書評:風間八宏 日本サッカーを救う「超戦術」


 どうも。サッカー本ソムリエ・いしかわごうです。
風間フロンターレ2連勝記念ということで(?)、以前から紹介はしていたこの本について、あらためて触れてみようと思います。
いしかわごうオフィシャルブログ「サッカーのしわざなのだ。」
 日本サッカーを救う「超戦術」
 発売されたのは2010年の5月。ワールドカップ南アフリカ大会の直前ですね。
なので、日本代表がワールドカップで戦えるのか、ということをたくさん語っています。ただそれ以外のところでは、風間さんの少年時代からのサッカーに対する姿勢や経験談、筑波大学時代の指導法など、自身のサッカー観を存分に語っています。
 そもそも、この本で語っている超戦術という言葉の意味について触れましょうか。
「超戦術」と聞くと戦術論の本かと思われるかもしれませんが、ここで書かれているのは「すごい戦術」ではなく、「戦術を超えるもの」の話です。
戦術論、システム論でサッカーを語りがちな中、あえて「サッカーボールをもの凄く大事にする」ということを、本の中で強く主張しています。なぜそこまでこだわるのか。それは「ボールが全てだから」。
 そして、たぶんこれが風間イズムの原点なのだと思います。
全てをマイボールありきで考えている。そんなのサッカーなんだから当たり前じゃん、と思われるかもしれませんが、意外とそうでもありません。
例えば、風間監督は守備に対する考えを「いかにボールを奪うのか」からではなく、「いかにボールを失わないか」からスタートして考えています。守るときでさえ、自分たちのボールを取られたから守備をしなくてはいけない、という概念で捉えている。「ボールは失ってはいけないもの」、「ボールを取られることは悪だ」とまで言っています。だからボールを奪われたときにも、「ボールを頑張って取り返そうとするのか」、それとも「殺気立って強奪するのか」。そのこだわりを選手に説いています。
 3試合で2勝1敗、8得点9失点。風間監督になってからのフロンターレの戦績です。
得点とともに失点がものすごく多いです。特に磐田戦に関していえば、サイドを崩されてからの対応に問題がありました。具体的に言えば、左サイドを崩されたときの中の絞り方ですよね。すごく明確です。
だからといって、風間監督はその対応を必要以上に問題視してコメントしたりしないですし、局面対応の修正を施す全体練習をしたりもしません。それよりも、その前の段階でなぜ相手ボールになったのか。もっとうまくやれば相手の攻撃にならなかったのではないか。その前の局面を改善すれば、ピンチにすらならなかっただろ、ということを突き詰めていく考え方なわけです。
 もちろん何も改善していないかというと、そんなこともないですよ。
後ろの選手に対して個別に話してしているようで、磐田戦の後日、井川選手に聞いたところ、ポジショニングのことは多少言われて、あとはシンプルに「王様でやれ」と言われたとのことでした。
この言葉はどういう意味かというと、どうやら「サイドを崩されても、最後は真ん中にボールが来る。そこでCBが慌てないことが大事。だから、エリア内では王様のように落ち着き振る舞ってプレーしろ」という意味だったようです。面白い言い方だな、と思いましたね。
 昨日の名古屋戦では2失点しましたが、1点目はエリア外からケネディに打たれたミドル、2点目もエリア付近から藤本選手に打たれたシュートです。どちらも寄せの甘さは指摘しなくてはいけませんが、広島戦や磐田戦のように、サイドを崩されまくって中であっさり決められるという形はなくなったともいえます。後半は、あれだけ押し込まれながらも、井川選手も落ち着いて守れていたように見えました(?)。
 話がそれたので、本の内容に戻ります。
あと興味深かったのは、DFが1対1の場面でカバーリングのポジショニングをとったときに「絶対に抜かれないからいらない!だからカバーする必要はない。自分の仕事をしろ!」と言ったエピソードでしょうか。実際には抜かれるかもしれない。でもイーブンな状況なのに、まずは「1対1なら負ける」という負の発想そのものを捨てることから始めなくてはいけないから、と説明しています。
 こういう発想は、やはり清水の同級生・大木武監督に似てるな、と思いますね。
甲府時代、前がかりになってしまい、カウンターから2対2を作られて失点した場面がありました。試合後、その局面に対して会見では「2対2を作られてしまったのは、リスクマネジメントが足りなかったのでは?」という指摘を受けたんです。相手の攻撃の人数よりも一人多く残しておくのが守る側のセオリーであり、リスク管理ですからね。
しかし大木監督は「数的同数であれば守れていたはずなので、問題ありませんでした」と一蹴。3対2の数的優位を作って守らなかったことよりも、なんで2対2で守れなかったんだ?と捉える考え方です。そういう大木監督の考えに当時は「面白いなー」と感じてましたが、風間監督もそのタイプなようです。いいですねぇー(笑)。
 こんな感じで風間監督のサッカー観をたくさん語っています。
それ以外にも「場所ではなく人を攻略する」、「味方ではなく、敵を見ろ」、「技術のスピードは正確性で決まる」などなど、フロンターレで実戦していることの狙いもたくさん書いています。この本を読むことで、風間フロンターレの目指す方向性が読み取れるのは間違いないと思います。
 フロンターレサポーターは必見ですが、「やたら得点も失点もしてるけど、風間フロンターレってどうなってるんだ?」と興味を持ったサッカーファンの指南書としても、オススメしたい一冊ですね。
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近日中にこちらも紹介する予定です。
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