ただそれは、(水曜日の広島戦後のブログのときも触れましたが)相手にボールを持たせてカウンターで仕留めるという形での「勝利の方程式」だったわけで、自分たちがボールを握っていくような真っ向勝負の戦い方ではありませんでした。
 だからなのか、ペトロヴィッチ監督は、これまでフロンターレ戦に負けても「自分たちのサッカーはできていた」と話すことが多かったんですよね。09年に等々力で7-0で負けたときでさえ、そうでした。
 しかしこの試合後の監督会見は違いました。
「私が浦和の監督に就任してから、最も悪いゲーム。我々が負けるに値する内容でした」、「私が交代して、全員の選手を交代したいくらいでした。唯一ポジティブだったのはすべてが今日は悪かったということ」と白旗をあげてました。敵将がそこまで認めるのですから、「完勝した」と言っていいと思います。
 実際、試合内容もよかったですからね。
一般的な視点で見所をあげるとしたら、フロンターレがシステムを変えたことになるのでしょうか。去年もスリーバックで試合はしてますが、前節の広島戦後半に変えた[3-4-2-1]でスタートし、守備の局面で浦和のシステムとガッチリと噛み合わせるミラーゲームとなりました。
「今回は相手のフォーメーションの形に合わせることになったが、だからといって、やるサッカーを変えたわけじゃないですね。攻撃のときはボールを大事にしているし、相手がボールを持ったときにハメやすくしただけです」
 そう話してくれたのは、中澤選手。
両隣のセンターバックとの距離感が良いため、マッチアップした興梠選手に入るクサビに対して積極的にチャレンジできており、起点を作らせませんでした。前に居る稲本選手のプレスバックも効果的だったため、中央が完全に崩される場面は少なかったですね。
 サイドの攻防でも、登里選手と實藤選手が、それぞれの局面攻防で劣勢になることはありませんでした。そして今季リーグ戦初となる無失点。西部選手は「結果を出すのが遅過ぎだけど」と苦笑いしてましたが、今後に向けたいい材料であるのは間違いないと思います。
 守備の局面こそシステム論になってしましたが、こちらがボールを持った攻撃のときは、相手のシステムを無力化するサッカーができていました。むしろこっちのほうが試合の本質だったと思います。
 風間監督のサッカーにおける約束事はひとつだけです。
「ボールを失わないでゴールを目指すこと」

ボールを奪われずにゴールまで運べるなら、それがカウンターでもポゼッションでも手段はどっちでもいいわけです。その両方を自在にできるように日々のトレーニングで個人の技術、戦術眼を徹底的に鍛えているわけで、その変化は去年から試合を観ていればわかると思います。実際、出し手のパスの強度や正確性、受け手もトラップしたときのボールの置き方、身体の向きにこだわり続けてきたことで、ここ最近はチームとしても、ずいぶんボールを奪われないサッカーを体現できるようになりました。あれだけ点を取れているのに、ゴールのバリエーションが実に多彩ですよね。
  浦和戦で圧巻だったのは3点目の崩しです。
自陣からのビルドアップを含めて、「パス何本つないだんだ?」っていうね。瞬間的に局面を狭くして奪おうとする相手をひょいひょいとパスで交わしながら逆サイドに展開。そうやってボールを運んでいきながら、大久保選手が中盤に下がってボールをさばくと、味方も上がっていく。そして左サイドから中に走り込んで行ったノボリがゴールエリア内でポストプレーをして、最後はボランチの山本選手がズドンと仕留める。相手は最終ライン5人で守備ブロックを固めているのに、2人だけで完全に崩しました。麻生の練習でよく見る形ですが、試合で見ているとほれぼれするようなゴールです。
 「あの身のこなしはヨシトさんっぽかったですよね?あれはヨシトターンですね」

 と、ミックスゾーンでドヤ顔だったノボリ。
ちなみにその日の夜のスポーツニュース、日テレのgoingも、スカパー!のマッチデーハイライトも、あの崩しは、ノボリではなく大久保選手のアシストとしてナレーションしてました・笑。背番号23が13に見えたのだと思いますが、流れの中で左サイドバックの選手がゴールエリア内でポストプレーをしているとは思わないのかもしれません。
 そしてこの日はなんと言っても、J1通算100ゴールを達成した大久保嘉人選手。
でも僕はゴール以外の部分で彼に注目してました。というのも、大久保選手といえば、相手の守備ブロックの間、間に顔を出してボールを受けるプレーがとても上手いのですが、先日の広島戦ではその動きが少なかったんですよ。そこが気になっていたんです。
 暑さや連戦だったこともあって、そういう動きがしんどかったのかなと思っていたのですが、本人に理由を聞いてみると、そうではなかったみたいです。守備のときに広島が[5-4-1]布陣で人数をかけて中央を締めていたので、そこでワントップにいる自分が中盤に下がると、中に人がいなくなるから、あえて下がらずに前線に張り続けていたとのことでした。
 それはそれで悪くない判断だと思いますが、結果的にボールを触る回数が減ってしまい、自分自身のリズムが作れなかったことを本人は悔やんでました。前線に居続けるのではなく、状況によってもっと中盤に下がってボールを引き出したり、触ったりして、自分のリズムも掴むべきだったと。
 この浦和戦では、そういうプレーを意識的にしていたと思います。もちろん、ゴール前でも仕事をしていましたが、あの3点目の場面なんかは大久保選手が中盤にいましたからね。おまけに憲剛選手もレナトも前線におらず「中に人が居ない状態」でしたが、それを見たノボリと山本選手がちゃんと前に出ていって、ゴールを決めました。こういう崩しが今後も出来るようになれば、大久保選手のフィニッシャーとしての負担も随分と減るでしょうね。
 試合後、憲剛選手に「いま、サッカー楽しいでしょ?」と聞くと、「チョー楽しいよ」と返してくれました。
 そりゃそうでしょうね。観ている方も楽しいですから。
序盤の低迷もなんのその、シーズン中盤の台風の目になりつつある川崎フロンターレ。水曜日、首位・大宮との一戦もとてもとても楽しみですね。
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