今日のエルゴラ。
中位同士のフロンターレ対清水戦の紙面は小さめでした。広島の優勝決定、残留争い、大分のJ1昇格と盛りだくさんでしたからね。どうぞご理解を、ってことで。
エルゴラで書ききれなかったことを少し。
この試合のハイライトは、やはり前半途中のシステム変更にあったと思います。3バックから4バックへ。この影響を一番受けたのは右サイドのウィングバックからボランチに入った田中裕介選手でしょう。ここをちょっと詳しく書いてみようと思います。
記者席でも、前半の途中から「田中裕介、トップ下かボランチになってない?」とざわめき始めました。前半20分ぐらいだったでしょうか。縦横無尽に動く選手ですから、最初はそれほど気にしていなかったのですが、それにしては中央にいる時間が長過ぎる。先制点が決まってからも、スタートポジションは中盤。トップ下のような位置にいる場面もあったので、最初は憲剛選手と宏希選手の3人で流動的にやっているのかなと思いましたが、聞くとボランチだったとのことです。
この試合中のコンバートにはちょいと驚きましたね。
そもそも3バックから4バックにするのなら、田中裕介選手を右サイドバックに下げて、中央に實藤選手と井川選手、そして左サイドバックに伊藤選手の並びにスライドする形がわりと自然ですから。登里選手も前線なり中盤のサイドで生きるわけですし。しかし風間監督は、右サイドバックに實藤選手、そして中央に井川選手と伊藤選手、そして左サイドバックに登里選手というスライドを行いました。
後ろの組み合わせよりも、相手を潰せる、あるいは真ん中を空けない選手が中盤の底に欲しかったのでしょう。そこで田中裕介選手のボランチ起用です。
試合中に監督からの指示を受けたとき、てっきりサイドバックに入れと言われると思っていた田中裕介選手は、ボランチの指示に「思わず二度聞いてしまいましたよ」と苦笑いしてました。
ただ彼の風間監督体制でのボランチは初めてではありません。
風間監督初陣となった広島戦でも、実はボランチにコンバートされて、憲剛選手とのダブルボランチをスタートから組んでいました。
もっとも、このときは守備では中央を空けてしまいがちでしたし、ボールを保持してもすぐに憲剛選手にパスして預けるだけでした。他にも5月のナビスコカップの浦和戦、磐田戦、セレッソ大阪戦でプレーしています(セレッソ戦は後半途中からプレーし、パスミスから失点を献上)。要はどれも半年以上前です。あとは出場停止だった多摩川クラシコ前のチームの紅白戦で、Bチームのボランチをやっていたぐらいでしょうか。ボランチのプレー経験はそのぐらいだったと思います。
しかしこの清水戦では、それこそ広島戦と比べたら、ボールを持てばグイグイ攻め上がるし、パス回しにもテンポを与え、試合の流れにも落ち着きが生まれました。なによりボランチとしての動きも格段にスムーズになっていました。
この対応力はちょっと特筆すべきものがあるかと思います。
試合と日々の練習を通じて、彼の個人戦術と個人技術が上がっている証拠なのでしょう。なにより、田中裕介選手本人が「自分の意識も変化したし、サッカーが楽しくなってきた。まだまだ伸びると思ってやってる」と認めてますからね。
思えば、風間監督は就任当初から、選手のポジションを固定させないことが多かったですね。
コンバートが多いこと、そしてそれがうまく機能していなかったことに関する是非はあったかもしれませんが、行き当たりばったりで行っているのではなく、むしろ先を見越したチーム作りという過程での不具合にしか過ぎないように僕は感じてました。
(その理由の詳細は5月に書いた書評で触れてます)
書評:風間八宏の「1対21」のサッカー原論。
「決まったポジションだけをやらせると、それがいつの間にかパターンになってしまいますし、自分の中で固定意識ができあがっているため、そこに戻りたがるのです。しかしそこに戻さないでやらせ続けると『自分』が出てきます。」
「そういうことを経験すると、再び最初と同じポジションに戻したときでも、今までとはまったく違う、プレーの幅の広い選手になっていることがほとんどです。」
「勝つことを第一にしたポジションチェンジではなく、すべては『この選手はどこの場所でプレーすると、もっとうまくなるかな?』という育成の目的の元に試みるのが理想的ではないでしょうか。そのためにでしたら、試合を犠牲にするぐらい、私にとっては何の問題もありません」
「チームが勝つためにどこに選手を配置するのかというよりも、いま以上に選手の才能を引き出すためにはどうすべきかに力を注ぐほうが、本当の意味での選手のためになるのではないかと感じています。」
5月なのでずいぶん懐かしい話ですが、シーズン終盤になってから読むと、その部分がいろいろとつながってきたのではないでしょうか。田中裕介選手のボランチ対応は、その象徴だったのかもしれませんね。
コンバートが多いといっても、憲剛選手、風間兄弟、山越選手などプレースタイルや特性を良く把握している選手はあまりいじらないことでも一貫してました。ちなみに山越選手は、もともとボランチで、筑波大入学後、風間監督のもとで左サイドバックになったコンバート組だそうです。4年間、風間監督のもとでプレーしているのですから、そこでフロンターレで再度のコンバートをトライさせるわけがありませんよね。納得です。
・・・とまぁ、長々と書きすぎました。
残るは最終節。4連勝でシーズンを終えて天皇杯にはずみをつけたいものです。
風間監督の理論に興味ある方は、どうぞ。
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